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主人(マスター)と悪魔(メイド)の主従関係  作者: 睡蓮酒
第二章 ~吸血鬼とか、ドッペルゲンガーとか~
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第30話 ドッペルゲンガー×対決=戦略的撤退

「ちっ、私は一人目を追ってくる、てめえらはそいつをなんとかしやがれ!」

「分かった、気を付けろよ」

「はっ、つける必要がねえよ」

「あーそうかい」

九尾は一人目のエクスピールの消えた方向へ走っていった。

拓真はそれをみてから二人目に向き直り、

「誰だ?お前」

刀を鞘から抜き放ちながら二人目のエクスピールに尋ねる。

「吸血鬼。エクスピール・アンブライトだけど、どうしてそんな分かりきったことを?」

二人目のエクスピールは肩をすくめ、半笑いで拓真の質問に答えた。

「んなわけあるか、俺たちがさっき捕まえて、逃げてったのが吸血鬼。エクスピール・アンブライトだろうが」

「それでも、僕はエクスピール・アンブライトなんだよ」

「意味がわかんねえよ、お前本当は何なんだ?」

いや、拓真には今目の前にいるエクスピールが本当は何なのか見当がついている。それでも、拓真は確たる根拠をつかむために話し続ける。


「余が貴様で、僕が君」


二人目のエクスピールが突然そんなことを言った。

「は?」

「そう彼が言ってくれたから、"ボク"は僕になったんだ。僕は彼になることによって自分を手に入れた。だから、僕はエクスピール・アンブライトなんだよ」

「阿呆なことを申すでないよ」

ルシフが口を挟む。


「ぬしはあの吸血鬼ではない、ドッペルゲンガーであろうが」


「……」

二人目のエクスピールが黙り込む。


「僕、"ボク"はドッペルゲンガーですらなかった」


そして、開口一番に自分がドッペルゲンガーであることを認めた。

「なんじゃと?」

「"ボク"は彼に出会うまで、"ボク"という自我すらないただの"闇"だったんだ。ドッペルゲンガーという、僕という、『存在』以前の、"闇"」

ドッペルゲンガーが自らの左手を闇に変えて見せた。

「だから僕は"ボク"を、"ドッペルゲンガー"を、"僕"をくれた彼を助けることに決めたんだ。だから――」

ドッペルゲンガーは瞳に決意を宿し、構える。


「悪いけど、君たちをここで止めさせてもらうよ」


「……やる気のようだな」

椿が弓を構え、

「……」

サリエルが鎌を顕現させる。

「人通りが少ないとはいえ、あいにくここは住宅街だ。だから――」


刹那、拓真がその場から消える――

次の瞬間、電光石火フラクタルサーキットを使った拓真はドッペルゲンガーの正面に。


「これで決めるぞ」


『分かってる』

いつの間にか、サリエルはドッペルゲンガーの左で鎌を振りかぶり、椿はドッペルゲンガーの右で弓矢を引き絞っていた。

「!……!?」

反応したドッペルゲンガーが後ろにかわそうとしたが、何故か身体が動かなかった。

目を移すと、ルシフが紅い目でドッペルゲンガーを見ていた。


「――動くな――」


ルシフが見たものの動きを封じる魔眼を発動していた。

『おおおおおぉぉぉ!』

正面からは拓真の最硬の刀による斬撃、左からサリエルの鎌による一閃、右からは椿の音速を超える矢による刺突。

三方向からのとてつもない威力の攻撃は、互いに相殺し合い、音すらも出なかったが、全てのエネルギーはドッペルゲンガーのいる一点に集約された。

(手応えあり……あり過ぎてる!?)

拓真が自分の感じた感触に違和感を感じていると、


「ふうん、すごい威力だね」


依然そこにいたのはドッペルゲンガーだ。

右肩から腰にかけて斬られ、左の腕を肩から失い、腹部の横に孔が空いている、攻撃を全て受けたことがわかるようなドッペルゲンガー。

しかし、ドッペルゲンガーは痛みを感じているような反応をせず、


「でも、僕には関係ない」


途端、ドッペルゲンガーの身体が闇となり、夜の闇に溶け込んでから、再びエクスピールの身体を形成した。

もちろん無傷の、だ。

「そんな……」

「彼のような吸血鬼は限りなく不死に近い存在らしいんだけど、僕のようなドッペルゲンガーは完全に不死なんだよ。そして――」

ドッペルゲンガーはサリエルを見てから、


「これがドッペルゲンガーの真骨頂だよ」


ドッペルゲンガーの身体が闇になり、そして――――




















二人目のサリエルになった――


「……予想はしてたんだが、な」

拓真の額に一筋の汗が伝う。

「……」

サリエルがドッペルゲンガーを睨む。


「行くよ」


ドッペルゲンガーはそう言うと鎌を構え――サリエルに向かって投げた。

「!?」

サリエルは鎌を盾にして、なんとか直撃は避けたが、十分な体勢ではなかったため、そのまま吹き飛んだ。

「……かはっ」

「くっ!」

椿が弓を構える。

すると、ドッペルゲンガーは近くにあったコンクリートのブロック塀を豆腐でもそうするかのように手で抉り取り、そのまま片手で圧縮。そして椿に向かって投げた。

「なっ!?」

それは椿の足に掠り、椿の朱の袴が血で赤黒くなる。

「ぐっ……」

「椿!」

拓真は椿の方を向いた。

その隙に、ドッペルゲンガーは手放した鎌を手元に顕現させ、拓真に斬りかかろうとする――

「しまっ!――」

「余所見をするものではないぞ主さま!」

すると、ルシフが"否定で固められた矛盾の壁"を展開して鎌を受け止めた。

「サンキュールシフ!」

「しかし主さまよ……こやつの鎌、本物より重いぞ……!」

ルシフがそう言うと、"否定で固められた矛盾の壁"が砕けた。

ドッペルゲンガーは一度間合いをとる。

「んな馬鹿な…………しゃーねえか」

拓真は呆れたように現実を見つめてから、何かを決めたようにして、また消えた。

「……!」

ドッペルゲンガーが周りを見渡すと、サリエルと椿が消えていて、前を向くと拓真が二人を抱えて立っていた。


「勝てねえ、逃げるぞ」


すると拓真は足から電気を迸らせ、ルシフと共に消えた。

ドッペルゲンガーはしばらく立ち呆けて、

「逃げられちゃった……まあ、いいや」

闇となって消えた。













とある公園。

「はあ、はあっ…………死ねる……」

拓真は肩で息をしながら汗を拭った。

「大丈夫か?椿、サリエル」

「ああ、粗方血は止まったよ」

「……平気」

「そうか、よかった」

「して主さまよ、あれをどうするつもりじゃ?」

「んー……お前らアレに勝てる?」

『アレは無理』

三人が声を合わせて言った。

「だよなあ。情報が少なすぎるし……………くっ…………あいつに協力してもらうしかないか………………」

「君、まさかあの人に協力してもらうつもりか?」

椿が信じられないといった顔をする。

「……仕方ないだろ」

拓真が嫌そうな顔をして言う。

「主さまや、誰じゃ?そのあいつとは」

「……?」

拓真と椿は顔を見合わせてから、声を揃えて、言った。


『うちの学校の理事長』

戦闘描写がしょぼすぎなのが自覚できます……(~_~;)

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