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9:気分転換


「どうぞ。ハーブティーにはリラックス効果がある」

「ありがとう……」



 週に一度は来るジェレミーの研究室。

 椅子に座るリーリエは、視線やアイヴァンのことを聞こうとしてくる人たちから解放されたのに、その表情は強張っている。



 リーリエは先程聞いた魔法学部の先生たちの話にショックを受けていた。



 私は誰かを立てなくなるまで痛めつけたり、悪意を持って誰かに暴言を吐いたりはしない。

 

 先生たちが話をしていたのはアイヴァンのこと。それは分かっている。だけど……。

 私が責められている気持ちになるのはなぜだろう……。


 

 『魔法学部ではなくて良かった』『魔法を使われたらひとたまりもない』『魔法学部は相応しくない』


 まるで疫病神のような物言いに、先生たちの言葉が刃のように鋭く、リーリエの心に突き刺さる。

 

 

 コップを手に持ち、中々口にしようとしないリーリエは心ここに在らず。

 暗い顔に元気がない声のリーリエをジェレミーは心配そうに見つめている。


 しばらく沈黙が続く中。ジェレミーはリーリエの手の中の冷めてぬるくなったコップを取る。



「あっ……」



 気の抜けた声をあげるリーリエがジェレミーに視線を向けると、ジェレミーはイラズラを思いついたような笑顔を浮かべている。


 

「気分転換をしないか?」

「気分転換?」



 突然の申し出にリーリエは戸惑いの声を出した。



 

「どこか行きたい所はある?」

 


 ジェレミーとリーリエは頭から足元までローブで身を包み、学園を離れ活気が溢れる街にやって来ていた。

 

 ジェレミーに聞かれたリーリエは、夕方だというのに街の賑わいに圧倒される。



 行きたい所……。


 

 ジェレミーの質問にリーリエは頭を悩ませる。

 リーリエは一人で街に来たことがない。街に出る時はジャスミンに連れられてがほとんど。ジャスミンのおすすめするお店はどこもオシャレで、素敵なお店ばかり。


 たまに目に入ったお店に入ったりするけれど、そのお店が行きたい所と聞かれたらそうではない。



 うーん……。と悩むリーリエにジェレミーはクスッと笑う。



「僕のおすすめのお店でいいかな?」



 ジェレミーのおすすめのお店?


 今はローブで顔を隠しているから、分からないけれどジェレミーは華やかな容姿で周囲からの視線を集める人だ。

 

 そんなジェレミーがおすすめするお店はどんなお店だろう?

 個性的なマダムがいる服飾店?それとも、素敵なマスターがいるバー?気難しい店主の本屋?


 気になる……。

 ジェレミーが普段どんなお店に行っているのか。

 


 どんなお店か気になったリーリエはコクリと頷いた。



 

 ここがジェレミーのおすすめのお店?



 こじんまりとしたおとぎ話に出て来そうな可愛らしいお店に入ると、中はもっとおとぎ話に出て来そうな装飾をされたお店だった。


 予想外のお店に驚きで固まるリーリエに、ジェレミーは慣れたようにお店の中を歩く。



「グレゴリーさん。お久しぶりです」

「おぅ。誰かと思ったらジェレミーか。ローブを被っているから誰か分からなかったぞ」


 

 ガハハハッと笑うグレゴリーと呼ばれた人物は、ムキムキの身体にファンシーなクマの絵が描かれているエプロンを身につけている。


 可愛らしい空間に包まれて豪快に笑うその姿は、リーリエなんて吹き飛ばしそうな勢いだ。



 リーリエは親しげにジェレミーと話すグレゴリーを見て、ジャスミンの言葉を思い出す。

 


『男はギャップが一番よ。小動物に見せかけて中身は猛獣。そんなのが一番良いの』




 す、すごい……。これがギャップ……。


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