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「くそ、どいつもこいつも馬鹿にしやがって!」


 荒々井誠(あららいまこと)は荒れていた。

 暴行未遂事件を起こして高校を退学になり、親からこっぴどく叱られてしまった。

 女を弄んだ時も、遊んだ女に子供が出来たときも庇ってくれたのに、今回は庇ってはくれなかったのだ。


 理由は分かっている。

 今回ばかりは、金の力ではどうにもならない内容だったからだ。


 荒々井の親は、繁華街に十店舗の飲食店を経営するオーナーで、収入はかなりの物だった。だが、探索者や政治家に繋がりを持っているような人物ではなく、横の繋がりもまた弱かった。

 愛する息子を庇う為に、いつもの弁護士を頼ったのだが、今回ばかりは相手が悪いと拒否されたのである。


 これで、力のある存在とパイプがあれば、何とかなったのかも知れないが、こればかりはどうにもならなかったのだ。

 出来たのは、逮捕されたあとの保釈金と慰謝料を支払うくらいだった。


 両親は荒々井を叱り、同じような事を起こさないようにと口を酸っぱくして言いつけた。


 ただそれだけで許してしまった。


 しかし、甘やかされて育って来た荒々井にとっては、その叱られるという行為が酷くストレスで仕方なかった。


 更に近所でも話は広まっており、外に出るとヒソヒソと噂されるのだ。


「くそっ! 」


 先程も、陰で言われているのが聞こえてしまい、怒りが治まらない。

 ガンガンッ! と壁を蹴るが、気分が晴れる事はなかった。


 周囲を睨み付けながら歩き、探索者として鍛えた力で威嚇する。

 昼間から歩き回り、パトロールの警察が近付くと反射的に進む方向を変えてしまう。


「全部あいつのせいだ! 邪魔しやがって!」


 親指の爪を噛みながら、あの男を思い出す。

 荒々井を殴り飛ばした男。

 先日のニュースに映っていた男。


 神坂福斗。


 あの男のせいで榊原への復讐も、学校生活も、何もかもが上手く行かなかった。


 怒りが治まらない。

 テレビであの男の顔を見てから、それが加速している。


 強くてカッコよく、皆から尊敬され、羨望の眼差しを向けられている。SNSでも写真が出回っており、非公認のファンクラブまであるほどだ。


 自分にはない全てを持った男。

 最大の嫉妬の対象である。


 だが、どうする事も出来ない。

 何せ相手は、遥か格上の探索者だ。

 真正面から挑めば、一瞬で殺されてしまうだろう。


「だったら、あいつの弱味を握ってやる」


 正面からがダメなら、別の方法を。

 荒々井には、もうこの手段しか残されていなかった。


 それからの荒々井は、神坂福斗を調べていく。

 どこの大学に通っており、どういう家族構成なのか、彼女はいるのか、知り合いは友達は、出身校は、幼少期はどこで過ごしていたのか考えうる限り調べに調べた。


 そして、何も分からないという事が分かった。


「どうなってんだ! まるで亡霊じゃないか!」


 一般人でしかない荒々井では、調べるのにも限界があるが、まったく何も掴めないとは思わなかった。

 可能ならギルドに向かい、神坂福斗の後をつけたい。しかし、事件を起こしたせいでギルドへの五年間の接近禁止を言明されていた。


 もし接近すれば、その命はないとまで言われているので、絶対に近付きたくない。


「くそー」


