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ソロダンジョン Q.どうして正体を隠すんですか? A.いいえ隠してません、気付いてもらえないだけです。  作者: ハマ
第三幕

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13

 榊原と話をする機会を設けよう。

 そう考えて、いつも通りにダンジョン向かっているのだけれど、何故か佐藤が付いて来ていた。


「なあなあ、この前この剣買ったんだ。言っとくけど、親に金出してもらってないからな。自分でバイトをして買ったんだ」


 電車の座席に座っていると、嬉しそうにスマホの写真見せて話しかけて来る。

 それに、「そうなんだ」と素っ気なく返すと、


「凄いだろ。俺のバイトって、何やってるのか知ってる? 探索者のポーターやってんだ。結構危ないことあるけど、先輩方の戦闘が間近で見られて参考になるんだよ。磯部達と探索に行っても、動きが良くなったって言われるくらいなんだぜ。あっ、まあ天音には敵わないけどなぁ。何せ天音はあのっ⁉︎ おっと、これは秘密だったな」


 何が秘密なんだ。

 もしかして、それで脅しているつもりなんだろうか。

 そう天音は考えて、佐藤に告げる。


「佐藤君、君が何を考えているのか知らないけど、僕の事を話したかったら好きにして良いよ。そこまでして隠すつもりもないし」


 どうせ先生には知られているし、サクラにも元から知られている。その周りにいる護衛だって、天音が誰なのか周知されていた。


 もう榊原にも話すつもりでいるので、無理に隠す気は無くなっていた。


 誰かに教えを請われても、「ごめん無理」の一言で強固な意志で拒絶するつもりだ。


 だから、脅すようなことを言っても無駄だと言いたかったのだが、佐藤の反応は違っていた。


「いやいや、そんな気は無いって! 秘密にしてよう! ほら、正体がバレると面倒くさいことになるだろ? 考えてもみろよ。いろいろつけ回されるようになるし、自由に外出も出来なくなる。絶対に秘密にしていた方が良いって! 俺も誰にも喋らないから、天音と俺の二人の秘密にしておこうぜ」


 焦ったように早口で告げて来る。

 二人の秘密とか、勘弁してほしいくらいに気持ち悪いし、はっきりと拒絶したいレベルだ。


 ただ、一理ある所もある。

 付け回されるというのは、流石に嫌だし、外出が制限されるのも嫌だ。

 まあ、それも、誰にも話さないと佐藤が言っているので、心配は無さそうではあるが。


 佐藤の言葉は続く。


「天音って、榊原さんにも正体隠してんだろ? なら、明かさない方がいいんじゃないか?」


「どうして?」


「だって、同級生っていうのを秘密にしてんだろ? 榊原さんも年上の師匠と思って接してんだからさ、それが同じ高校の同級生って知ったら、騙されたと思って探索者辞めるんじゃないか?」


「……」


 まったく考えて無かった点をつかれて、黙ってしまう。


 確かに、榊原からすれば騙されたと受け取られても仕方ない。

 正体を明かして、それで愛想尽かされたら、それはそれで諦めるしかないのだが、探索者を辞める可能性まであると考えると、とてももったいない気がしてしまった。


 天音の目から見ても、榊原には才能がある。

 物事を的確に判断しており、武技、魔法、共にもの凄い速度で成長していた。

 まだまだ、荒いところはあるが、そのポテンシャルは一級品と言って良かった。


 その才能を潰すのか?


 自分の我儘で?


