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主人(マスター)と悪魔(メイド)の主従関係  作者: 睡蓮酒
序章 ~始まり、始まり~
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第4話 それは……多分幼馴染みだったんだろうな

第4話更新です! 感想、いただけるともっと頑張れます。

たとえ拓真が悪魔を喚び出そうが、その悪魔をメイドにしようが、時間の流れは変わらない。

昨日は日曜日。つまりその翌日である月曜日は、学校に行く日である。

「じゃあ、俺は学校に行ってくるから」

「ふむ、学校か、いつの時代もそういうところは変わらんのう……それで主さまよ、儂は一体何をしておればよいのじゃ?」

「んー……別に好きなことしてくれて構わないんだが……まあ一般常識はあるみたいだし、そういう勉強はしなくてもいいだろ。

……そうだな、外に出るのはさすがにまずいから……テレビ観るとか、お前が喚ばれた部屋にあった本を読むとかしといたらどうだ?」

「確かにある程度この世界における知識はあるが、知らんことも多々あるしのぅ、書物でも読んで知っておくべきかの」

「そうしといてくれ、追々いろいろできるようにしてやるから、今は我慢してくれな?」

「わかったぞ主さま……それで、そろそろ行かなくてよいのか?」

「おっと、じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃいませ、主さま……こんな感じでいいのかのう?」

「ルシフ……恥ずかしいなら――」

「うるさいわ!主さまがこれを毎朝やれと申したんじゃろうが!」

そう、実は昨日、ルシフがメイドになった後、拓真はメイドの心得を数時間に渡って延々と言い聞かせたのである。

ルシフはそれを死んだ魚のような虚ろな目で聞いていた。

顔を赤くして殴りかかってきたルシフを拓真はなだめつつ、

「分かってる、偉いぞルシフ、上出来だ。

それじゃあもう行ってくる」

「う、むぅ…」

そうして拓真は歩いていったのだが、なぜだか戻ってきて、

「あとできるならそこでいってらっしゃいのちゅーをしてくれたら言うことな――」

「はよ行けっ!阿呆主さま!」

「はいはい」

そんなこんなでようやく拓真はひらひらと手を振りながら学校に向かった。


というわけで、学校。

かなり遅刻ギリギリの時間なので、人はまばら。それぞれが少し急ぎぎみである。クラブの朝練をしていた陸上部や野球部も焦りながら片付けをしている。

そんななか、拓真はというと……

「さっ、てと……屋上行くか」

大きく伸びをしながら早速授業をサボる算段をしていた。

「まちたまえ」

「がっ!?」

しかし、誰かに後ろから襟首を掴まれ、計画は早くも頓挫してしまった。

いや、誰かなんて曖昧な言い方をする必要はない。拓真には見なくても誰が睡眠時間確保計画(仮)の妨害をしたのかわかっていた。

だから拓真は言った。

「なんだよ、椿」

綾乃桜 椿。それが拓真を引き留めた少女の名前だ。

長めの黒髪を後ろで一つに結わえ、しっかりとした目の輝きをもっている。家が神社の

家系で、やっているスポーツは弓道。全国大会に出場するほどの実力者だ。そして特筆すべきはその発育の良さ。

拓真は身長180cm強という高校一年生にしては高い方だが、椿は拓真と数センチしか変わらない。そしてかなり自己主張の激しい胸は明らかに高校生の大きさではない。

そして……

「なんだよじゃない。授業に出ろと言っている」

「いや、もう勉強とかどうでもいいし…」

「確かに君には必要ないかもしれないが、私にはある」

「はあ?意味がわからん。なぜ俺が授業に出る必要がお前にあるんだ?」

「授業中大好きな君をずっと見つめてられるだろう?」

「……はぁ……」

綾乃桜椿―――

天村拓真にベタ惚れ。


椿に捕まってしまっては仕方なく、拓真は一限目の英語の授業を、ぼんやり聞きながら外を眺めて、

(……とりあえずルシフが外に出られるようにしてやらないとなー……さすがにメイド服のままで外にだすのは可哀想というか嫌がるだろうしなぁ……まあ俺としてはあのままでいてほしいんだけど……メイド服で顔を赤くしながら人目を気にしてキョロキョロしてるルシフ……アリだな)

とまあこんな感じのドS精神全開な思考をさっきから何回も繰り返していた。

(んー……なんかルシフのことばっか考えてんなぁ、俺。基本的に誰かのことをここまで考えたのは初めて……ではないな。どうすればあの椿を辱しめることができるかを数ヶ月に渡って108個の策を考え出した……んだが、結局全部不発に終わったどころか、俺が辱しめられるはめになったんだよなあ……)