 親指の爪が歪になるほど噛み続けて、強く頭を掻きむしる。

 ハラハラと髪が抜け落ち、それも構わずに掻きむしる。


 どうにもならないと気付いて、勢いよく立ち上がり椅子を蹴り飛ばす。


 気分転換にと外に出て散歩を始める。

 荒々井の家は、河川敷の近くにあり散歩に適したコースがある。

 ここは、高校のマラソン大会のコースにもなっており、一年の時に嫌々ながら走ったのを覚えている。


 だが、今日がその日だとは思わなかった。


「ちっ、最悪な気分にさせんじゃねーよ」


 走っている生徒を見かけて、散歩のコースを変更しようとする。

 だが、そこで異様に足の遅い生徒を見付けてしまった。


 その生徒は女子で、見た目も悪くはない。他の生徒からも大きく離されており、見張り役の教師も近くにはいない。


 これはチャンスだった。

 暫く女を抱いていない荒々井からすると、獲物が自ら飛び込んで来たように見えた。


「ははっ、ついてるな」


 獣の欲望を隠そうともせずに、荒々井は勢いよく走り出した。





「はひ、はひ、はひー、はひ、はひ、はひー」


 どうして人は走るのだろう。

 古城真希は息を切らしながら、そればかりを考えていた。

 歩いているのとそう変わらないペースではあるが、しっかりと前に進んでいる。


 横を見ると自転車が走っており、真希をあっという間に追い抜いてしまう。

 川を挟んだ道路では、バイクや車が排気ガスを撒き散らしながら走っている。

 コォーと上空から音が聞こえて来て、上に目を向けると、飛行機が飛んでいるのが見えた。


 一体、走って何になるのだろう。


「はひ、はひ、はひー、はひ、はひ、はひー、はひー」


 走る必要なんてないじゃないか。

 人は走るよりも、速い移動手段を手に入れている。今更走った所で、何になるというのだろう。


「学校、教育は、文明、に、勝てない、のか、はひー!」


 下らない呟きをしたせいで、余計に苦しくなる。


 言っておくが、真希は体育が苦手ではない。

 球技は出来るし、組体操やダンスもそれなりだ。だが、走るのだけはダメだった。

 人間得手不得手はある物だが、どうしてこうも的確なのだろうか。


 正面を見ると、そこには誰もいない。

 最下位なのは自覚しているが、後ろから二番手まで見えなくなるとは思いもしなかった。


 はひはひと走り続け、折り返しの所に立っている先生から頑張れーとの声援を受ける。

 その声に少しだけ後押しされて、うおーと足の回転が速くなる。しかし、走るのが速くなるわけではなかった。


 やがて何も考えられなくなり、ただひたすらに足を動かし続ける。


 そんな時、悪寒が襲う。


 疲れながらも正面を向くと、そこには何もなかった。


 代わりに背後から口元を抑えられ、体を抱えられる。


「んー⁉︎」


 突然の出来事に驚きジタバタと動くのだが、拘束している人の力が強くてビクともしない。

 だが、それが鬱陶しかったのか、抱えた犯人から舌打ちが聞こえて来る。


「チッ、大人しくしろ。殺すぞ」


 それは若い男の声だった。

 しかも、人ひとりを抱えて走っており、明らかに一般人の力ではなかった。


 逆らえば本当に殺されてしまう。


 冷静な真希ならそう考えただろう。

 だが、今の真希は疲れて思考がまともではなかった。


「んーーっ⁉︎⁉︎」


「おい、大人しくしろ! 本気でっ痛ってー⁉︎」


