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運命なんて知らない  作者: なかた
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そんな話はいいから

今日は雪がお母さんに会いに行く日だ。

お母さんなのかはまだ分かってないんだけど、名前も知らないからお母さんって言ってる。

どうやらそのお母さんは俺には話せない話があって雪にだけ話すそうだ。

別に今更、母親なんてどうでもいいだろうと思ってしまう。

もう、成人してるしお金にも余裕があるわけではないけど困ってはいない。

雪はお母さんを気にしてるし、会いたいと言っていた。会う必要がない。そう思うのは俺が冷たいのか。

それとも、雪が家族に飢えているのか。

きっと、どっちもだ。

雪が帰ってくるまで時間がある。本屋にでも行って新しい本を買おう。

出かける準備をして鍵を閉め、本屋まで歩く。

確か、白川 多紀の新作が出てるはず。

白川 多紀は俺が一番好きな本の作者だ。

ミステリー作家で有名になった人で映画化されたりしている。彼の恋人は脚本家で恋人の名前をペンネームに使うくらいベタ惚れしているらしい。

美形カップルなんて言われて度々バズっている。

こないだ同棲の報告をしていて、世間ではまだしてなかったのかと驚かれていた。そのぐらいのバカップルらしい。

新刊ではかの有名な夏目漱石の月が綺麗ですね(愛しています)を題名にしたミステリーと恋愛を絡めた作品だそうだ。

予告を発表した時に、脚本家が惚気ツイートをして話題になった。雨上がりの写真に雨止みませんねいう文を添えてツイートしていた。

告白の時に脚本家に言った言葉らしく、

ネットニュースになる程バズっていた。

恋愛モノは普段は読まないけどミステリー要素があるなら読むのが楽しみだ。

本屋に着き、真っ直ぐに新作コーナーに行く。

帯だけでも面白そうで家に帰る時間が惜しくなってしまい我慢出来ずに本屋内のカフェで読んだ。

時間も忘れて本の世界に入っていたら、外は暗くなっていた。

雪はもう帰ってる頃だ。

急いでしおりを挟み、カフェから出た。

本の内容を忘れないように整理しながらアパートまでの道を歩く。

主人公が海でプロポーズするところから始まる。

プロポーズを喜んで受けた彼女が行方不明になり疑われる主人公。

警察署で尋問を受け彼女が居なくなった部屋の写真を見せられる。

綺麗に整頓されているいつも通りの部屋。

ただ一つだけおかしなところがあった。

机の上に置いてある指輪。最初は主人公がプレゼントしたものだと思われた。

指輪の刻印には主人公のイニシャルと彼女のイニシャル彫られていた。

けれども、デザインは別のもので自分が持っている指輪と違かった。

主人公は一応、解放されたが疑われている。

彼女を見つけるため彼女が居なくなった理由を知るために主人公は彼女と行った場所、彼女が好きだったところを探す。

プロポーズした海。よく行ったカフェ。告白した夕日がよく見える丘。

丘での思い出のところでしおりを挟んだ。

ありきたりな感じだけど伏線を回収したと思ったら新しい謎が出てきてどんどん引き込まれていく。

早く先を読みたいと思って足早に帰った。

鍵を開けようとしたらすでに開いていたみたいで空回りしてしまった。

帰ったら鍵を閉めろって何度も言っているのに警戒心がなくてハラハラする。

手を洗ってリビングに行く。

「ただいま。雪、また鍵閉めてなかっ」

「......」

雪はカクカクしながらソファで寝ていた。

寝落ちしてしたようだ。

ソファの隅に置いてあるブランケットをかけ、自分の肩に寄せる。

これで風邪はひかないだろう。

読みかけの本を開き、雪の寝息を聞きながらしばらく読んでいた。丘での思い出を読み終わった。告白シーンは題名の通り月が綺麗ですねと言っていた。自分は絶対に言えないから、なんだか気恥ずかしい。

あれ...?なんかすごい甘い匂いがする。

初めて嗅いだようないつもの匂いで気がつく。

これ、発情期(ヒート)だ。

横にいる雪の体温は熱く、今回の発情期(ヒート)はいつもより酷くなりそうに見える。

おかしい。

俺もΩなのに匂いが分かるなんて。

熱い体が少し動き、辛そうにこちらを見つめていた。

「霜、話さないといけないことがあって」

「起きたんだ。それより雪、発情期きてるよ。俺でも分かるくらい」

これは病院に行って薬を打ってもらわないといけないかもしれない。こんなに辛そうなのは初めてだ。

「あのね僕と霜、双子じゃないの。あのひとは、」

「うん。後でしっかり聞くから薬飲もう」

薬飲ませて、すぐ病院に連れて行かないと。

話は耳から通り抜けていき、病院と薬のことでいっぱいになっている。

「いまじゃないと、霜のおかあさんは霜のこと大事にしてたよ」

辛そうに辿々しく話すせいで余計に心配になる。

「そっか。ありがとう、雪。知れて良かった。でも、そろそろ薬飲まないと」

返事もそこそこに雪に薬を飲ませようとしたが遅かった。雪は脱力し、熱い吐息を苦しそうに吐いている。

これ、本当にやばいやつだ。

スマホに手を伸ばし、震える手で電話を鳴らす。

「突発性ヒートで意識を失っていて、抑制剤は飲ませました。はい、はい。熱が結構あって。」

症状と住所を伝えて言われた通りにして待っている。

雪は意識がないままだ。

急いできた救急車に一緒に乗り病院に向かった。


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