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主人(マスター)と悪魔(メイド)の主従関係  作者: 睡蓮酒
第二章 ~吸血鬼とか、ドッペルゲンガーとか~
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第24話 不審者×騒ぎ=事件の兆し

エクスピール・アンブライトが転校してきてから一週間。

エクスピールの性格は誰にでも話しかけられるようなライトなものであり、勉強、スポーツ共に優秀であるため、わずかの期間でクラスの中心的存在になった。

そんなわけで不安に思われたエクスピールと十組の関係はそれなりに良好だった。

そんな一週間が過ぎた日の昼休み。

例のごとく屋上。

「最近このへんに不審者が出ているらしいぞ」

椿がそんなことを弁当を置いてから言った。

「知ってるよ、九尾が朝にんなこといってたじゃねえか」

今日の朝、九尾が最近夜に不審者が出て生徒に被害が出ているから気を付けるようにと十組に向かって連絡したのだった。

「ふむ、ではこんなことを知っているか?」

「?」


「不審者を見た人間はいつの間にか気を失い、起きたときには精気を奪われたかのように身体が動かなくなるのだそうだ」


「……」

拓真が食うのを止めた。

「君はただの不審者の仕業だと思うか?」

「……人外の仕業か」

「おそらくな。あと、被害にあった中でも少数だがこんな証言があるらしい」

「なんだよ」


「自分を見たそうだ」


「そうか、じゃあお前が犯人だな。残念だよお前はある程度信用していたのに」

拓真が椿に手錠を掛けるジェスチャーをする。

「いや、私じゃなくてな。何て言えばいいのか……気絶した人間は、その直前に気絶した人間とそっくりの人間を見たのだそうだ」

「ああ、そういう……ていうかよくそんなことを知ってるよな、お前」

「まあ、退魔とかそんな仕事をしている家柄なんでな、少しでも魔の気配がする噂は私の耳に入るんだ。

それで、君は今言った条件に当てはまるような人外を知らないか?私には心当たりがないのだが」

「そうだな……精気を抜かれるっつーのは心当たりがありすぎて特定できないんだが、自分とそっくりの人間を見たっつーのは一つの魔しか思い浮かばねえな」

「儂もその類いの魔は一つしか心当たりがないのう」

「何なんだそれは?」


『ドッペルゲンガー』


「あ……しかしそのようなこの国の外が生まれの魔がここにいるのか?」

椿が失念していたというように声を洩らした後に、それを失念させていた疑問を口にした。

「ふむ、この国はあらゆる宗派や思想が集まっておるからのう。人の信心によって存在するのが魔じゃから、この地にドッペルゲンガーがおっても不思議ではないぞ」

「日本はクリスマスもやるし正月もあるしハロウィンだってやる。割りと日本って魔が存在するのになんでもありな国なんだよな。現にここに悪魔と死神いるし」

「なるほどな……だが、私の知っているドッペルゲンガーと今回の事例はなにかずれている気がするんだが」

「ああ、俺もそれが気になるんだよな。確かに自分と同じ姿の自分を見たっていうのはドッペルゲンガーとドンピシャなんだが、ドッペルゲンガーを見た人間は精気を抜かれるどころか不幸に見舞われて死ぬってのが定説だからな」

「主さまや、魔の正体はともあれ、明らかに怪しい輩が一人おるじゃろう?」

「……エクスピール・アンブライト」

「だろうな、あいつが来た時期と騒ぎが始まった時期が重なりすぎてるしな」


「へぇ、お前らにしちゃ上出来じゃねえか、私もあのナルシスト野郎が怪しいと思ってたんだぜぇ?」


突然声がした方に振り返るといつかのように九尾がフェンスにもたれ掛かっていた。

「……九尾先生、その登場気に入ったんですか?そして教師としての自覚はあるんですか?そんなんじゃまた愛しの芙蓉先輩に怒られますよ」

「うるせぇ別に気に入ってねーし教師だからこそ生徒の安全のためにこうしててめえらに会いに来てんだしあいつは関係ねえ!」

「……で、何の用?百合狐」

「殺すぞ幼女。ここは高校だぞ来るところ間違ってんじゃねえのか?」

「……かかってこい百合狐が死ね」

「上等だ幼女が死ね!」

「まあ待てお前ら落ち着け」

両者が構えたところに拓真が割り込んで止めた。

「……」

「……ちっ、さっさと本題入んぞ」

「ああ、知ってることがあるなら話してくれ」

「てめえらも知ってるとおり夜に何かを見てからぶっ倒れたっつー騒ぎがあのナルシスト野郎がきてから起こり始めた。教師である私には大抵の情報が回されてくるんだがなぁ、気になることがいくつかあった」

「それは?」

「まず一つは、被害者はこの学校の生徒だけだっつーこと」

「そうなのか?」

「いや、流石にそこまでは私にも……」

椿がかぶりを振る。

「あとてめえらの言ってた自分を見たっつーのは十組か隣の九組の生徒の被害者だけだ。これはまだ確証ねぇけどな」

九尾が少し鼻を鳴らした。

「……九尾先生」

「あぁ?」

「ちゃんと先生してるんですね」

「!……うっせぇ!」

椿が九尾に正直な感想を言うと、九尾は顔を紅潮させて、屋上から姿を消した。

「……これからどうするのじゃ?主さま」

「さっ、て……どうしたもんかな……」

拓真は入道雲の綺麗な空を見上げてから、

「とりあえずエクスピールと遊びに行くか!」

『?……!?』

拓真以外の一同はしばらく拓真の言葉の意味を理解できず、それから、

『はあああああああああ!?』

叫んだ。


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