 盛大に暴れた真希は、口の拘束が緩まると思いっきり手に噛み付いたのだ。

 犯人の拘束が緩み、真希の体は自由を取り戻す。

 そして立ち上がり、犯人の顔を見て驚愕する。


「貴方は⁉︎ 荒々井、先輩?」


「なんだ、俺の事知ってんのか? 少し付き合えよ、痛い目見たくないだろ」


 荒々井は一年でも有名な人物だった。

 それも悪評の方でだ。

 女関係にだらしなく、他人を見下す性格をしている。立場が悪くなると、直ぐに逃げて親を頼る最低な男。

 ただ顔だけは良いので、何も知らない女の子は騙されてしまうからと注意喚起されるほどの人物だ。


 その荒々井が、親友の榊原に接近して顔だけの男と切って捨てられた現場にも立ち会っていたので、真希はその顔を覚えていた。


「ひっ⁉︎」


 どっちも嫌だと、真希は逃げ出した。


「ちっ、逃げんじゃねー!」


 しかし、真希の足は恐ろしいほどに遅い。

 それを理解した荒々井は「ははっ」と馬鹿にするように笑い、人気の無い所まで誘導するように動く。

 自分で運ぶよりも、楽だと考えたのだ。

 それに、ここら辺は近所というのもあり、荒々井は道を熟知していた。


 真希は走り、必死に走り、精一杯走って逃げていたつもりだった。


 だが、たどり着いたのは誰も住んでいない民家の庭だった。


 直ぐにチャイムを押したり、玄関に向かって「助けて下さい!」と訴えたが、誰の反応もないのに気付いて引き返そうとする。


「この家はな、先月引っ越して今は誰も住んでないんだよ」


 勝ち誇った荒々井は、歪んだ笑みを浮かべながら真希に一歩一歩と楽しむように近付いて来る。


「い、いや、誰か……」


「助けなんかこねーよ。良いじゃないか、俺と楽しもうぜぇ!」


 少しでも荒々井から距離を取ろうとする真希。

 しかし、直ぐに終わりは来てしまい、壁に追い詰められてしまった。


 荒い息遣いをした顔が迫って来る。

 それを見たくなくて、目を瞑り顔を背ける。


「良いね〜、その怯えた表情。こりゃ、楽しめそうだ」


 体を弄られ、それが気持ち悪くて吐き気がする。

 臭い息が掛かり、頭がおかしくなりそうになる。


 こんな時、私もレナちゃんみたいに力があればと考えてしまう。

 探索者登録をしたのも、レナちゃんカッコいいと思ったからだ。私もああなりたいと思ったからだ。


 だから、ここでやられっぱなしは嫌だ!


「あああーーー!!!?」


 恐怖を打ち消すように叫び、力一杯の拳を振り抜く。

 しかし、目を瞑った状態な上に、予備動作が大きい攻撃が当たるはずもなく、パシッと簡単に受け止められてしまった。


 そんな……あっ。


「抵抗すんなよ、直ぐに気持ちぶべらっ⁉︎」


 真希が見たのは、綺麗な蹴りだった。

 荒々井の背後から放たれたハイキックが、的確に側頭部を捉えており、顔を面白いくらいに歪ませて地面に叩き付けてしまった。


 倒れてしまった荒々井の代わりに立っていたのは、あまり話したことのないクラスメイトだった。


 真希は力が抜けてしまい、腰が抜けてしまった。





 百々目に誘導されて、女の子が襲われているという現場に向かう。

 目玉のゴーレムはかなりの速度で動いているが、人や障害物に当たる事なく進んで行く。

 天音も離れずに着いて行き、直ぐに現場に到着した。


 そして、到着して気付いた。


 これって、百々目さんが助ければ早かったんじゃないか?