「……このまま、隠しておいた方がいいのかな?」


「俺は、絶対その方がいいと思う。それに、かっこいいじゃん」


「何が?」


「正体を明かさない正義のヒーローって」


「……」


 そんなの求めてない。


 とりあえず、もう少し考えた方がいいのだろう。

 少なくとも、天音の中に迷いが生まれてしまった以上、そのまま話す気にはならなかった。





 ギルドに到着して着替えると、いつも通り受付に向かう。

 その手には探索の計画を記載したシートがあり、70階以降探索時間二時間とだけ記入していた。


「今日は70階から探索を開始します」


「承りました。この階に到達可能な探索者は限られていますので、ご注意下さい」


「はい」


 もしも、時間までに戻って来れなくても、救援には行けないぞという意味だ。

 このギルドに、70階以上探索しているのは、天音と白刃の船団のみ。とてもではないが、助けに行けるような探索者は用意出来ない。

 それを承知の上で、探索をしている。

 失敗すれば命はない。

 それが、上位の探索者という存在だった。


 申請も終わったのでダンジョンに行こうとすると、受付のお姉さんに呼び止められてしまった。


「ねえねえ、福斗君。あなたに会いたいって人がいるんだけど、いつか時間空いてない? ……あからさまに嫌な顔しないでよ、私達も頼まれた側なんだから」


 天音の経験上、それは面倒ごとが舞い込んでくる前兆だ。

 だから、顰めっ面になるのも仕方ないだろう。


「その、会いたい人っていうのは、どなたですか?」


「雷鳴の船団の鳴上雷太さんなんだけど、一度会っておきたいって言っているのよ」


「雷鳴の船団?」


 どこかで聞いたような気がする。

 だけど思い出せなくて、更に眉を顰めてしまう。


「新しく設立された船団らしくて、ある任務で来ているんだって。福斗君も知ってるって聞いたんだけど……」


 それを聞いて、あっと思い出す。

 サクラと天音を護衛する為に、船団を一つ連れて来ていると言っていた。

 思えば、一度も顔合わせをしていないので、会っておくべきなのだろう。


「分かりました。十七時以降ならいつでも大丈夫です」


「承知いたしました。先方に確認取れ次第、連絡致します」


 フレンドリーモードから一気に仕事モードに入るお姉さん。

 この切り替えが凄いなぁと、己の事を棚上げにして思う天音であった。





 雪の世界を駆け抜けて行く。

 道中に無数のモンスターが現れるが、それらを振り切ってひたすらに疾走する。

 風を纏い、身体強化を施し、次の階層に向かう為にひたすらに爆進する。


 モンスターは天音を察知出来ても、その速さから付いて行けない。

 時速で換算すれば、三百キロは出ており、戦闘になればそれ以上の速度も出せる。

 ただし、今もガンガンと魔力が消費されており、この速度で駆け抜けるのは持って三時間が限界だろう。


 71階に来てから、一時間近くが経過しようとしていた。


「……あった」


 最速の上、最短距離で一時間。

 それが、71階からの探索に必要な時間だった。


「残り魔力は十分にあるけど、戦闘も熟すとなると時間を掛けた方が安全かな」


 本来、ダンジョンはタイムアタックをするような場所ではない。

 十分な準備をして、時間を掛けて地道に探索して行く場所だ。

 だから、この探索方法は適切ではない。

 百々目から80階までの地図を貰っているとはいえ、そこまでの道は慎重に行くべきなのだ。


 それに、全てのモンスターを振り切れた訳でもないのだ。


「結構集まって来てるな」


 振り返ると、多くのモンスターが天音を追って来ていた。


 魔力を高める。

 魔力による装甲を纏って、一撃で葬ることは可能だろう。

 だが、それをやれば、天音は弱くなる。

 圧倒的な力に頼るだけの、弱者になってしまう。

 力に溺れた愚か者になってしまう。


 そうならない為に鉈を握り、モンスターに挑むのだ。


 天音はアクセルを使い、モンスターとの戦いに身を投じた。


 

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― 新着の感想 ―
主人公と周りの人間とのコミュニケーションが大体不快だから逆にすごいなって感じ
顔を知ってるだけの親しくもない野郎に二人だけの秘密な!って最高にキモイなw でもようやく話すのかと楽しみにしてたのにこれはただでさえ嫌いだった佐藤がさらに嫌いになるお話だな。
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