第2話 あずきと黒いねこ
* * *
いなくなったあずきを探すために、アキちゃんとママは家の外へ飛び出しました。
「ママ! あずきどこに行っちゃったんだろう?」
アキちゃんは泣きそうな声で言いました。
「うん・・・とにかく捜そ! ママはこっちを捜してみるから、アキは公園の方へ行ってみて!」
そういうと、ママは家を出て左の方へ向かって行きました。
アキちゃんは、ママに言われたとおり公園のある右の方向へ「あずき~!あずき~!」と名前を呼びながら進んで行きました。
アキちゃんの後ろの方からは、同じように「あずき!あずき!」というママの声が聞こえてきました。
あずきはいったいどこへ行ってしまったんだろう?
いつも家の中に閉じ込められていて、本当はずっとお外に出たかったのかしら?
それとも、もうわたしのこと嫌いになっちゃたのかしら?
あずきのことを捜しながらアキちゃんは頭の中でいろいろなことを考えました。
空はだんだんと暗くなり、西の空が赤く染まり始めていました。
アキちゃんは一軒一軒の庭先を覗き込み、停まっている車の下や、塀の上や木の上などいろいろな場所を探しました。
しかし、あずきの姿はどこにもありません。
その頃ママは、アキちゃんとは逆の方向をあずきのことを捜しながら進んでいました。
途中、近所の人に出会うと、ママはあずきがいなくなったことを説明して見かけたら連絡してくれるようにお願いをしました。
アキちゃんはとうとう公園までやってきました。この公園は3ヶ月前にまさるくんと遊んでいてダンボール箱に入れられて捨てられていたあずきを見つけた公園でした。
はじめてあずきと出会った公園でした。だから、またここで再びあずきに会えるような気がしていました。
「きっと、この公園のどこかにいるはずだわ・・・」
アキちゃんは今までよりも、さらに慎重に公園を隅から隅までさがしました。
空の色は一段と薄暗くなって、公園の街灯には早々と明かりが灯りました。
アキちゃんは薄暗くなった公園を必死で探しました。
公園は街灯が点いたおかげで、明るくなって少しだけ見やすくなりましたが、街灯の光が当たらない場所は余計に暗く感じるようになって、近くまで寄らないと良く見えなくなっていました。
「あずき~! あずき~!」
アキちゃんは何度も何度もあずきの名前を呼びました。
公園に少しでも白いものが見えると、アキちゃんは「あずき!?」と叫んで駆け寄りました。
しかし、それは白いビニール袋だったり、子供が忘れていった白いサッカーボールだったりで、あずきではありませんでした。
それが分かるたびに、アキちゃんの心は段々と重く沈んでいきました。
もう二度とあずきには会えないような気がしてきました。
空は一段と暗くなりました。急いで家を飛び出してきたので、うす着のアキちゃんはこのとき初めて寒いと感じました。
「きっと、あずきはもっと寒いはずだわ・・・本当なら今ごろはこたつのなかで丸くなっているはずなんだから・・・」
そう思うと、寒いなんて言っていられないと思い、もう一度あずきを捜す勇気が湧いてきました。
もしかしたら、今ごろもうママがあずきを見つけて家にいるのかもしれない・・・と考えたりもしましたが、家に戻って確認しようとは思いました。
もし、家に誰もいなかった時のことを考えると、怖くて家には帰れませんでした。
アキちゃんが公園のトイレの裏を捜しているとき、大きな桜の木のかげで白いものが動いたような気がしました。
アキちゃんは、ゆっくりと近付いてみるとその動いていたものは、間違いなく猫でした。
暗くて、あずきかどうかは分かりませんでしたが、猫だというのはアキちゃんにはハッキリ分かりました。
「いた! あずきだ!」
アキちゃんは、その猫の方へ走り出しました。
