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17:故意と悪意


 割れた照明にガラスの破片が突き刺さった机。

 そして、その机はいつもリーリエが使っている机。



『気を付けて』



 手紙に書かれていた言葉はこのことを言っていたの?


 半信半疑のまま、割れた照明を調べる先生たちを見つめていると。


 照明を調べている一人の先生が照明から何かを取った。



 あれは何?照明に隠れるぐらい小さな何か。遠くて分かりにくいけれど、どこかで見たことがある気がする。



 小さな何かを見つけた先生は眉間にシワを寄せ、他の先生たちに差し出した。



「これは……」

「魔道具ですね」

「魔道具?何に使う魔道具ですか?それは元々照明に取り付けられているものですか?」

「いいえ。これは熱を与える魔法が付与された魔道具で本来、照明に使われる物ではありません」

「熱を与える?」

「はい。水にこれを落とすと熱湯に。戦争の時の衛生管理のために発明された物で、どうしてこれがここに……」

「それと照明が割れたことと何か関係が?」

「おそらく。一部のガラスの温度が急激に上がって膨張したことにより、ガラスが割れたのだと思います。この魔道具がこんな所に偶然あるなんて考えられませゆ」

「それはどういう意味ですか?」

「付与魔法を施された魔道具はとても珍しいんです。げんに先生方はこの魔道具の存在を知らなかった。この魔道具はここにあっていい物ではない」



 深刻な顔で黙る先生に、他の先生が焦ったように先を促す。



「つまり、何が言いたいのですか?」

「誰かが故意で照明を割ったということです。たくさんの生徒が使う図書館で、この魔道具を使うということは悪意があるとしか思えない」

「悪意なんて大袈裟な。誰もいない図書館で照明が割れて、誰も怪我をしていないではありませんか」

「そういう問題ではありません。もし誰かが――」


 


 故意で誰かが照明を割ろうとした。



 その言葉を聞いて、リーリエは頭が真っ白になった。


 


「ハァ……ハァ……」



 リーリエは学術部の校舎を逃げるように飛び出すと当てもなくただただ走り続けた。



 慣れ親しんだ図書館が怖くなって、リーリエはその場所から逃げ出せればそれでよかった。



 日頃、走ることをしないリーリエは息が苦しくなって足を止めると、崩れるようにその場に座り込む。



 荒い呼吸に涙でボンヤリと滲む視界。



 なにを、してるんだろう…………。

 逃げてもどうにもらないのに。



 私が何をしたっていうの。

 誰が?何を目的で?


 

 魔道具を使ってまで誰かがリーリエを傷つけようとした。


 その事実にリーリエは、小さな身体をもっと小さくして身体を震わせる。



「リーリエ!」



 誰かがリーリエの名前を呼んだ。

 


 震える肩を掴まれて顔を上げると、そこには焦った顔のジェレミーがいた。



「ジェ、レミー……どうしてここに?」

「君が走ってどこかに向かう姿を見たから、心配になって追いかけて来たんだ。何かあったのか?」



 普段から身嗜みに気を遣ってるジェレミーには珍しく、わずかに髪と制服が乱れている。



 ジェレミーの顔を見たリーリエは、安心感と緊張から解放されたからか頬に涙が伝った。

 

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