第5話 それは……多分悪魔の初仕事だったんじゃろうな
ちょっと今回は短いですが…
拓真は大急ぎで帰宅した。
「ルシフ!」
拓真はルシフを呼んだが、返事がない。
「……?……なんだ?」
リビングの方で気配がするので拓真は歩いていった。
「あ……」
「なんじゃ、主さま帰りが早いのう。もう少しでできそうだったんじゃが……」
テーブルに並んでいたのは、たくさんの料理、料理、料理……
「ルシフ……これは……」
「ふふ、儂は主さまのメイドじゃからの、このくらいはして当然じゃろう?……まあ、なんせ初めてのことだったからのぅ、果たして美味いかどうかは分からんが……」
ルシフが少し照れたようにしてはにかんだ。「はぁ……お前は……」
「ぬ、主さま?……やはり駄目だったか?勝手にこんなものを作って……すまぬ、やはりこれは捨てて……」
「ああもう!なんでお前はそんなに可愛くて完璧なんだ!?」
拓真は爆発したようにルシフを褒めちぎりながら思いっきり抱き締めた。
「ぬ、主さま!?な、なにを!?」
「ああもう本当にルシフといると癒される!どっかのエロ女とは大違いだ!尻尾撫でるぞこのやろう!」
そう言って拓真はメイド服のスカートに手を入れて、尻尾を掴んだ。
「ひゃう!?や、止めぬか主さま!」
「はいはい……ともあれ、ありがとうな、ルシフ。ちゃんとメイドしてくれてるし、本当に、お前には惚れそうになるよ」
「ふふ、それは嬉しいのう……主さまや」
「なんだ?」
「その、まあ、あれじゃ、儂も初めは嫌がっとったが、今はそうでもない。今の主さまとの関係も楽しいしのぅ。だから、これは無理矢理ではなく、儂がやりたかったからやったということだけは、分かっておいてくだされよ主さま?」
「……本当に、お前でよかった」
「ふふ、恐縮じゃ」
「なんか、お前が相手だとはしゃいじまうんだよな、基本的に気だるげな生き方してきたんだが……」
「儂から見れば、主さまは自分の欲望を儂にぶつけてるようにしか見えんがの」
「それより、いただくとするか、せっかく作ってくれたんだから、温かいうちに食わねえとな」
「召し上がれ、主さま……と言いたいところじゃが、まだ全て用意できておらんからのぅ、しばし待たれよ、主さま」
そう言ってルシフはキッチンに歩いていった。
んでまあ、暫くして、
「できたぞ、主さま、召し上がれ」
「ああ、いただきます」
そうして、拓真は料理を口に運んで、咀嚼して、飲み込んだ。
「どうじゃ……?主さま」
「普通に美味い」
「そ、そうか!それはよかった」
ルシフの不安そうだった顔は、パアッと明るくなった。
それからは、ルシフの今日やったことを聞きながら、拓真は晩飯をとった。
「主さまや、あの掃除機とやらはどうやって使えばよいのじゃ?」
「あの長い棒的なところで人をぶん殴る」
「掃除とは気に入らん人間を掃除するとかそういう感じの意味じゃったのか!?」
「ああ」
「なんか騙されとる気分がするのう……そういえば主さまや、気になったのじゃが、エロ女とは誰のことじゃ?」
「ああ、エロ女っていうのは綾乃桜 椿ってやつの、こ……と……」
「ふむ、それで、何故主さまは帰ってくるやいなや、儂の名を呼んだのじゃ?」
「……まずい、忘れてた……」
「うん?どうしたのじゃ主さま?」
「後で話す!とりあえず今は――」
――ピンポーン――
突然鳴ったインターホンが、拓真の言葉を遮った。
綾乃桜椿が、拓真の家に遊びに来た。