「あずき! おいで! あずきー!」
アキちゃんはトイレの脇を走り抜け、大きな桜の木のある芝生の植え込みに向かって叫びながら走りました。
しかし、アキちゃんがどんなに名前を呼んでも、その猫は奥の方へどんどん歩いて行ってしまいました。
「きっと、まだわたしの声に気付かないんだわ・・・」
そう思いたかったアキちゃんは、呼ぶのをやめて走りました。
そして、芝生の植え込みと土の地面の境にある低い柵を飛び越えようとしてアキちゃんはジャンプしました。
しかし、暗くてよく見えなかったせいでアキちゃんはジャンプした時に低い柵に足を引っ掛けてしまいました。
そして、アキちゃんの小さな体は芝生の植え込みの中に倒れこみました。でも不思議と痛くはありませんでしたが、アキちゃんはしばらくの間、動けなくなってしまいました。
芝生の上に伏せたままのアキちゃんの目には、自然と涙があふれ出しました。
声をあげてわんわん泣き出してしまいました。あずきを捜している間もずっと泣き出したい気持ちでした。
ずっと我慢していましたが、転んだ拍子に涙があふれて止まらなくなってしまいました。
その間に、アキちゃんが追いかけていた猫は暗闇の向こうへと消えていってしまいました。
その猫が暗闇の向こうへ消えていくのを、アキちゃんは涙でグショグショの顔を少しだけ上げて見ていましたが、アキちゃんはもう二度とその猫のことを追いかけることはしませんでした。
本当は、その猫があずきで無いということは、見つけた時からアキちゃんは分かっていたからでした。でも、あずきであってほしいと思って追いかけてしまったのでした。
アキちゃんは、まだ起き上がれずに芝生の上に横になったままわんわんと声をあげて泣きました。
もう本当にあずきには会えないような気がしていました。
そのとき、泣きじゃくるアキちゃんの耳に聞きなれた声が聞こえてきました。
「アキ? アキちゃんなの?」
・・・ママでした。
倒れこんでいるアキちゃんの元へ駆け寄りながらアキちゃんの名前を呼ぶママの声を聞いたアキちゃんは、もっともっと大きな声で泣き出してしまいました。
「アキ・・・ごめんね・・・ごめんね・・・ママが戸締りを忘れたから・・・アキ、ごめんね・・・」
アキちゃんのところへ駆け寄ってきたママは、アキちゃんのことを抱きしめながら何度も何度もあやまりました。
アキちゃんが涙でグショグショになった顔をあげ、ママの顔を見あげると、そのママの顔も涙でグショグショになっていました。
公園はすっかり暗くなり、澄んだ空にはキレイな星がたくさん輝いていました。
「早く逃げろ!!」
黒猫は、もう一度あずきに言いました!
黒猫の正面には、茶色い毛をした犬が牙を剥きながら低いうなり声をあげていました。
その距離は、あと一歩その犬が踏み込めば黒猫に届きそうなほどでした。
黒猫に向かって今にも襲いかかりそうなその犬は、あずきよりもひとまわり以上大きな黒猫よりも、何十倍も大きな体でした。しかし、その体は痩せこけていて背中から腹にかけて、あばら骨の形がはっきり分かるほどでした。
その犬が、さらに大きなうなり声をあげた瞬間のことでした。
黒猫が、サッとあずきの方に振り返り、恐怖のあまり動けずにいたあずきの首元にかぶりつきました。
そして、そのまま黒猫は犬から遠ざかるように大きく跳ね上がり、次の瞬間、黒猫に首元を咥えられたあずきの体は宙に浮き上がりました。
黒猫は、そのままあずきのことを犬から少しでも遠ざけるように、あずきの白くて小さな体を放り投げました。
宙に投げ出されたあずきは無意識のうちに空中でくるりと身をひるがえして地面に着地しました。その時すでに黒猫の体は地面に音もなく着地していました。
そして「走れ!」と一言、あずきの耳元で叫んであずきの横を走りぬけました。
