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運命なんて知らない  作者: なかた
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愛だとかより

雪が心配でしょうがない。

信用できるかも分からないαの家になんて来させたくなかったし、来たくなかった。でも、雪は母さんに会いたいようだった。

雪の寂しそうな顔にはいつも慣れない。あんな顔をして話されたら、俺はどうしたらいいのか分からない。

雪は家族とか母さんの話をする時、辛そうな寂しそうな顔する。まあ、孤児院にいた人達は大体そうだった。

親の名前も住んでる場所も情報が何一つなかった。俺は顔を知らない両親のことを思えるような人ではなかったようで、憧れることも憎むことも出来なかった。

ほんのちょっとだけ羨ましい。

「霜くん、そろそろ父さん達の所行こうか」

「はい」

鈴蘭の絵のステンドグラスがはまったドアのを櫻田川さんがノックする。

「どうぞ」

「失礼します。父さん、母さん今日紹介する一人の鮎川 霜さんです。」

「鮎川 霜です。よろしくお願いします。」

「よろしくね。霜さん」

櫻田川さんのお父さんは口を真一文字に結んで喋る気配はなさそうだった。

お母さんは温和そうだ。

「この人は櫻田川 勝司、私は静子です」

「父さん、人見知りなんだ」

「そうなんですね」

社長で人見知りって結構大変なんじゃないのか?

「仕事中はそんなことないんだけど、プライベートだとね。霜くんと同じ」

「俺、いつ人見知りしました?」

「雪くんがいないとそうじゃん。父さんと一緒。母さんがいないと警戒心バチバチになるの」

『そんなことない(ですよ)』

「あら、綺麗に揃ったわね」

まさか、揃うとは思わなかった。

「霜くんはうちの主人に似てるわね。ツンとした感じとか雰囲気とか」

「親近感あって、落ち着くんです」

嘘だって分かってもなんかやだな。

「いいじゃない。そういう人との結婚は幸せよ」

櫻田川さんのお父さんは少し口角が上がって明らかに嬉しそうな雰囲気だ。

若い頃は絶対バカップルそうだな。

「よかったです。でも、まだ会って間もないのでお互いによく考えます」

「そうね。お互いのことをもっと知ってから」

「はい。では、そろそろ」

「今日は来てくれてありがとうね。霜くん」

「こちらこそ、貴重な時間をありがとうございました」

櫻田川さんの後ろをついて部屋から出て応接室に戻った。

「霜くん、少しは喋ってよ」

「別にいいじゃないですか」

「まあ、人見知りってことで何とか切り抜けたけど」

「気に入られたい訳じゃないし」

櫻田川さんといる時よりは愛想が良かったはずだ。それに変に気に入られても後々大変だろう。

「そこそこ、気に入られてるよ。いいじゃないなんて他の子は言われなかった」

「結婚する気ないですけどね」

「他の子は結婚する気あっても母さんに気に入られなかったのが可哀想だよ」

「下心が丸見えだったんじゃないですか?お金目当てってことが」

「愛だかとかよりよっぽど信じられると思うけど」

「人によると思いますけどね」

金持ちも大変だな。お金で寄ってくる人の方が信用できるなんて、大方、昔の恋人にお金でも持ち逃げされたか何か言われたんだろうな。

「雪くんも霜くんもお金なんて無くてもいてくれそうだね」

「好きになったら、一途ですよ。雪も俺も」

その代わり、好きになるのも信用するのにも時間がかかる。

「でも、僕はそういうの信じれないから」

「まあ、信じられなくても好きになっちゃうことはあるそうですよ」

「それは経験から?」

「いや、本で読んだだけです。本当にあると思いますか?そんなこと」

「無いといいな。そんなのがあったらきっと僕は苦労する」

「そうですね」

無いと良い。あったら、苦しいだろうな。信じられないのは苦しい。信じてもらえないのも。

「良い人と番になれると良いですね」

「うん」


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