まあ、それはいつか別の話で。

ともあれ、

「寝るか……」

そう拓真が小さく宣言したところで、授業の終わりを告げるチャイムが。

「……と思ったが、とりあえず屋上に行こう、そして寝よう」

拓真は椿に気づかれぬよう、音をたてず、されど迅速に教室から立ち去った。


拓真は屋上に向かって階段を昇り、ドアの前に立つ。

しかし屋上はフェンスもなく危険ということで、ドアはご丁寧に二つも種類の違う鍵で開けられないようにされていた。

(ふふふ、甘い、甘いぞ学校の教職員どもめ、この程度で俺を止められるものか)

そう言って拓真が向かったのはその横にある窓。一見手を掛けるところもない、ただつけてあるだけのガラスにしか見えないが、実はこれ、押すと窓枠の右側を軸に、開くようになっているのである。

一応窓枠と壁との境目は見えるのだが、かなり巧みに造られているので、注意しないと気がつかないレベルだ。

一体誰がこんな改造をしたのかは不明。

拓真がなぜこれに気づいたのかというと、屋上が施錠されていることを知り、窓に細工をしてやろうと触ったからだ。


して、拓真は屋上に侵入。そしてどこで寝るかを決めた時に、丁度二限目の授業が始まることを告げるチャイムが鳴り響いた。

「くわ……すぅ…」

そして、拓真は眠りに着いた。


暫くして、いや、実際にはどれくらい時間がたったかなんてわかるわけないのだが、自然に起きたということは、少なくとも自分の睡眠欲が満たされるくらいの時間はたったのだろう。

目を開けたときに見えたのは、少し傾き始めている太陽と、その光を薄めるようにかかっている雲、そして―――


拓真のベルトのはずれたズボンに手をかけチャックを下に降ろそうとしている上半身下着姿の椿。


「……何をしてる?」

「ナニをしている」

「離れろ、エロ女」

「ああっ…エロ女……いい……もっと蔑んでくれ」

「お前にだけは勝てる気がしねえ」

「それは光栄だな」

「いいから離れろ、ほら」

「まったく……君はどうしてこんなタイミングで起きるのかな……もう少しで、それなんてエロゲ?的なイベントが発生したというのに……」

しぶしぶ椿は手を離してぶーぶー文句を言った。

「黙れ、フラグを立てた覚えがねえよ」

「安心しろ、君と出逢ったときからすでにフラグなんて立ちまくっている」

「そうか、じゃあもう一回初めからやり直すわ。リセットボタンは?」

「別に構わんが……あるのは私ルートだけだぞ?それに選択肢なしのプロローグでフラグが立つ」

「最悪だな」

「最悪とまで言わなくてもいいじゃないか……それよりいつの間に教室を出ていたんだ?君をまた見ていられると思っていたのにいなかったから少し泣きそうになった」

「ああ、そう」

「私はあまり放置プレイは好きではないのだぞ?」

「そうか、じゃあさよなら」

「まあまて、もう放課後だ、君はどうせ何も食べていないだろう?ほら、私が愛情とか、時間とか、薬とかをたっぷり注いで作ったお弁当だ」

「これはどうも、ありがたく環境破壊に貢献させてもらう」

「そして滋養強壮の効果のあるそれを食べ終えたら、メインである私を召し上がっていただこうと思っている」

そう言って拓真にしなだれる。

「慎んでお断りさせていただこう」

「ふふ、君は素直じゃな……」

「ん?……どうし――な!?」

椿が言葉を止めたため、拓真は疑問に思ったが、

突然、椿は拓真の頭を両手で動かないようにして、これでもかというほど顔を近づけて拓真をじろじろ観察して、

「まさか……いや……しかし……ふむ……」

椿は独り言を呟いて、考え込んだ。

「お、おい……どうかしたの――んむ!?」

「はあん、もう!なんて愛おしいんだ君は!」そして椿は何の脈絡もなく、拓真の顔を自分のむき出しの深い谷間へ誘った。

「むが、んうううー!?」

拓真はすぐに椿を突き放した。

「なな、なにしやがる!?」

「ふう、落ち着いたらどうだ?ただのスキンシップだろう」

そう言って椿は服を着直した。

ちなみにこの学校は制服、私服のどちらでもいいことになっていて、拓真は毎日選ぶのが面倒という理由で制服。椿は私服だ。

「ああ、いま思いついたんだが、今日は君の家に遊びに行くよ」

「はあ?」

「それじゃあ、また後で」

返事なんて聞かず、椿は窓から入っていってしまった。

「遊びに……?…………やべえ……」

拓真は、いまこられてはまずい原因である、ルシフのことを思いだし、急いで家路についた。





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