今まで体をまったく動かすことが出来ずにいたあずきは、その声に瞬間的に反応し地面に着地したとたん、自分でも気付かないうちに黒猫のあとを追って走り出していました。
「ガルルルルルル・・・・・!!!!!!」
あずきと黒猫が逃げ出したのを見て、ガリガリの犬も大きくうなり声をあげたあと、あずき達のあとを追いかけて走り出しました。
ものすごいスピードで走る黒猫の後ろ姿をあずきは必死で追いかけました。
そのあずきの背後には、狂ったように吼えながら、茶色くて痩せこけた犬が、アスファルトにガチャガチャと爪の音を響かせながら追いかけてきました。
黒猫は時々、後ろを振り返りあずきが自分のあとをちゃんとついて来ているか確認しながら走りました。あずきは、そんな黒猫の後ろを追いかけるので必死でした。
あずきよりもひとまわり以上大きな体をしている黒猫は、その大きな体からは想像も出来ないくらい軽やかな走りでした。
本当ならば、もっと速いスピードで走れるのではないか、と思えるほどでした。
そんな黒猫に比べて、あずきはもうこれ以上速くは走れないというくらいに一生懸命に黒猫のあとを追いかけました。
あずきと黒猫を追いかける犬は、一向に諦める気配はありませんでした。
痩せこけているせいか、体の割りにその犬はそれほど速く走ることができなかったため、あずきは何とか捕まらずに済んでいましたが、その距離は少しずつ近づいているのは確かでした。
もうどれくらいの距離を走ったのか、あずきには分かりませんでした。
あずきは、こんなに長い間、全速で走ったことなどありませんでした。
アキちゃんの家に来て以来、一度も家の外へ出たことがないあずきが、こんなに走ることなどあるはずがありませんでした。
あずきは、自分と黒猫の距離が少しずつ離れて、その代わりに、追いかけてくる犬との距離が段々と近付いてくる恐怖を全身で感じていました。あずきはその時、白くてふわふわした体中の毛が針のように硬くなって逆立っているのを感じていました。
そして、もうこれ以上走るのは無理だ・・・と思いかけたその時、あずきの前を走っていた黒猫があずきの方を振り返り
「ここを曲がるぞ!」
と叫ぶと同時に、スピードをひとつも変えることなく狭い路地を右に曲がりました。
一瞬、あずきの視界から黒猫の姿が消え、その瞬間あずきの心の中には言い知れない不安と恐怖が襲いかかりました。
そして、黒猫が入って行った狭い路地にあずきは飛び込みました。
路地へ入ったあずきを、さらに強烈な不安と恐怖が襲いました。
そこにはもう、黒猫の姿はありませんでした。
黒猫の姿が無かった代わりに、あずきの目に飛び込んできたのは狭い路地の両脇に高くそびえ立つ灰色の壁でした。
一瞬あずきの走る速度が遅くなりました。
あずきは、その狭い路地を必死で黒猫の姿を捜しながら走っていました。
あずきを追いかけていた犬も、あずきのあとを追って路地へと入ってきました。
あずきは、心のどこかで「この狭い道なら、あんなに大きな犬は入ってこれないだろう」と思っていましたが、そのかすかな希望も消え去り、あずきは絶望感でいっぱいになりました。
あずきは、アキちゃんのことを思い出していました。
ほんの小さな好奇心だったはずなのに・・・こんなことになるなんて。
アキちゃんの言い付けを守らなかったバチが当たったのだと思いました。
もし、もう一度アキちゃんの家に戻ることができるなら、もう二度とお外へ出たいなどと思わない。と心に誓いました。
もう、さっきほど速く走れなくなっていたあずきは、それでも全身の力を振り絞って走りました。犬は相変わらずあずきのことを追いかけていました。
地面を蹴るガチャガチャという犬の爪音と不気味な息遣いがあずきの耳に聞こえてきました。
