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運命なんて知らない  作者: なかた
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伝わればいいのに

雪が居なくなったアパートはすっかり寂しくなった。

もう、本が多過ぎるからちゃんと収納してとか言われないし、ソファーが窮屈になることもない。

雪が出て行く時、ちゃんと笑えたのかな。

雪の最後のお願いは叶えてあげられてるといいな。

もう、霜が居なくなって一ヶ月だ。

大学で見かけても、上手く話しかけられない。最後と言われたから、俺から話しかける資格はない。

心に穴が空いたみたいってこんな気持ちのことを言うのだろうか。

雪が出て行ってから本棚を買った。

積んでいた本がまだ沢山あるから入れないと。倒さないように丁寧に数冊ずつ入れる。

あ、この小説は雪から貰ったやつだ。

一番好きな本。

雪に貸して以来読んでなかった。

あの時は本当に離れるなんて思ってなかったな。

雪はどこまで読んだんだろう?

最後まで読んだって言ってた気がする。

気になって本を開く。

ぱらっとめくってみたけど、やっぱり栞は最後のページに挟まってた。

栞に付けた付箋も最後のページにあった。

2つに折って栞を挟んでいる付箋を取る。

「は、なにそれ」

付箋には

『ありがとう

そういうところ、好き』

と書いてあった。

「...俺も」

これが俺と同じ意味だったら良かったのに。簡単に好きとか言わないで欲しい。

そういうところも好きなんだけど。

てか、そういうところってどこさ。

ヤケクソで霜にメモの写真とメッセージを送る。

『どういうこと』

それだけ送ってスマホを閉じた。




ピコン___。

誰からだろう?

三佳巳さんかな?いつも帰ってくる時間帯だし。

「え、」

霜からのメッセージだった。

出て行ってから、全然話してなかったのに。

何かあったのかな?

1人で本当に大丈夫なのかな。

抑えた心配が溢れ出す。

慌てているからか、パスワードを間違えて余計に時間がかかる。

アプリを開いてトーク欄をタップした。

「ふふっ、久しぶりの連絡がこれ?」

思わず声が出てしまった。

栞に付いてた付箋に書いた告白。

きっと、そういう意味で受け取ってもらえないから書いてみた。

どういうことって、そういうことだよ。

言えないけど、そういうこと。

『霜の丁寧なとこ好きって意味』

それだけ送った。

好きって言う度に期待して伝われば良いのにって思う。

でも、もう僕は霜と別々に生きる道を選んだんだからこれで最後。

もう、好きは言わない。








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