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10:魔法使い


 半袖シャツからのぞくはち切れんばかりの筋肉。

 グレゴリーが笑うたびに生き物のように動く胸筋。


 そして、可愛らしいクマが描かれたエプロン。



 すごい……。どう鍛えたらこんなに筋肉がつくんだろう。


 剣術学部の先生たちも筋肉はあるけれどグレゴリーさんの筋肉とは全然違う。

 先生たちが実用性を考えた使える筋肉なら、グレゴリーさんの筋肉は芸術的な魅せる筋肉。

 


 リーリエはグレゴリーを興味津々に見つめていると、ジェレミーと話していたグレゴリーと目が合う。



「あっ……」



 見ていたことがバレて思わず声が漏れるリーリエに、グレゴリーは白い歯を見せてニッと笑った。


 

 ま、まぶしい……。



 グレゴリーの笑顔に圧倒されるリーリエは、ジェレミーがこちらに来るように手招きしていることに気付く。



 恐る恐るリーリエがジェレミーの横に立つと、二人の視線が集中してリーリエは身を固くする。



「紹介しますね。こちらは僕の古くからの知り合いのグレゴリーさんです。彼女はリーリエ。僕の大切な友人です」



 大切な友人……。

 

 

 ジェレミーから誰かを紹介されるのも、自分を紹介されるのもはじめてで、むず痒い言葉にリーリエは悟られないようにグレゴリーに視線を向ける。


 

「はじめまして。リーリエです。ジェレミーと同じ学園に通っている同級生です。グレゴリーさん。お会いできて光栄です」

「俺はグレゴリーだ。ジェレミーが人を連れて来るのははじめてだが、こんなにも可愛いらしい同級生を連れて来るなんて驚いた。学園での話を全然しないから心配していたんだが「グレゴリーさんリーリエが困っています」

 


 身体の大きさもそうだがハキハキと話すグレゴリーに圧倒されていると、ジェレミーが止めに入る。



「おっと、すまない。俺はこのお店の店主でジェレミーが小さい時からよく知ってる。よろしくな」

「小さい時?家族ぐるみで仲がいいんですか?」



 グレゴリーとジェレミーを見比べて聞くと、グレゴリーが意味ありげな視線でジェレミーを見る。



 不味いことを聞いたかしら?


 

「そういうのではありません。グレゴリーさんは今はお菓子店の店主をしていますが、元宮廷魔法使いで僕の…………、兄弟子にあたる人です」

「宮廷、魔法使い……!?」



 宮廷魔法使いは魔法使いの中でもエリート中のエリート。選ばれた者しかなれない憧れの職業。



 元とはいえ宮廷魔法使いが、こんなに可愛らしいお店で店主をしているなんて誰が想像できるだろう。


 それに、学年主席のジェレミーの兄弟子だなんて実力は折り紙つきだ。

 

 リーリエはメガネの中の瞳をキラキラと輝かし、羨望の眼差しでグレゴリーを見つめる。


 魔法使いより武闘家や騎士だと言われた方が納得するその筋肉も、可愛らしいクマが描かれたエプロンも元宮廷魔法使いと聞いたら、特別な何かがあるような気さえしてきた。



「元なんだからそんな仰々しい反応をされても困るが……。お嬢さんもジェレミーと同じ魔法学部の生徒なのか?」

「いえ……。私は学術部の生徒です。魔法はジェレミーに個人的に教えてもらっています」

「そうか。勉強熱心なのはいいことだ。……俺の魔法、見るか?」



 リーリエのキラキラとした視線に恥ずかしそうに頭をかいたグレゴリーは、したり顔でリーリエを見る。

 


 グレゴリーさんの魔法はすごかった。


 フワフワと揺れる無数の宝石のように輝く綿あめは口の中で弾けるように溶けてなくなる。

 どんなに暑くても溶けないのに口の中に入れるとホロリと溶けるチョコ。ブリュレされた表面は冷たくカリカリなのに、トロリとしたリンゴが熱々のアップルパイ。

 


 アップルパイに棒を刺した時は驚いたけれど、棒を使って中のリンゴだけを温めるのははじめて見た。



 キラキラと瞳を輝かせるリーリエに、グレゴリーは満足げな表情を浮かべた。

 

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