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運命なんて知らない  作者: なかた
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ずっと一緒

雪がいない生活に慣れたくなくて、でも慣れてきてしまった。

休日は暇だから本屋に行ったり、買い物したりした。

でも、やっぱり帰って来た時のおかえりがないだけで胸が痛くなる。

一緒に観てたドラマはもう2クール目が始まったし、雪が面白かったと言った本の中巻も出た。

ドラマは観てないし、本はとっくに読み終わらせた。

いつ、帰ってきてもいいように。

いつかふらっと帰って来てくれる気がしてその時に

「なんで先に観てるの!?」

と拗ねてしまうかもしれないから見ない。

一緒に観ると約束したから。

雪がいつでも読めるようにすぐに読んだ。

雪は忘れっぽいから上巻もしっかりセットで置いてある。

だから、帰ってきてよ。

寂しいよ。

会いたいよ。

大学も明日で卒業だ。

もう、見ることさえ叶わない。

通知が鳴るたびに雪からメッセージがきたんじゃないのかと、慌ててスマホを見てしまう。

何度も雪から送られてきた最後のメッセージを見返してしまう。

ピコン__。

分かってる。雪からの着信じゃないこと。でも、もしかしたら、雪かもしれないと諦めきれない自分がいる。

「......本当、何、期待してんだろ。俺」

メッセージは先輩からだった。

『お兄さん、αと病院来てたけど』

だからなんだよ。そんなの送ってくるなよ。知ってるよ。

『知ってるよ』

我慢してそれだけ送る。

『知ってるじゃないでしょ。なにしてんの』

何してるって知らないよ。

俺じゃダメって言われたんだよ。

一緒にいるのが辛いって言われたんだよ。

『先輩に関係ない』

本当は全部言ってやりたかった。でも、八つ当たりになるだけだからやめた。

これ以上話しても喧嘩になるだけだし。

「は?」

関係ないって言ってるのになんで電話掛けてれるの?

ほっといても欲しいのに。

深呼吸して怒りを紛らわす。

怒りそうな時は深呼吸をするんだよと雪が言ってたっけ。

それから、深呼吸をするようになった。

「もしもし」

「霜!お前いいの?お兄さんのこと」

「...もういいんだよ、先輩。俺は雪といたいけど雪は俺と一緒にいるのが辛いんだって」

ずっと一緒にいたいと思ったけど雪は違ったから。

「辛い訳ないだろ!霜の話する度に幸せそうにしてたんだよ、雪さん。霜が幸せにしなきゃ誰が幸せにするんだよ!」

知ってる。友達に何回も言われた。

雪は俺のこと話す時が1番楽しそうだって。

「俺は...!αじゃないから、ダメなんだって」

「だったら!俺はなんで俺はお前と番ってないんだよ...!運命なのに」

「先輩...。ごめん。ごめんね。俺、雪のこと忘れて、先輩と一緒にいようと思った。でも、雪のことが好きなままで先輩といたくなかった。先輩のこと好きだったけど好きになれなかった。だから、俺は先輩の運命じゃないよ」

本当は運命の番。

でも、知らない。

先輩には申し訳ないけど、俺にはもっと大事な人がいるから。

「...知ってる。俺たちは運命の番なんかじない。分かってる。だから、雪さんと一緒にいてくれよ。じゃなきゃ、俺が報われない。雪さん、まだ番ってないみたいだからまだ間に合う。ちゃんと話して来いよ」

