第34話 再戦×始まり=終わりへ……
今回は短いです。区切りよかったんで……
「……ふぅ」
夜。
エクスピールは片手に人を抱え、ただ茫然と空に浮かんだ名も知らない星々を見上げていた。
エクスピールが抱えている生徒は精気を吸われるという異常な外部からの干渉のせいで気を失っていた。
エクスピールは生徒をゆっくりと地面に寝かせる。
「……あと少し、か……」
エクスピールが無意識にそう呟くと不意に、風が吹いた。
エクスピールが風の吹いてきた方に視線を向けると、視界が突然暗闇に覆われた。
「!?」
視界が暗闇なのは何者かに手で顔を覆われているからで、自分が今高速で押されているというのに気がついたのは視界を覆われてから数瞬後。
「?!??!!?!?」
しかし、それを現象として五感が脳に伝えても整理がつけることができない。煩雑として、混雑した情報が高速で際限なくやってくるせいで、脳が処理できない。次の行動に繋げることができない。
すると、突然背中にに衝撃が走る。
「ぐ……う」
その衝撃と痛みにより、スイッチが入ったようにエクスピールの思考は明瞭になり、整理をつけた。
どうやらアスファルトではなく土の地面に叩きつけられたようだ。
しかし、あれだけの速度で地面に叩きつけられたなら、慣性による威力は計り知れない。地面は割れ、土埃がたつ。
「く、何が……ああ、なんだ君か」
土埃が収まり、エクスピールが視界を覆う手を退けると、知った顔があった。
まあ、手を退けなくてもエクスピールには誰なのか検討がついていたが。
「よお、また会ったなエクスピール」
拓真だ。
足元から青白い電光が走っているのをみると、高速移動は"電光石火"によるものだろうとエクスピールは理解する。
周りには元々いたのだろう、ルシフたちもいる。ルシフたちを発見するついでに、ここが京光高校のグラウンドだとも理解した。
「……あきらめてはくれないのかな?君たちでは余を止めることは不可能だったろう」
「そうでもねえよ、今回は全力でお前らと戦える。」
「……そうか、では余たちもそれに応えよう」
エクスピールがそう言うと、闇が不自然に揺れた。
「!?、チッ!」
拓真はそれに気付き、足に電光を走らせた。そして一瞬でルシフたちの前に姿を現す。
「ドッペルゲンガー……!」
闇から現れたのは二人目のエクスピール、つまりドッペルゲンガーだった。
「……」
ドッペルゲンガーは何も言わない。
「……ルシフ」
「分かっておる」
拓真がルシフの名を呼ぶと、ルシフはエクスピールとドッペルゲンガーのちょうど中間に向かって手に発生させた炎弾を投げた。
『!?』
エクスピールはもちろんのこと、ドッペルゲンガーも魔力による炎ではダメージを負ってしまうので、二人はそれぞれ逆方向に飛んでかわした。
そして、エクスピールには椿とサリエルが、
ドッペルゲンガーには拓真とルシフが対峙していた。
「さあ、始めようぜ。んでもってこれで終わりにしよう」
拓真が刀を鞘から抜く。
「……そうだね、僕たちが勝って、それで終わりだ」
この物語の終わりが、始まった―――――