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主人(マスター)と悪魔(メイド)の主従関係  作者: 睡蓮酒
第一章 ~狐とか、天狗とか~
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第16話 それは……多分天狗との決着と死神の本気だった……と思う

「せぇあ!!」

天狗山が掛け声と共に芭蕉扇で自分の周りに風を発生させ、水分を含んだ土を巻き上げた。

砂は風と共に拓真たちの所にまで舞い飛んだため、拓真は本能的に目を覆った。

「ちっ、何を……?」

拓真が視線を元に戻した時には天狗山はもう先ほどの場所にはいなかった。

「何処に――」

「竹藪の中じゃよ」

「……」

サリエルがうなずきながら鎌を構える。

確かに竹藪からは何かが物凄い速さで動いているような不自然な葉のざわめきが聞こえ、竹たちがしなり、ぶつかりあっているのが見えた。

天狗山は竹から竹へ高速で跳び移り続けているのだ。

「ルシフ、サリエル、視えるか?」

「速いは速いが儂らに視えぬ程ではない……はずなんじゃがのう。竹が邪魔で影が視える程度にまでなっておる……難儀じゃのう」

「……厄介」

「そうか、仕方ない……天狗山が攻撃のために近づいてきたときにカウンターを仕掛けろ」

「了解じゃ!」

「了解……わかってたけど」

ルシフとサリエルが拓真を挟んで背中合わせになる。

感覚を研ぎ澄ませ、五感全てを使い、外界に起こった現象を一片たりとも逃さぬように……

不意に、風の動きが乱れた――

一瞬、空気がある一点に吸い込まれるように、音も無く動きだし、

そして――

天狗山の一点突破型超高密度突風がどこからともなく拓真たちを襲った。

「――っ!?」

「ちっ!」

なんとかルシフがあの見えない壁

――ルシフいわく"矛盾で固められた否定のイージス"というらしいが――

を展開して風を防ぎきった。

「へえ、なぶり殺しか……正々堂々なんだか、なりふり構わないのか、って感じだな」

「しかし主さまよ、どうするつもりじゃ?どうやらあやつからは近づく気がないようじゃが」

「んー……ルシフ、どうにかなんねえか?」

「このような場所で火事にならんように炎をあやつに当てるのは難しいのう……山ごと焼き払うても構わんというなら話は簡単なんじゃが」

「そうか……さて、どうしたもんかな」

「……私が行く」

「いけるのか?」

「……そこの役たたずといっしょにするな」

「役たたずではないわ!儂だってやろうと思えば……」

「……」

「なんじゃその馬鹿にするような目は!?おぬしが儂の部下だということを分かっておるのか!?」

「ふん……忘れた」

サリエルは最後にそう言って、竹藪の中へと入っていった。

確かに、周りに竹のある状況では炎を放つルシフより鎌を振り回すサリエルのほうが適任だろう。

サリエルも天狗山と同様に竹に飛び乗る。

「ふん、貴様かぁ、前は世話になったなぁ!借りを返させてもらうぞ」

「……返さなくていい」

高速で跳び移り続けている天狗山と、それに負けじと跳び移り追いかけるサリエル。

身体能力はサリエルが上なのだが、天狗山のように竹から竹へ高速で跳び移るなどという曲芸はしたことがあるわけがない。それによって速さは五分五分。

そのとき、サリエルの着地した竹が細かったためか、折れてしまい、跳躍が不十分になった。

「!?」

「せいっ!」

その隙に、天狗山がサリエルの上からあの一点突破型超高密度突風をサリエルに向かって放つ。

バランスを崩した状態でガードもできず、竹を薙ぎ倒し、地面に叩きつけられた。

「――っかは!」

「サリエル!」

拓真とルシフが駆け寄る。

「……拓真」

サリエルが鎌を杖のようにして立ち上がった。

「なんだ?」

「――伏せてろ――」

「!?……ああ」

そこに拓真が見たのは、何も映していない、しかし憤怒が宿った瞳。

まさに魂を狩る眼をした死神がそこにはいた。その死神の、本能的な恐怖を引きずり出す声に、拓真は肯定の言葉しか言えなかった。

「ふん、やはりきさまら程度ではこの俺を倒すことは不可能だったようだなぁ!」

「……調子に乗るな。天狗風情が」

「なんだとぉ?」

「お前程度の妖怪が……妖怪程度が、私たち死神や悪魔に勝てると思うな」

「ならば貴様はこの状況をどう切り抜けるつもりだぁ!?」

「……こうする」

サリエルは鎌を地面と水平に構える。

そして――

円月輪ムーンサルト

サリエルが振り回した鎌は、サリエルを中心に半径15mにわたって竹の高さを鎌を構えた高さに揃えた。

「なっ!?」

「見つけた」

芭蕉扇の有効範囲にいた天狗山は竹の足場をなくし、地面に着地してしまった。

サリエルが弾丸のような速さで天狗山まで跳び、

サリエルは天狗山の脳天に向かって鎌を振り下ろした。

天狗山とサリエルの戦いが決着した――



―――――――――――――――――

その頃。

「大丈夫か?稲荷さん」

「は、はい。なんとか……」

「ふむ、ここくらいまでくれば大丈夫だろう」

「そうですね」

「さっきなにやら木が倒れる音もしたし、おそらく穏やかに解決したわけではないのだろう。私は戻るから、稲荷さんはここで待っていてくれ!」

「はい、わかりました」

「うん、それじゃあまたあとで!」

椿が稲荷に背を向けて走り出した。

「ええ、それじゃあ――」

稲荷は……笑った。

. . . .

「さよなら――」


ドスッ―――――

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