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ソロダンジョン Q.どうして正体を隠すんですか? A.いいえ隠してません、気付いてもらえないだけです。  作者: ハマ
第三幕

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幕外

 奪還成功。


 この知らせが世界中を駆け巡ったのは、新年度が始まって直ぐのことだった。


 ダンジョンから溢れ出したモンスターにより、奪われた土地。

 それが、約半世紀ぶりに人の手に戻ったのだ。


 これは、世界初の偉業だった。

 今まで、各国の代表である探索者が土地の奪還を試みたが、どれも失敗に終わっていた。


 多くの探索者が散って行った場所。

 モンスターが蔓延る魔境。

 そして、ある国の思惑が蠢き、滅びた国。


 それが今、解放されたのである。


「インタビューをお願いします!」

「一言、一言でいいので、世界の方々に向けて一言!」

「この偉業をどうお考えですか⁉︎ 世界が貴女に感謝しています! お願いします! 神坂時雨さん!」


 多くのフラッシュに炊かれながら、時雨は無言で空港を歩いて行く。


 向けられるのは称賛の声ばかりだが、そのどれもが煩わしくて仕方なかった。


 多くのモンスターを葬り、多くのユニークモンスターを葬り、世界で初めて土地の奪還に成功した。


 皆はそう思っている。


 それは間違いではない。

 しかし、それだけではない。

 襲って来たのは、あの場にいた探索者も同様だったのだ。


 目的は妨害だ。


 あの国を人の手に戻さない為。

 国を復興させない為。

 モンスターに支配された地域が、奪還可能だと知らせない為。


 その為に、妨害は行われた。


 時雨は、妨害する理由を知っていた。

 その目的も知っていた。

 それを了承の上で、奪還作戦というお遊びのような作戦にも付き合っていた。


 理由は、必要だと思ったからだ。

 世界の安寧の為に、この行為が必要だと理解していたから参加していたのだ。


 だが、それは勘違いだった。


 あんなお遊びに参加している間に、時雨は姉の忘形見を失いそうになっていた。


「邪魔だ、どけ」


 インタビュアーに道を塞がれて、足を止めた時雨は、わずかな怒りと共に言葉を発する。


 道を塞ぐ彼らもプロのジャーナリストだ。

 本来なら、その程度で退いたりはしない。

 しかし、今目の前にいるのは、正真正銘の化け物である。

 そんな存在の怒気に触れて、冷や汗を流しながらその身を引くしかなかった。


 時雨が空港から出ると、そこには多くの車が待ち構えていた。


 その大半が警察車両だが、中央にいるのは探索者ギルド総会長である徳川宗介だった。

 老人の肉体だが、その目は現役の探索者のようなギラついた物を宿していた。


 そしてもう一人、神々の船団のトップである光海ヨルの二名が、時雨を待ち構えていた。


「乗りな、話がある」


 そう光海が切り出すが、時雨は表情も繕わず面倒くさそうにしていた。


「私には無い、文句があるなら力尽くで来い」


「アホか、我儘言ってないで乗れ。こっちも暇じゃないんだ」


「だったら帰れ、こっちくんな」


「子供か。さっさとしろ、お前の甥についても話がある」


「……ちっ」


 時雨は舌打ちをすると、車に乗り込む。


 乗り込んだ車両は、何故か大型のキャンピングカー。

 どうしてこのチョイス? と誰もが疑問に思う車種だが、単純に時雨の好みに合わせただけに過ぎない。


 時雨は、キャンプには行かないが、どこでも寝れるキャンピングカーが大好きだった。


「……良いな、この車」


「まあな、普通に買えば一億はする車両だ。お前を乗せる為だけに、わざわざ用意した。ありがたく思えよ」


「なんだ? 私にくれるのか?」


「話次第だ」


「なんだ、説教するつもりじゃなかったのか?」


「それもあるが、また別の話もある」


「まったく、このジャジャ馬娘は、ババアの年になっても落ち着かんな」


 時雨と光海がそこまで話すと、徳川が口を挟む。


「誰がババアだ。この死に損ないが」


「じゃかあしー! せっかくバランスを取っていたというのに、勝手に土地を奪還しやがって。これからどうなるのか、分かってんのか?」


「何だよ、私を殺そうってのか?」


「そうだよ。お前に限らず、多くの探索者が死ぬほど働かされるようになる。これからこの国が大変だってのに、えれーことやってくれたもんだ」


 そこまで言われて、時雨はどうなるのかを今一度考えてみる。

 それで、出した結論は徳川とは違ったものだった。


「…………そうはならないだろう。まずやるなら、他の主要国の探索者が奪還に動き出すだろう」


 これは国の面子の問題だ。

 辺境の島国の探索者が、たった一人で奪還に成功してしまった。そうなると、他の国の探索者は何をしていたのかという話になる。


 サボっていたのか?

 意図的に討伐しなかったのか?

 それとも、単に弱い探索者しかいないのか?


 今の時点で、多くの人々からは日本の探索者が最強だと思われている。それはメディアでも報道され、SNSでも呟かれていた。

 それを許しておけるほど、国の面子という物は軽くない。


 恐らく、時雨が奪還したのをきっかけにして、他国も率先してモンスターの討伐に乗り出すだろうと考えたのだ。


「それは儂らも考えた。だが、そうはならなかった。今も多くの国から、日本への探索者派遣の要請が届いているんだ」


「発展途上国?」


「いいや主要国からもだ」


 再び考える。

 狙いは何だと、日本の探索者をどうして国から離したがっているのかと考える。


「断ることは出来ないのか?」


「無理だ。かの超大国からも要請が来ている」


「何の為だ? あそこには強い探索者がごまんといるだろう」


 流石に時雨クラスともなると数えるほどしかいないが、それ以下ならば、百人単位で存在していた。

 そんな国が、わざわざ要請する理由が分からなかった。


「ふん、この国の防衛能力を削ぐためだろう。今年、滅亡の予言もあったことだしな」


「何だ? 私がきっかけで、日本が滅びるって言いたいのか?」


「そこまでは言わん。かの国が、日本を失って得る物など何も無いからな」


 寧ろ、これまで投資して来た物が無駄になる。

 だから見捨てることはないと思いたいが、何か違和感があって時雨はもう一度考えようとする。


 しかし、光海の話が始まって、その考えも遮られてしまう。


「じゃあ次だ。時雨、お前の甥である天音福斗が、ダンジョンで消息を絶った」


「…………は?」


 衝撃の内容に、時雨は間抜けな声を漏らした。

一旦これで終了です。

続きは未定です。年末までに投稿出来たらなーとは思っております。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

それでは、失礼いたします。

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― 新着の感想 ―
ここまで読んで、榊原にはヒロインとしての魅力が全く無い。 古城さんの方が比べるべくもなく圧倒的に魅力的。
こんないいところで 再開待ってます
また良い所でw 続きを気長に待ってます。
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