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運命なんて知らない  作者: なかた
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諦められなくなっちゃった

検査結果の説明は明日されるそうだ。

フェロモンが落ち着いてるといいけど。

検査は午前中に全部終わり、暇になってしまった。緊急で入院したから、スマホなんて持ってないしどうやって時間を潰そう。

ベットに寝転んで考える。

霜、はやく来ないかな。

数十分くらいぼーっとしてたら、なんだか体が熱い気がしてきた。

これ、発情期(ヒート)だ。

疼く体を必死に動かしてナースコールを押す。

熱い。助けて。

突発性ヒートが来た後なのに発情期(ヒート)がくるなんて。今月の周期おかしいよ。

熱い。はやく、はやく欲しい。

ダメだこれ。熱すぎて死んじゃう。

溶ける。

「鮎川さん!聞こえますか!」

看護師さんが肩を叩きながら聞く。

「熱い。.......助けて」

「すぐに先生が来ますから、体温測りますね」

「やぁ、こないで」

「大丈夫です。落ち着いてください」

「うぅっ。そう、そう、」


ガラッ!


「雪!」

霜、来てくれたんだ。

「霜、て、つないで」

必死に手を伸ばして触れる。

「うん、うん」

霜が泣きそうな顔で手を握る。

「そんなかおしない...で」

そう言った後意識が途切れた。






雪が病院に入院してから、生きた心地がしなかった。

と言ってもまだ半日しか経ってないんだけど。

どうやって帰ってきたのかも分からない。

気づいたら、朝でソファで起きた。

寝落ちしたのだろう。

病院に電話し、入院に必要なものと何時に行けばいいかメモする。

いつも飲んでる薬と、歯ブラシやタオルをボストンバックに詰める。

入院中は暇だろうと思って、俺のお気に入りの本を数冊入れた。


ピコンッ!


自分のスマホじゃない通知音。

あぶない、あぶない。

雪のスマホを持って行くのを忘れるとこだった。

見てはいけないと思ったけど通知が目に入る。

櫻田川と表示されていて、なんともいえない気持ちになり通知を消した。

病院に行くまでまだ時間がある。

久しぶりに自分で朝ごはんでも作ろうかとキッチンに立つ。

冷凍ご飯を電子レンジで温め、フライパンに卵を入れ適当に切った野菜と一緒に焼く。

余った野菜を味噌汁に入れて完成だ。

いつものちゃんとした朝ごはんが恋しい。

ふわふわの卵焼き、具材が統一された味噌汁、きゅうりの浅漬け、おかずがもう一品。

あんなのを毎回作っているなんてすごいなぁ。

雪がいないことを実感して、早く雪に会いたくなった。

ご飯を食べても面会時間が一向に近づかない。

絶対集中出来ないと思って読まなかった新刊を取り出して、栞が挟んであるところを開く。

新しいところを読んでみたけどやっぱり頭に入らない。

しょうがないから、最初から読み直した。

文字をなぞるだけだったけど途中から栞を挟んだページよりも先のページにいってそのまま読み終わってしまった。

無心で読んでいたから、疲れた。

雪のところに行くにはちょうどいい時間だろう。

雪の荷物を詰めたボストンバッグを片手に持ち、病院へ向かった。

病院に着いてからは受け付けを済ませて病室までの案内を聞いて部屋の扉を開けた。


ガラッ!


咽せそうになるくらいの甘い匂い。

泣きながら怯える顔。

「雪!」

雪を見た瞬間、看護師さえ押し退けて駆け寄った。

「霜、て、つないで」

俺を見た瞬間、酷く安心した顔をして手を握ったまま寝てしまった。

心配なのにそれがすごく嬉しい。

もし、俺がαだったら雪は俺を選んでくれるのかな。

雪はさ、俺を双子だと思って弟扱いするけど俺は普段雪を兄さんだと思ってないよ。

雪、俺は双子じゃなくてよかったと思ってる。

Ω同士で血が繋がってるだったら諦めないといけないって思ってた。

でも、血は繋がってない。

雪、どうするの?

俺、諦められなくなっちゃったよ。







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