第11話 それは……多分狐の神様だったんじゃないかな
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昼休み。
「はあ……」
昼食を屋上でとりながら、拓真は大きくため息をついた。
「どうしたんじゃ主さま、何かあったのかの?」
「いや、ルシフのことが愛おしすぎて恋煩いをしていた」
「な、あ、そ、そうか……」
ルシフは顔を赤くして照れていたが、
黙っていないものたちが二人いた。
「私のことは煩ってはくれないのか?拓真」
「別にお前のことなんてどうとも思っていないけど、私のことを無視することは許さない」
「まて、お前ら、その俺の首にかけた手と鎌を引っ込めろ、冗談だ」
「……冗談じゃと?」
ルシフが魔眼で拓真を睨み付けた。
「まって、待ってください、冗談ではないです、この気持ちは本物です」
「そうか、では君はここで人生を終えるのだな」
「……死ね」
椿とサリエルが拓真の命にかけた手に力を込める。
「俺は一体どうすりゃいいんだよ……」
四面楚歌。
「あ、あの……」
「私のことも好きだと言えばいいんじゃないか?」
「別に言ってほしいだなんて思ってないけど言えばいい」
「あーもうわかった、俺は椿とサリエルも大好……」
「言うのか?主さま?」
浮気か?みたいな感じでルシフが洒落にならない表情を拓真に向けてきた。
「あ、あの……」
「言いません、俺はルシフ一筋です」
「そうか、君には長い間世話になったな、ここでお別れしてしまうのが残念だよ」
「死ね」
「本当に俺はどうしたらいいんだ!?」
「あ、あの!!」
突然聞こえた大きな声に四人が振り向いた。そこにいたのは肩くらいまで軽くウェーブのかかった髪が伸びていて、少し小柄な女の子だった。
「誰だ?お前」
「あ、すいません……えっと、私、あなたたちのとなりのクラスの二組の稲荷 初音といいます」
「へえ、そうなんですか、どうやら私たちに何か用があるみたいですが少し待っててくださいね、この駄目な男を消すだけですので、そんなにはお待たせしませんから」
「お前が待て椿。話を聞いた方がいいんじゃないかうん聞いた方がいい」
「そうだな、きっとそっちの方が君もいいだろう……さあ、遺言を言え」
「そっちのことじゃねえよ」
「ふう、もういい、飽きた」
そう言って椿は手を放した。
「ほら、ルシフとサリエルも戦闘状態を解け」
「わかっておるよ」
「……仕方ない」
そう言ってルシフとサリエルも拓真に向けていた殺気を解く。
「……で、何のようだ?えーと……稲荷さん?」
「あ、はい、その……どこから話したらいいのか……うーん……」
稲荷はしばらく一人でぶつぶつとつぶやいたあと、
「それじゃあ……まず……あなたたちはただの人じゃないですよね?」
「……」
拓真を除く三人がそれとなくいつでも応戦できるように構えた。
「それで、何の用だ?」
「その……私を助けてくれませんか?」
「……話を聞こうか」
「ありがとうございます」
「ほら、お前らも座れ」
「そうだな、別に害意があるというわけではなさそうだ」
「そうじゃの」
「……」
サリエルがコクリとうなずく。
「さて、まず、俺たちがただの人じゃないって分かるってことは稲荷さんもただの人じゃない……もしくは人じゃないんだな?」
「はい……」
「おそらく、稲荷という名字からして、君はお稲荷様……狐の神様なのかな?」
と言ったのが椿。
「はい、そうです。私はこの近くにある神社、狐音神社の神様なんです」
「狐音神社?……聞かない名だ」
「うーん……山の中にある、かなり古びた神社なので、知名度は低いかも知れませんね。あ、あっちに見える山の中にあります」
そう言って稲荷は杉の木が沢山生えているのが見える山を指差した。
「へえ、あんなところにも神社があったとは……知らなかったな」
椿が少し悔しそうに言った。
神社の娘だからって、すべての神社を把握している必要があるのだろうか?
「それで、神様のあんたが、俺たちに何の用だ?」
「実は、私、天狗に追われていて……」
「天狗?」
「ええ、天狗です。一般的に顔が赤くて、鼻が長くて、空を飛ぶと言われている天狗です」
「なんでその天狗に追われているんだ?」
「その……どうやら私の神社があるあの土地は天狗にとって住みやすく、いろいろと都合のいいところらしくて……でも私が神様としてあの土地を司っているせいで、天狗はまだあそこには落ち着いて住めないんだそうです」
「……それで天狗は自分が神社を乗っ取るために稲荷さんを消そうとしている……と?」
「はい……」
「うーん……本当なのかなあ、椿?」
「私からはなんとも……」
「ルシフは?」
ルシフは目を瞑ったまましゃべらない。
「……」
「ルシフ?」
「主さまや、どうやらその天狗とやら、来たようじゃぞ」
「……」
ルシフは目を開けて、
サリエルも召喚した鎌を構える。
「ふう、確かに何かが来ているようだな」
椿が嘆息して武器はないが、一応構える。
「稲荷さん、俺の後ろに」
「はいっ」
稲荷は慌てて拓真の後ろに隠れた。
「……くるぞよ」
途端、一迅の強風が吹き抜ける。
そして、人影が降ってくる。
降ってきたのは男。
長めのボサボサの髪に、つり上がった目、長身だが、しっかりと筋肉がついていることが見てわかるほどだった。
手に持っているうちわのような葉っぱは、まさに天狗のそれだった。
「見つけたぞぉ!!くそ狐ぇ!!」
天狗は稲荷を睨みながら叫んだ――