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3:運が悪い

 ここまで来たはいいけどこれからどうしよう……。


 いつも何を考えているのか分からない無表情なリーリエだが、緊張で顔がわずかに強張ってメガネの中の瞳が潤んでいる。


 リーリエは忘れ物の本を胸に抱き、はじめて来た魔法学部の建物の入り口に立っていた。



 人がまばらに出入りするのを観察するリーリエの姿は、不審者のようだが誰も気に留める者はいない。

 


 ジェレミー・ベルナルド。

 図書館で会った彼が誰なのか分かるのは簡単だった。


 魔法学部二年の主席。

 高位貴族出身だとか王家の血筋を引いているだとか、謎に包まれた存在で教授にも一目置かれている魔法学部の天才。


 そして、あの容姿。

 昨日の図書館での注目度には納得だ。


 学園では精霊の愛し子として知られるアイヴァンと同じぐらいかそれ以上に有名な学生らしい。



 昨日、図書館から寮に帰って同室の友人が詳しく教えてくれた。

 

 噂にうといリーリエも名前は知っていたけれど会うのははじめてだった。


 魔法学部である同室の友人に本を返すのを頼もうとしたら、自分で返すように言われてリーリエは今ここにいる。


 

 今までアイヴァンを避けて剣術学部の建物には近づかないようにしていた。


 魔法学部なら剣術学部の反対にあるからアイヴァンは来ないはず。



 そう思っていたのに……。



「俺に近づくなと言ったのが分からなかったのか?」



 剣術学部のアイヴァンに魔法学部で会うなんて誰が予想できただろう?


 魔法学部の入り口には学術部のリーリエと剣術学部のアイヴァン二人だけ。

 


 アイヴァンの言葉にリーリエの顔から表情が抜け落ちる。

 リーリエは胸の中の本をギュッと握った。


 

 なんて運が悪いのだろう。

 アイヴァンに二日連続で会うなんて。



「どうしてここにいるの?」



 魔法学部と剣術学部の生徒は仲が良くない。

 剣術学部の生徒は研究ばかりしている魔法学部の生徒のことを研究オタクの隠キャと呼び。魔法学部の生徒は剣術学部の生徒のことを筋肉のことしか考えていない脳筋と呼んでいるのを聞いたことがある。


 そんな剣術学部のアイヴァンが、手ぶらで魔法学部から出てきたことを不思議に思ってリーリエが問うと。

 

 

「俺がどこにいようとお前に言う必要があるのか?…………人に会いに来ただけだ。お前こそなぜここにいる?」

「私も人に会いに来ただけよ」



 ネクタイを直しながら言うアイヴァンは、リーリエの返答に意味ありげにわずかに口角を上げると目を細めた。



「人?それは誰だ?」

「私が誰と会うのかあなたに言う必要がある?」



 先程のアイヴァンの言葉を真似をして返答すると、アイヴァンは顎をクイッと上げ、リーリエの目を見て一歩近付いた。



 リーリエも負けじと見つめ返す。



「言葉には気を付けろ」



 笑みを消したアイヴァンはリーリエを見下ろして言った。


 リーリエとアイヴァンには圧倒的な体格差がある。

 180cm越えのアイヴァンと160cmないリーリエの身長差だけでも相当なものなに、剣術学部で鍛えた身体のアイヴァンの身体はリーリエの身体を覆い隠すほど大きい。


 普通なら怯むはずだが、リーリエにとってアイヴァンの態度は慣れたものだった。



 リーリエが口を開こうとすると、目の前が黒い布に覆われる。


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