 ジロリと睨むと、それをどう解釈したのか。


『可愛い子だから安心して』


「そんなこと考えてないですよ」


 どう捉えたらそうなるんだと思いながら、空き家の一つに入り、暴漢だろう男の意識を一撃で刈り取った。


 暴漢をあっさりと片付けて、襲われていた女の子を見ると、その女の子には見覚えがあった。


「古城さん?」


 クラスメイトの女子で、榊原とも仲が良かった。

 そして、先程初めて会話をした女子でもある。


「……天音くん?」


 そう口にした途端、緊張の糸が切れたように座り込んでしまった。


 大丈夫? とは聞けなかった。

 男に襲われて、大丈夫なはずがない。事実、恐怖で体が震えており、自分を抱くように抱き締めていた。


 誰がこんな事を。そう怒りを覚えて倒れた暴漢を見ると、どこかで見た顔だった。

 顎の骨がいったのか口を開いたまま気を失っているが、以前に榊原を襲おうとした人物だった。

 名前は確か……。


「荒々井先輩、どうしてここに……」


 どうして彼がここにいるのだろう。

 確か、ギルドから警察に引き渡されたはずだ。

 仮にも、探索者として活動した者が、未遂とはいえ犯罪を犯したのだ。そう簡単に、出て来れるはずはないと思っていた。


「……寒い」


 倒れた荒々井に気を取られていると、古城から弱々しい声が届く。

 見ると顔色が悪くなっており、体調を崩しているようだった。

 もしかしたら、あの足の遅さも体調不良が原因かも知れない。


「ごめん古城さん、少し触れるね」


 肩に手を置き、魔力を高めて魔法を使用する。

 古城は天音が触れると、怯えたように目を閉じた。恐らく、男に恐怖を抱いているのだろう。

 そんな古城に使う魔法は回復魔法。

 体調不良がウィルス性の起因による症状ならば、回復魔法では治らない。それでも、体力の回復や精神の安定には役立つので、いくらか楽にはなるはずだ。


「……あっ」


 古城から声が漏れると、顔色が元に戻っていき、体の震えも治っていた。


「どう? まだきつい?」


 問い掛けると、古城は目を開いて驚いた表情をしていた。

 もう一度聞くと、首を振って大丈夫だと教えてくれる。


「立てる?」


「……ごめん、腰が抜けちゃって」


 立ち上がろうとした古城は、下半身に力が入っておらず立ち上がれない。それを申し訳なく思ったのか、沈んだ顔をした。


「ああ、気にしないで。こういう目に合ったら、きっと誰でもそうなるよ。でも、どうしよう。スマホは置いて来ちゃったし、先生の所に戻ろうにも古城さんを置いて行かないと……嫌だよね?」


「うん」


 ここに残るというのは、荒々井と一緒に待つという事を意味していた。

 人を襲う暴漢と、誰も一緒にいたいとは思わないだろう。


 だとしたら、やれるのは二つ。

 一つは荒々井を警察に突き出す事。

 これは、結局のところ古城を置き去りにしてしまう。


 二つ目は、


「おんぶして良いなら、連れて行けるけど、どうする?」


「……お願いします」


 状況を理解しているのか、古城からは了承を受けた。

 自分で提案してなんだが、天音はこういうのって、やっていいのかな? と疑問に思ってしまった。

 無闇に、他人の体に触れるのに抵抗があるし、古城も嫌ではないのだろうか?


