隠せてないよ
霜とたくさん話した。
くだらない話ばかりだったのに霜はずっと聞いてくれた。
いつも通りに戻ったようだった。
でも、ここは家ではないからお別れがくる。
「また来るね」
寂しそうにもせず、普通に言うから寂しくなってしまう。
「...うん」
「そんな顔しないで兄さん。兄さんが寂しくないように毎日くるよ」
兄さん。
久しぶりに呼ばれた。
兄さんって呼ばないで。
今の僕にその呼び方はあんまりにもつらい。
「......学校は?」
「もう、レポート出したし単位はちゃんと取ってるから大丈夫だよ」
「......ね、霜。もう、兄さんって呼ばないで」
「......なんで」
「......やっぱり、なんでもない。間違えた」
「そっか。明日は先輩と話してくるから、少し来るの遅くなる」
「分かった。ごめん。もう帰らないとだよね」
先生と何話すんだろう......。
やだな。番を作ろうと思ってるのに思えば思うほど弟離れとは程遠い感情ばかりで。
「帰りたくないな。雪、俺が雪の泣きそうな顔に弱いんだよ。知ってるでしょ」
「知ってるよ。でも、霜も僕が表情そんな簡単に制御出来ないの知ってるじゃん」
「分かってるよ。ずるいね。本当」
「霜だってずるいよ。だからね、他の子にはダメだよ」
「なにそれ。こっちのセリフなんだけど」
「ふはっ、冗談」
嘘。本当はそう思ってる。
今だけだから、許してね。
「......ヘタクソ。そんなん言うなら番なんていらないじゃん」
「......?どういう...」
「じゃ、帰るね」
帰る準備を済ませていたから聞く暇もなく帰って行った。
霜はαの事すっごい警戒してるから、やっぱり嫌なのかな。
僕も怖いよ。
αの目が、匂いが、自分をどうしたいのかが分かってしまう。
でも、怖がってばっかじゃ変わらない。
それに三佳巳さんとか先生みたいなαもいる。
きっと、大丈夫。
霜も僕から離れたら分かってくれる。
だから、僕が離れなきゃ。
今生の別れって訳じゃないし、きっといつでも会える。
大丈夫だ。
ガラッ__。
「来ちゃった。調子はどう?」
「三佳巳さん......なんで」
「美月さんのお見舞いに来たついでに」
「そっか」
「霜くんとはどう?話せた?」
「番の話したら怒っちゃって......」
「やっぱり。霜くんは雪くんの事、本当に大事なんだよ」
「でも、霜には運命が......」
「それは霜くんが決めることでしょ」
「じゃあ、僕が番作るのも僕が決めることじゃん」
「そうだよ。でも、適当に選んだ人が雪くんの隣にずっといるくらいなら僕のところにいてよ」
「......誰かの代わりは嫌」
「雪くんは番を......」
「分かってる!僕は霜の代わりに番を作ろうとしてる。でも、でも」
「うん。だから、僕じゃダメかな。僕は雪くんを愛せない。雪くんも僕を愛さない」
「......」
「雪くんはさ、自分のことすっごく愛してくれる人と番っても罪悪感で苦しくならない?自分は返せないのに」
「.....なる」
「じゃあ、そろそろ時間だから行くね。考えといてね」




