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21:友情

「つまり。君はエヴァ・ガルソンがリーリエに危害を加えようとしているのを知って、リーリエに手紙を送ったと」



 リーリエとジェレミー、そしてリーリエに手紙を送ったと認めた女子生徒の三人は人目を避けて場所を移動した。


 アイヴァンの浮気相手であるエヴァの友人テイラーだと名乗った女子生徒は、落ち着いた様子で話し出す。


 

「そうです。エヴァは昔から毎日、日記を書いているんです。最近のエヴァの行動が怪しいと思った私は、こっそりエヴァの日記を見たら……。準備は整った。後はアイヴァン様に知らせるだけと書いていました。はっきりと危害を加えるとは書いてはいなかったのですが、前後の内容からフランシフさんに何かしようとしていると思ったので、手紙を送りました」



 リーリエの目を真っ直ぐ見て言う彼女に、どうしたものかと考える。


 彼女の話を信じるとしても、日記の内容だけでは証拠には弱過ぎる。


 それに、エヴァ・ガルソンの日記を私が直接見たわけではないから、彼女の話を全部信じるのは難しい。


 それより……。

 なぜ彼女は私に手紙を送ろうとしたのだろう?本当に友人を思うなら、罪を犯す前に止めるべきではない?

 

 

「あなたはエヴァ・ガルソンとは友人なんでしょう?なぜ私に気を付けてと手紙を送ったのですか?友人が罰を受けるかもしれないのに」

「友人……。人間関係を表す便利な言葉ですね。確かにエヴァとは幼い頃からの友人です。でも、その友情がいつまでも続くとは限らない。エヴァは婚約者がいようと関係なく、貴族出身の男子生徒に親しくするようになって……、彼女は変わってしまった」

「もう友人ではないと?」

「…………」



 ジェレミーの言葉にテイラーはしばらく考えるように口を閉ざす。



 エヴァ・ガルソンが日記を書いているなんて親しくない限り知らないはず。

 貴族に危害を加えようとするなんて未遂に限らず重罪だ。停学だけでは済まない。

 


「エヴァに報いを受けて欲しいと思っているので、友人ではないかもしれないですね」



 報いを受けて欲しい。

 友人に向けるような言葉ではないことを淡々と話すテイラーに、リーリエは戸惑いを隠せない。


 

「あなたたちの間に何があったのですか?」



 リーリエの問いにテイラーは、フッと悲しげに笑う。



「もういいですか?フランシフさんに怪我がなくて良かったです。エヴァたちが接触してくるかもしれないので、気を付けてくださいね」



 そう言ってテイラーは、リーリエの問いに答えることなく背中を向けて去って行く。


 彼女たちの間に何かあったのか分からない。けれど、彼女たちの友情を引き裂く何かがあったのは確かだ。


 それと、彼女が私を心配してくれているのも嘘だとは思えない。



「彼女の言う通り。日記の内容を信じるとして、クレイフォードがいつか接触してくるかもしれない」

「そうね……。はやくケリを付けないといけないわね」



 リーリエはポケットから手紙を取り出す。

 テイラーからの手紙とは違い、差出人にはリーリエの父の名前が書かれている。

 

 

「何をするつもりなんだ?」

「会うのなら直接サインを貰うのも悪くないと思って」



 そう言ったリーリエの手元には婚約破棄の書類と、アイヴァンが婚約破棄に納得しておらず、中々サインをしないと書かれた手紙が握られていた。


 

――――――


 

「サイン…………??」



 リーリエは気の抜けた声を出すアイヴァンの目の前に、婚約破棄の書類を突き出した。


 

 

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