「あの、本当にいいの?」


 再度尋ねても、頷いて答えてくれたので、まあ大丈夫なのだろう。


 古城に背中を向けて腰を落とす。

 背中に温かい感触と、熱がのしかかると落ちないように支えながら立ち上がる。


「じゃあ行くけどいい?」


「うん。あっ、あの人は?」


「ああ、半日は起きないから放置してもいいよ。後で、警察に連絡しておくから」


 倒れた荒々井の扱いは、後で考える。

 警察に連絡するとは言ったが、そうなると直ぐに釈放される可能性もあり、また同様の事件を起こす恐れもある。だから、どうするかはしっかりと考えるべきだろう。


 歩き出した天音は、河川敷のコースとは別の道を通り、元の場所を目指す。

 時間にして三十分は掛かるだろうが、これは仕方ない。走るわけにもいかず、ましてや本気での移動は古城が持たない。だから、自然と徒歩での移動となるのだ。


 しかし、その時間が暇だったのか、古城が話しかけて来た。


「あのさ、天音くんも探索者登録してるんだよね?」


「そうだね」


「結構ダンジョン行ってるの?」


「そうだね、そこそこは潜っているつもり。お金も稼がないといけないしね」


「お金? バイトみたいな感じ?」


「うん、うち親が亡くなってるからさ、自分で稼がないといけないんだ」


「あっ、ごめん、私知らなくて」


「気にしなくていいよ。叔母さんとかがいるせいで、寂しいとかはないから」


 少なくとも今は、引き篭もりに片足突っ込んでそうなオバさんがいる。


「そっか……あの、助けてくれて、ありがとうございました」


 会話をして気持ちが落ち着いたのか、改めて古城にお礼を言われる。


「気にしなくていいよ。それよりも、古城さんが無事で良かった」


「え?」


「こんな事件に巻き込まれたから、トラウマになってるんじゃないかって心配だったんだよ。もっと、早くに助けて上げられたら良かったんだけど……」


 主に目玉のゴーレムを操ってる奴が助けていれば、その心配もなかった。

 そう思いながら、今もこっちを見ているゴーレムを睨む。

 それをどう勘違いしたのか、目玉のゴーレムから小さな手が生えて、グッドサインをした。


 破壊したくなった。


「いやいや、十分だよ! 私、大丈夫だから!」


「それでも、この出来事を思い出したりしたら、近くの人に相談して。きっと力になってくれるから」


 最近、榊原にも回復魔法を教えている。

 精神を安定させるほどの効果はまだ無いが、そのうち成長するだろう。なんだったら、ギルドが運営している病院へ行くのも良いだろう。あそこには、回復魔法のプロフェッショナルが揃っている。天音がする回復魔法よりも、効果はあるはずだ。


「うん……あのさ、私が出来るお礼ってある?」


「気にしなくていいよ。それよりも、先生や警察にも事情を説明しないといけないとから、そっちの方が大変になると思うよ」


「うっ、うん、頑張るよ」


 うーんと悩み出す古城。

 だが、直ぐに思考を切り替えたのか、ふうと力を抜いていた。

 そんな古城に対して、今度は天音から質問をする。


「あのさ、古城さんはどうして探索者に登録したの?」


「え? あー、んー、笑わない?」


「内容によるかな」


「そこは笑わないって言って欲しいなぁ」


「ごめん」


「まあ、良いんだけどね。私ね、最近のレナちゃんに憧れてるんだよ」


「レナちゃんって、榊原さん?」


「そうだよ。前はいろいろ不満溜めてたんだけど、探索者をやるようになって、輝いてるんだよねー。私も置いて行かれないようにって登録はしたんだけど、全然いけてなくて。でも、レナちゃんはどんなに忙しくても行くんだよ。それも楽しそうにさ……あれ? 天音くん興味ある?」


「……別に」


「あはは、レナちゃん可愛いもんね、その気持ちは分かるよ。でも、相手が悪いかなぁ。あの人カッコいいから」


「…………」


「ごめんごめん、怒んないで! お詫びにレナちゃんの好きな物教えて上げるから」


「それ、絶対煽ってるよね」


「そんな事ないよ、レナちゃんはね……」


 天音の意見を否定して、古城は榊原の好きな物を話し始める。

 クリームたっぷりのケーキが好きだとか、アイスだと抹茶が好きだとか、肉が苦手であまり食べられないとか、どの音楽が好きで、どのアーティストを聴いているとか、いろいろと教えてくれた。


「あの、古城さん」


「なに?」


「もういいから、あと、もう直ぐ着くから」


 ほぼ一方的に榊原の話をされて若干食傷気味だが、それもようやく終わる。

 古城に歩けるかと聞いて下ろすと、そのまま倒れてしまいそうになり、諦めておぶった状態で行く事になった。


 注目を集めて嫌だなぁとは思うが、仕方ないと自分に言い聞かせて先生の元に向かう。


 生徒達の間を進んで、無駄に注目を集めてしまう。

 これなら、どこかで待ってもらった方が良かったなと後悔する。


「真希⁉︎」


 すると、古城を心配した榊原が、驚いたように駆け寄って来る。


「レナちゃん」


 古城の呟きを聞いて天音は「下ろすよ」と告げて、ゆっくりと手を離す。そして、転ばないように体を支えて、榊原に「古城さんをよろしく」とお願いする。


「僕、先生に説明して来るから」


「あの、天音くんありがとう」


 感謝の言葉に頷いて二人から離れる。


 これって、説明したらマラソン大会中止になるのかなぁと心配しながら、先生の元に向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
これは真ヒロインか。
これはヒロインのはひはひ
真・ヒロインの登場遅かったですね
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