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運命なんて知らない  作者: なかた
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笑っていてね

霜とお寿司を食べた次の日から、大学に行き始め、変わらない日常を送っている。

変わったのは、週に1回三佳巳さんの家で夕飯を食べるようになったことだ。

それから少しずつ自分のものを片付けるようになった。

大学に在籍中には番になって、卒業後は後継ぎを産むために励む...。

番になったら三佳巳さんのことを好きになれるのかな。

運命の番だったら何も考えなくて済んだのに。

「雪くん。何ぼーっとしてるの?」

今は三佳巳さんの家で夕飯を食べて三佳巳さんの部屋でダラダラしているところだ。

「三佳巳さんと運命の番だったらなーって考えてた」

「そうだったら、僕も良かったのに」

三佳巳さんにも忘れられない人がいたんだっけ。本当、三佳巳さんの親が知ったら泣かれちゃうな。

「マンションは大学に近い方がいいよね」

「うん。三佳巳さんは?会社近くなくていいの?」

「車で行くしね。家具とかこだわりある?」

「ないけど...一個だけ...やっぱりいいや」

「なに?なんでも言っていいんだよ」

大きいソファーが欲しかった。

初めて、施設から離れて暮らす時に家具を買いに行った。

その時、いつかこんなソファー欲しいねって話したのを思い出した。

結局、お金が足りず、中古の小さなソファーを買った。2人で座ったらくっついてしまうくらいのソファーだった。

初めはドキドキしてたのは内緒だ。

「大きい...テレビが欲しい」

「大きいテレビね」

「いいの?」

「可愛い奥さんの可愛いお願いならなんでも聞いてあげる」

そう言ってほっぺたにキスをしてくる。

嫌とかそういう感情が湧かないだけいいけど...。

「最近、チャラいのなんで...?」

「番になるんだから、少しは歩み寄ろうと思って」

「歩み寄りすぎじゃ...」

「お互い、寂しい同士なんだし?」

「...」

別に寂しくなんかない。

寂しくなんか。

それから少し経って、マンションに住むことになった。

「霜。1人で大丈夫?」

「大丈夫じゃないって言ったらどうするのさ」

そんなこと言わないで。

僕は霜が好きなんだから、そんな気ないのにそう言われたら期待しちゃうから。

いつもかっこよくて、たまに可愛いくて優しい霜が大好きでした。

色々あったし、好きだって気づくのも遅かったけど、多分ずっと好きだった。

霜が笑って優しい声で言うたまにしか言わない、いってらっしゃいが好きなんだ。

もう、聞けないから最後のお願い。

「そんな顔されたら、行けないから笑って送り出してよ。最後のお願い」

「最後なんて言わないで。いつでも帰って来ていいから。ずっと待ってるから」

「...ごめんね。最後のお願い。聞いてくれる?」

後ちょっとで泣きそうだ。

声はもう、ずっと前から震えてる。

笑えてるかな。笑えてるといいな。

「...いってらっしゃい」

「うん。いってきます...ずっと大好きだよ。霜」

笑顔で言えただろうか。

霜の笑顔は下手くそで今にも泣きそうだった。きっと僕の笑顔も霜と似た顔だろう。

そんな顔させたかった訳じゃなかった。

でも、霜がこれから先、笑って過ごすのは僕には難しいから。

ごめんね。僕が霜を幸せに出来たら良かったのに。



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