「...間に合うかな。俺、ちゃんと雪に好きって言えると思う?伝わると思う?」

いつ、どんな風に伝えても、好きって返ってきた。でも、俺とは違う好きだから。期待しなかったし、訂正もしなかった。

「雪さんは霜のこと好きだろ。霜に負担かけないためにαといるんだから。霜が雪さんが1番なのと同じで雪さんも霜が1番なんだよ」

「本当にそうだったらいいのに。今まで好きって言っても伝わったことないんだ。どう伝えればいいのかなぁ...」

最近、涙腺がおかしい。

泣きそうになってるって先輩にもバレてるかな。もう、どうしたらいいか分からない。

「ちゃんと好きって言えばいい。適当に流されたらキスでもしてやれ」

「それはキモくない?」

「そこまでしないと雪さんには伝わらないだろ」

「確かに。先輩、ありがとう。ごめんね」

「ごめんなんて要らない。ありがとうだけでいい」

「...ありがとう。ちゃんと伝えるよ」

「うん」

先輩に背中を押して貰ったんだ。

明日、言おう。

これで最後にしよう。

卒業式だし、丁度いい。

布団に入って心臓が煩くなる前に眠りについた。

夢を見た。

雪が笑っていた。

それしか思い出せないけど、いい夢でずっと眠っていたかった。

スーツを着て、髪をセットして、最後に雪と色違いのネクタイをした。

もう、ずっと心臓は煩くて何も考えられない。

ここまで緊張して、雪に会えなかったら嫌だからメッセージを送っておく。

『卒業式の後、会いに行くから待ってて』

返信は案外すぐきて

『うん』

とだけだった。

画面上に表示された好きというメッセージを何度も見返しながら大学に向かった。

卒業式が早く終わって欲しい気持ちと終わらないで欲しい気持ちがぶつかってる。

振られるって分かってるから、緊張は無くなった。伝えて、終わりにする。

それだけだ。

長い式がやっと終わって、ようやく外に出た。雪を早く見つけないと。はやる気持ちを抑えながら、探す。

「鮎川!」

「早坂?どうしたの?」

「俺、あの後、彼氏出来たんだ。αなんだけど。鮎川のおかげ、ありがとう」

よかった。

ちゃんと前に進めて。

俺も進まなきゃ。

「俺のおかげじゃないよ。自分が頑張ったんでしょ。大変なこともあるかもだけど、早坂なら大丈夫。早坂みたいないい人捕まえるなんて見る目ある彼氏じゃん。絶対いい人だよ」

「ありがとう。そういえば、お兄さんあっちにいたよ。ごめん。時間取らせちゃって」

「いや、全然。早坂もしかしてさ、気づいてた?」

雪を探してたなんて一言も言ってないのに。

「あー、うん。居酒屋で話した時にそうなんかなって」

「そっか」

「ちゃんと幸せになれよ」

「こっちのセリフ!じゃあ」

「うん」

バレてたのか。

まあ、もういいや。

これで最後だから。

「霜!」

袖を引かれる。

「え?」

「なんで気づかないの...通り過ぎてる」

「あ、ごめん」

「ふふっ...ちゃんと見つけてよ」

「今度は見つける」

たくさん考えたのに、言いたいことが出てこない。

「雪、あのさ」

「うん」


「好きだよ」


それしか出てこなかった。

雪の顔を見たら、色々言おうと思ってたことがあったのに好きという言葉しか出てこない。

「知ってるよ。僕もだよ」

多分分かってない。

「雪、ごめん」

雪の頬を掴んだ。

「俺の好きってこういうことなんだよ」

さすがにキスは出来なかったけど、これで伝わる。雪は長い睫毛以外動かさず、固まってしまった。怖がらせたかな。

「ごめん。やりすぎた」

「本当に?」

「え?」

その瞬間、何が起きたのか分からなかった。雪の長い睫毛がやけに近くて、引っ張られたネクタイが苦しかった。

「ねぇ、これで合ってる?」

「え、待って。分かんない。え?」

「キスまでしたのに分かんないの?」

「わかる...でも、なんで」

「霜が好きって言ったんじゃん」

どんどん雪の顔が赤く染まって、自分の顔も熱かった。

想像もしなかったから、なんて答えていいのか分からない。

振られた時のことしか考えてなかった。

「言った...けど、本当に?」

「本当だよ。やっと伝わった。一生、伝わらないと思ったのに」

「うそだ...じゃあ、なんで一緒に居てくれなかったの」

1番知りたかった答え。

「霜のことが好きだから。一緒にはいれないと思った」

「好きなら一緒に居てよ...」

目頭が熱くて、もう我慢出来そうにない。

「ごめんね。僕、バカだから自分のことばっかになっちゃった。ありがとう、好きって言ってくれて」

「遅くなってごめん」

「好きだよ。霜」

嬉しそうに笑いながらそう言う雪を見てこの世で1番幸せだと思った。

今まで見た雪の中で1番綺麗だと思った。

「これから、ずっと一緒にいて」

「...でも、三佳巳さんが」

「一緒にどこか行っちゃおうか」

「どこ行くの?」

「どこでも。2人でいれるところに」

それから、2人でアパートに帰って軽く荷物を纏めた。雪の物はちょっとしかないけど。

「三佳巳さんに怒られちゃうね」

「あの人なら、許してくれるでしょ」

「電話してもいい?」

「うん」

本当は嫌だけど、迷惑かけてしまったからしょうがない。

「もしもし。うん。ごめんなさい。僕、もう帰れない。え?知ってた?...そっか。ごめん。ありがとう。うん。三佳巳さんもね」

怒って無さそうだけど、やっぱり申し訳ないな。

「良いって。なんとなくこうなるって思ってたから、ちゃんと幸せになってて」

「そっか。じゃあ、出よっか」

「このアパートともお別れだね」

「寂しい?」

「ちょっと」

思い出深そうに部屋を見渡して、哀しげな顔をして部屋を出た。

「新しく住む所はどこにしようか」

「海が見えるとこがいいな」

そんな話しをしながら電車に揺られた。

2人でいれるならどこでもいい。

雪といれるなら、どこだって幸せだ。

「もう、手離せないよ」

「そんなの僕だって」

もし、運命の人がいたとしても俺はもう雪を離さないから。

「雪、ずっと側にいてね」

「うん。ずっと側にいるよ」

これからもよろしくね。

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