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主人(マスター)と悪魔(メイド)の主従関係  作者: 睡蓮酒
第二章 ~吸血鬼とか、ドッペルゲンガーとか~
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第39話 協力×真相=子供?

変容していくドッペルゲンガーと魔力を使い果たし動けないルシフを見て、拓真は呟く。

「さ、て……どうしたもんかな」


正直、仕様がわからなかった。

ドッペルゲンガーを曲がりなりにも倒したルシフは動けず、サリエルは負傷、椿はその処置及び介護。

戦えるのは現在最も弱いであろう拓真だけ。八方塞がり。


「随分お困りのようだね」


突然後ろから声がかかった。

拓真は特に意外といい風もなく、


「……よお、生きてたのか、エクスピール」


「おかげさまでね。まあ、それはともかく今君は誰かに助けを求めるべき状況なんじゃないかい?」


「そうだな…………椿ぃ!!流石にやべえからこっちに加勢してくれねえかぁ!!」


「いやいやいや!違うだろう!?…………綾乃桜さんも『うんわかった』みたいな反応してこっち来ないで!?ここ!今君の目の前にいる世界最古の吸血鬼がここにいるんだけど!?」


「ああ?んなこたぁわかってんだよ。お前はもう俺たちに協力してくれる仲間なんだから、今更助けてくれなんて言う必要ねえだろ…………今は頼りにするぜ、エクスピール」


拓真は刀を握り直す。

椿も呼ばれたのは本気でではないとわかっていたので、すでにサリエルの介護に戻っていた。


「…………ふん、任せておくといいよ。アレはどうしてでも余が止めてやろうじゃないか」


「んで、ドッペルゲンガーは今何をしてんだ?」


拓真は今も変容を続けるドッペルゲンガーから目を離さずに言った。


「おそらく、ドッペルゲンガー自身の姿になろうとしているんだろうね」


「ドッペルゲンガー自身?」


模倣コピーするんじゃなく、本物オリジナル、つまりアレだけの姿を形成しようとしているんだろうということさ」


「なるほど、そういうことか」


「……拓真、余は「いらん」!」


拓真はエクスピールの言葉を遮る。


「お前が何をしようとしたのかは知らん。けどな、もうそれはしないと決めたんだろう?だったらもういいんだ。お前はそれを自分の中に抱えとけ。二度とそんなことを考えないように。そして、もしお前しようとしたようなことをしそうになっているやつがいた時に、救ってやれ」


「……かっこいいこと言うじゃないか、彼女らも君のそういうところに惚れてしまうんだろうね」


エクスピールはうんざりしたような、あきれたような―――――救われたような――――顔をして言った。


「ふん、こんなことを言うようになったのは多分俺の養育者がよかったんだろうぜ」


「ふうん、そんなにいい親なら是非とも会ってみたいものだね」


「親代わりだけどな。会いにいきたいなら理事長室へどうぞ」


「げ……もしかしてあの人かい?転校の際に会ったけど、苦手だなあ。あの人に育てられてよくもまあそれなりにまともに育ったもんだね」


「……何を見たのかされたのか知らんが、あいつがなんか迷惑かけたんなら謝る」


エクスピールは本気で嫌な何かを思い出したような表情を浮かべ、拓真は本気で申し訳ないような表情を浮かべて理事長室の方向を睨み付けた。


「いいよ、少なくとも君の責任じゃないと思うしね。それより……もうすぐ終わるようだ」


ドッペルゲンガーの変容がさらに加速していく。そろそろ仕上げだというように、魔力の密度が段違いに上がってゆく。


「ああ、鬼が出るか蛇が出るかだな」


「まったくだ」


「……覚悟はできてんだな?」


「ああ、アレを止めるのは余の役目だ。余がこの地に来たとき、アレを見つけて利用しようとしたが、アレは強すぎてね、不安定なまま放っておいたら暴走して街ごと喰らい尽くしてしまう可能性があったんだ。呼び起こした余としてはアレを不安定にしたまま死ぬわけにはいかなかった。だから余はアレに"僕"をくれてやり、余が死んだら"余"をくれてやる契約をしてアレを抑制し、余が死んだ後も安定するようにしていたんだよ」


エクスピールはもう何年も前のことのようにドッペルゲンガーの始まりと危うさを語る。


「だけどアレがあんなことをしようとしているならそれに意味は無くなった。そしてアレは確実に暴走するぞ。アレは元々模倣コピーをするようにしかできていないんだ、そんな存在が無理をして本物オリジナルになろうとすれば魔力の流れが変わり暴走してしまうのは自明の理だ」


「そうか、んじゃあ何がなんでも止めてやんねえとな」


「……そうだね、止めよう。アレを……いや、余の……"繋がり"の一つを」


「アアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!」


ドッペルゲンガーの一際大きな絶叫、奇声、悲鳴――――――

魔力が渦巻き、収縮し、凝固する。



ゴバァ!!――――――


爆発音と衝撃が空気を伝って拓真たちの皮膚を震わせた。

土煙が舞う。

それが収まって現れたのは―――――



『!?』


拓真と椿は戦慄した。


「………子供………?」


エクスピールの表現は的を射ていた。

現れたのは小学生くらいの外見をした男の子。

そしてその男の子からは、誰かの面影が感じられて―――――――


「な……あ……」


「? どうしたんだい?」


エクスピールは拓真を不審そうに見る。


「……どうしたの?」


サリエルは椿を心配するように問いかける。


「な、んで………だ……?だってあれは――」

拓真は、言う。


「だってあれは―――」


椿は、言う。




















「昔の、俺―――」


「昔の、拓真―――」


「あきゃははははははははぁあはははははは!!」


小学生の時の拓真の外見をしたドッペルゲンガーは狂喜の笑顔で、笑い、嘲っていた―――――


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