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運命なんて知らない  作者: なかた
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好きだよ(前編)

「側にいるだけってさ、辛いんだよ。霜」


 雪はもう全て決めてるってこと知ってた。

でも、気づかないふりをして一緒にいようとした。

馬鹿だな。俺。

煙草の時も知らないふりして痛い目見たのに。

「分からない。分かんないよ。言ってよ。俺になにが足りないのか」

「僕を突き放せないとこ。僕が幸せにできないとこ。他にもあるけど...」

「そんなの俺が直せば!」

幸せにできないなんて言わないで。

側にいてくれれば幸せなのに。

なにもいらない。雪だけで本当にいい。

なんでダメなんだろう。

兄弟なんて関係ずっといらなかった。

死ぬまで二人でいたい。

世界に二人だけならよかった。


 「一番はαじゃないとこ」


なんだ。

そんな理由か。

それなら、それだったら。


 「そっか」

  

本当に本当に大好きだったんだ。

ずっと側にいて、それでも側にいたいと思えた人。

なんでこんなに好きになってしまったのだろう。

自分勝手に悩んで結論をだすところが嫌いだ。

煙草を吸うところが嫌いだ。

俺を振り回すところが嫌いだ。

それでも、笑う顔が好きだ。

俺が全部に疲れた時、分かってるかのように隣で話を聞いてくれるところ、それでいて欲しい言葉をくれる。

 

 雪は覚えてないだろう。


「霜くんっていつも冷たい!人の気持ち理解しようとしたことあるの!?」


中学の頃、別れ話で彼女にそう言われた。

告白されてなんとなく付き合った。

周りの雰囲気とかに流されてたのもあったし、雪を好きになったのはおかしいことだと思っていた。

兄を好きになる。

それは俺の中ではいけないことでおかしいこと。

付き合ってみたら、この子を好きになるかもしれない。

雪への気持ちは兄弟愛だって分かる気がした。

でも、違った。

どんなに笑いかけてくれても頭の中には笑う雪が出てきて、甘えられても雪の甘ったるい声が聞こえた。

結局、雪を重ねてしまい冷たい態度をとってしまった。

彼女にも申し訳なくなって別れを切り出した。

彼女もやっぱり自分を好きじゃないことに気づいていたみたいで好きじゃないなら最初から付き合わないで欲しかったと言われた。

ごめんと謝ることしか出来ず、彼女の怒りが収まるまで別れ話は続いた。

繰り返される言葉が何年も脳に染み込んで離れなかった。


「人のこと考えたことある!?」


「人の気持ち分かろうとしないよね」


「察してよ」


分からないよ。

俺が好きな奴の気が知れない。

兄弟のこと好きになる気持ち悪い奴で好きでもない相手と付き合うようなクズ。

告白してきた相手に嫌悪感が増えていった。振り方も酷くなる一方、告白する人は減った。

噂が広まって、雪にまで届いた。

なんて聞いたのかは知らない。


 その日は雨の日で、傘を持っていなかった。昇降口で雪が来るのを待っていた。湿気と散らつく視線が嫌で堪らなかった。


「霜!お待たせ」


 声を聞いただけで気持ちが浮ついて、さっきまでの鬱陶しさが消えた。


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