第27話 首輪×ボッコボコ=なんやかんや
「楽しかったな」
「うん、楽しかった」
「楽しかったのう」
「……別に楽しくなくなんかなかった」
「や、サリエル。それもう一周してデレてるから」
「!」
サリエルは指摘されて一瞬固まってから、また何事もなかったかのように歩き出した。
まあ、それだけ楽しかったのだろう。
そこに、
「ねえ君たち……」
「何だ?エクスピール」
エクスピールが沈痛な声音で拓真たちに話しかけた。
「余は今日一体何をしてきたんだろう?」
「遊園地に行ったんだろ」
拓真が何をいまさら、という顔をしてエクスピールからの問いに答えた。
「そうだよね、余は今日遊園地に行ったはずさ」
「だからどうしたんだ?」
「じゃあどうして……」
一息。
「じゃあどうして余は今首輪を付けられてボッコボコな状態でいるのかなぁ!?」
『……さあ?』
全員(エクスピール除く)が首をかしげた。
本当によくわかっていないようだ。
「たしか首輪はサリエルが付けたんじゃなかったかな?」
「……(コクリ)」
「鍵はどうしたんだ?」
「……失くした」
「そうか、では仕方ないな」
椿が腕を組んでうんうんと首を縦にふった。
「あのとき余に首輪を付けた直後に明後日の方向に向かって鍵を全力投球した君の姿を余は見たんだけどねぇ!」
「……気のせい」
「いや違うと思う、いや言えるよ!?」
「……拓真、あのナルシスト野郎が意味不明な言いがかりをつけてくる」
サリエルがトテトテと走って拓真の後ろに隠れてからエクスピールを指差した。
「おいエクスピール。こんな女の子をいじめるなよ。いじめはかっこ悪いぞ」
拓真はそんなサリエルの頭を撫でながら割りと真剣な感じでエクスピールに注意した。
「その言葉君たちにそっくりそのままお返ししてもいいかなぁ!?」
「……駄目」
「まさかの拒否!?」
「ふぅ……もう言いたいことは終わったのかな?」
椿が嘆息する。
「終わってないからね!?なんで余がボッコボコになっているのか説明してもらわないと!」
「……なんでだっけ?」
「確か儂が主さまを寝かせておったところにこやつらが来て――」
「椿とサリエルが暴れて、なんやかんやでエクスピールがボッコボコになってたな……なんでだ?」
「本当になんでなのかなあ!?なんで君じゃなくて余がボッコボコに!?」
「なんやかんやがあったからだろ」
「なんやかんやがあったからじゃのう」
「なんやかんやあったからだろう」
「……なんやかんやあったから」
「いや違うからね!?確かあの時なんやかんやあったから!……あれ?やっぱりなんやかんや!?」
「なんやかんやだろ?」
「な、何故なんやかんやとしか言えないんだ……?あの時余は確か……なんやかんやで……あれ?ん?」
エクスピールが頭を抱えて考え込むが、何故か思い出せないようだ。
「まあなんでもいいじゃないか、そんなこと」
「ぐぅ……思い出せないものは仕方ないか……それで君たち、今日は何をしていたのかなぁ?」
「遊園地に行ったであろう」
ルシフが答え、
「何のために?」
「エクスピールと親睦を深めるためだろ」
拓真が答え、
「だよね、それで今の余を見てどう思う?」
『………………』
全員顔を見合わしてから、
『サーセンw』
「き、君たち………くっ!」
エクスピールは若干泣きながら走り去っていった。
エクスピールが見えなくなってから、
「……行ったか」
「つまりもう終わったということかな」
「ああ、多分な」
「主さま、何が終わったのじゃ?」
「んー……すぐに解るよ」
「?」
拓真たちがそんなやりとりをした。
翌日。
拓真たちがエクスピールとともに遊園地から帰宅していた時間に拓真たちの通う高校の女子生徒が不審者に襲われ、原因不明の病(例のごとく身体が動かなくなってしまう、病といえるかわからないようなものだが)でしばらく休まなければならなくなったという連絡が九尾から伝えられた。
少し短めでしたね……(・・;)
まあ、区切りがつけやすかったので……