あずきは、もう限界でした。
小さなあずきは、これ以上走ることが出来ませんでした。
犬は、あずきのもうすぐそばまで迫ってきていました。
あずきの目はだんだんと霞んできていました。
もう手の届く距離まで迫った犬は、その骨ばった右足を必死に逃げるあずきの小さな体に向かって伸ばしました。
茶色くて、ところどころ毛が抜け落ちている骨ばった長い右足が、あずきのお尻の上へと伸びてきて、あずきの細くて長いシッポに触れました。
自分のシッポに何か得体の知れない恐怖が触れたのを感じたあずきは全身に電気が走ったような気がしました。
そして、「もうだめ・・・アキちゃん、ごめんなさい」
と、あずきが小さく叫んだ瞬間
「ここだ!」
という、聞きなれた声があずきの耳に飛び込んできました。
凶暴な犬に追いかけられ、もうダメだ・・・と思ったとき、あずきの耳に聞こえてきた声は間違いなく黒猫の声でした。
あずきは、最後の力を振り絞って、犬の攻撃をかわすために必死で逃げながら、黒猫の声がした方を見ました。
なかなか、その姿をみつけられなかったあずきに黒猫がもう一度叫びました。
「ここだ!」
あずきは、その声に敏感に反応し声のする方にもう一度目をやると、狭い路地の両側にそびえ立つ右側のブロック塀に、ほんの少しだけ小さな穴が開いていました。
その小さな穴から、黒猫が顔だけを出していました。
「早く! ここに入れ!」
黒猫は、もう一度あずきに向かって叫ぶと、あずきがその小さな穴に入って来られるように自分の頭を引っ込めました。
黒猫が、ブロック塀に開いた小さな穴の中に頭を引っ込めたのとほぼ同時に、あずきの小さな体もその穴の中へと吸い込まれていきました。
あずきのことを追いかけていた犬が、突然目の前からあずきの姿が消えたことに気付いのはそのブロック塀の穴を通り過ぎてしばらく経ってからでした。
その犬は、まだあずきのことを諦められずに慌てて引き返し、そのブロックの穴に顔を突っ込みましたが体の大きな犬は顔を半分だけ突っ込むのが精一杯でした。
自分の顔が小さな穴に入りきれないことに気付いた犬は、半分だけ突っ込んだ顔を引き抜こうとしましたが、あまりにも勢い良く突っ込んだため、その穴にしっかりと挟まってしまいなかなか抜け出すことができませんでした。
あずきを捕まえるのに懸命だったその犬は、今は小さな穴に挟まった自分の頭を引き抜くのに必死でした。
「キャイン!キャイン!」
なかなか抜け出せない犬は、情けない叫び声をあげました。
ブロック塀の向こう側へ何とか逃げ込むことができたあずきと黒猫は、自分たちがすり抜けてきた小さい穴に顔を挟まれて、情けない鳴き声をあげている犬をしばらくの間、呆然としながら眺めていました。
あずきも黒猫も、声を出せないくらいヘトヘトでした。
黒猫は、その大きな体を上下に揺らして真っ赤な舌を出しながらハアハアしていました。
そのすぐ横で、あずきも同じく小さな体を上下に揺らしていました。
必死でもがいていた犬は、ようやく穴から自分の顔を引き抜くことができて、完全に戦意を喪失したようで、「カッチャ、カッチャ・・・」とゆっくり遠ざかっていく爪の音だけがあずきの耳に聞こえてきました。
犬の気配が完全に消えたのを確認してから、黒猫があずきに向かってようやく話しかけました。
「よく・・・がんばったな」
黒猫の息遣いはまだ荒く、体は少しだけ上下に揺れていました。
あずきは、そんな黒猫の顔をチラッと見て、すぐにまたブロックの穴に目を戻しました。
もう犬が入って来れないことは、分かっていましたが何となくその穴を見ていないと不安でした。
「大丈夫か? ケガはないか?」
何も答えないあずきの顔を覗き込んで黒猫が言いました。
「・・・うん。 だいじょぶ・・・黒猫さん、ありがと・・・」
あずきは、ようやく不安が消え去って黒猫に向かってニコッとしました。
「黒猫さんに、2回もたすけてもらっちゃった・・・」
そう言うと、あずきは、後ろ足で自分の耳の後ろあたりをポリポリ・・と掻きました。
「なぁに・・・気にすることはないさ。それより、おまえさんは早く家に帰ったほうが良さそうだな」
黒猫は、空を見上げました。
あずきも、そんな黒猫につられて上を見上げると、さっきまで青かった空はすっかり暗くなっていました。
「うん・・・きっとアキちゃんが心配してる」
あずきは、続けて言いました。
「黒猫さん、わたし・・・おうちに帰るね。 でも・・・」
そこまで言うと、あずきは困ったような顔になって黒猫を見上げました。
黒猫があずきの顔を見ると、黒猫のことを見上げているその小さな顔は、まだとても幼くて暗くなってきたせいか、大きく見開いた黒い瞳にキラキラしたものが輝いて、とても可愛らしい表情をしていました。
黒猫は、自分の心臓が、一瞬「ドキン」と大きく揺れたのを感じました。
それが、なんなのか黒猫は分かりませんでしたが、その感覚は生まれて初めて感じたものでした。なぜか分かりませんでしたが、黒猫はその心臓の音があずきに聞かれたような気がして何となく恥ずかしくなりました。
そして、まだ小さく揺れている心臓の音をごまかすかのように、黒猫は「ゲホゲホ・・・」と、わざとらしい咳払いをしました。
そして、黒猫は
「でも・・・どうした?」
と、落ち着き払ったフリをして聞きました。
「あのね・・・わたし、おうちがどこにあるのか、わからないの」
あずきは、家の外へ出たのが初めてでした。
初めは、小さな好奇心で、いつも部屋の中から見ている小さな庭の木や花が見たかっただけなのに・・・まさか、こんなことになるなんて。
あずきは、またアキちゃんのことを思い出して胸がチクンとしました。
「そうか・・・無理もないな。心配するな。俺がちゃんと家まで・・・」
そこまで言った黒猫の表情が一瞬こわばりました。
そして、黒猫は左右をキョロキョロ見回したと思うと、ブロック塀の穴に顔を突っ込んで狭い路地を見渡し、犬がいないことを確認すると、そのままその穴の向こう側へ出て行きました。そして、またすぐに戻ってきた黒猫は、あずきに向かって言いました。
「マズイことになった・・・」
「どうしたの? 黒猫さん・・・」
あずきは、黒猫の言っている意味がわかりませんでした。
「俺たちは、どうやら知らない間にかなり遠くまで逃げてきたらしい・・・俺にも、ここがどこなのか分からなくなってしまった・・・」
黒猫は、あずきのことを見ずに答えました。
「えー! そんな・・・わたし、もう・・・おうちに帰れないの?」
あずきは、その大きな瞳に涙を浮かべて、黒猫の正面に移動して無理矢理、黒猫の顔を覗き込もうとしました。
「し・・・心配するな。俺がちゃんと、おまえさんを家に帰してやるから・・・安心しろ」
黒猫は、自信なさそうに言いました。
そして、まだ瞳に涙をいっぱい浮かべてうるうるしながら黒猫を見つめるあずきのことを、なるべく見ないようにしながら、黒猫は続けて言いました。
「ただし、家に帰るのは夜が明けてからだ。もうこんなに暗くなってしまったからな・・・」
黒猫は、そう言うとまた空を見上げました。
黒猫が空を見上げたのを見て、あずきもすっかり暗くなった空を見上げました。
そのとき、あずきが見た空の色は、限りなく黒に近い青になっていました。
そして、その夜空には白く輝く小さな光の粒が数え切れないほど、散りばめられていました。
あずきが、生まれて初めて見る星空でした・・・
そして、その星空を見上げるあずきの瞳からは、星のような涙のしずくが一粒だけ流れ落ちました。