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4.お見合いと暗殺

 私を殺しかけたジェラールさんが偉い人と知ったのは昨日の話だった。

 ミカちゃんと再会して二日後。無事ヒャクから一人での外出を勝ち取ったので、ミカちゃんの家に行ってきた時に聞いた情報だ。


 ミカちゃんは王都の騎士団と一緒に来たらしい。本当は村人全員移動したかったが、村の状況がわからないので、ミカちゃんと何人かで来たらしい。ミカちゃんが選ばれたのは何というか、あれだ。あれ。……私がどんな姿になっているかわからないからだ。ミカちゃんも災難だったな。


 ミカちゃんを通して、私の生存と邪竜の消滅を確認したので、騎士団は周辺の魔物の調査と村の復興をするらしい。三週間くらい滞在するって聞いた。騎士団。しかもミカちゃんの話を聞く限り王都の精鋭っぽい。なんか強そうな魔物を一瞬で討伐していたようだ。

 ん? これはチャンスじゃないか? これから中ボスが控えてる。騎士団の戦い方を知れば、少しでも強くなれるかもしれない。

 それに村を破壊した張本人としては村の復興の手伝いをした方が良い。よし行こう。武器は……適当な武器を持っていっても扱えないし、拳しかないか。

 椅子から立ち上がり、台所にいるヒャクへ声をかける。


「ヒャク。走り込みに行って来ます。夜ご飯までには帰ってきます」

「はい。いってらっしゃい。暗くなる前には帰ってきて下さいね」


 追求される前に急いで家から出る。ここで騎士団なんて言ってしまうとヒャクから危ないことは禁止ですと怒られてしまいそうだしな。

 ばれないように。ミカちゃんちを経由して騎士団の元に向かう。確か森と村の境界辺りにいるってミカちゃんが言っていたし、この辺りにいるかな?

 よし、探そうか


「誰だ!」


 え? 何っ?

 ビックリして、周りを見てると、ガタイの良い男の人達が集まってくる。騎士団の人達、だよね? あっ囲まれた。

 ヤバイ。今の私は不審者まちがいなし。これならミカちゃんにも来て貰えば良かった。

 って違う違う。今からミカちゃんを呼べないし、これからどうしよ。

 村を破壊した犯人です。お手伝いに来ました。とか? それは間違いなく逆効果だ。


「誰だ? 知らない顔だな」


 どうしよ。めっちゃ睨まれてる。


「あ、怪しい者じゃないです」


 こう言うセリフ言うヤツが怪しいって前世で思ってたけど、マジでテンパるとゼロの語彙力がマイナスになる。やばい程に言葉が出ない。


「何をしに来た?」


 何を? それなら答えられる!


「む、村の修理に来ました! 後、稽古を見たいです!」

「見たい……? あぁ。お前もリエル目当てか」


 リエル? 新しい人だ。誰だろう? 騎士団の最強の人とかか。もしかして果たし状を持ってきたとか思われてる? ヤバイヤバイ。


「違います!」

「リエルじゃないのか? ジェラール団長か」


 こっちは知ってる。私を殺した事にした偉い人だ。ジェラールさんはミカちゃんから私の事を聞いている。話を聞くだけはしてくれそうだし、まずはジェラールさんだ。


「そ、そうです!」

「団長に会いたいねぇ」


 なんか含みがある言い方だ。なんだろう。もしかして、暗殺でも疑われているのか? 確かに初手怪しくないですは怪しい。


「へ、変な意味はないです」

「どうした」

「い、いいいいえ、あ、あの暗殺などは考えていません!」


 その瞬間、空気が二、三度冷えた気がする。なんか口に出せば出すほど、墓穴を掘っている気がして来たな。


「暗殺」

「め、めめめ滅相もないです! お手伝いと修行に来ました。ジェラールさんなら、きっと私を知ってます」

「団長が。そもそも。お前は誰だ。名前は?」

「はい! ルシェと申します」


 名乗った途端に空気が変わった。さっきまで絶対零度だったのが、少しまろやかになった。

 視線も睨んでいたのが、あのゴブリンを狩ってきた時の珍獣を見つめる時みたいになった。


「お前が……。今、団長を呼んでくる」


 なんか良くわからないけど、きっと大丈夫だろう。そのまま待っているとすぐに厳つい男の人が来た。

 ゴツいな。服を見ているのに筋肉がわかる。私と違い正統派のゴリラって感じの人だ。あっ、でもゴリラって言うのは良くないかもな。かなりの男前だし。キリッとした目に黒髪の短髪がとても爽やかに見える。


「嬢ちゃんがルシェか」

「は、はい」

「俺はジェラールだ。あんたの事はミカから聞いている。邪竜を討伐したんだろう」

「はい」


 余計な事を言うと墓穴を掘りそうだし。これで良いか。


「どんなごろつきかと思ったら、こんな嬢ちゃんだったとはな。もっと早くあんたには会いに行きたかったが、刺激しない方が良さそうだったからな。挨拶が遅れた」


 刺激? なんだろう。心当たりがないのでじっと見ているとジェラールさんが続けた。


「あんた。じゃねぇな。あんたの家からまるごと気配が消えていた。どんな化け物が出て来るかと思ったら、嬢ちゃんが出てきたって所だな。まっ、俺達に好意的なら大歓迎だ。もし嬢ちゃんが気に入った男がいたら言ってくれ」

「気に入った男?」

「ここには婿探しに来たんじゃないのか? 嬢ちゃんくらいの年頃の娘は良く婿探しに見学に来るからな」

「む、むむむ婿? そんな浮ついた気持ちで来るほど暇じゃないです」

「なら、なんでこんなむさ苦しい所に来たんだ」


 いやいやいや。強くなりたい以外ないでしょ。


「強くなりに来ました。後村の修復のお手伝いもします!」

「強く? 竜を倒しても満足しないのか?」

「あれは引きわ、いや私の負けです」


 勝ったかもしれないが、ダメな所ばかり浮かぶ。


「竜を倒せるヤツなんて限られているのによく言えるな。あんたは強い。それ以上強くなって何をしたいんだ」


 強くなって、か。なんだろう。ヒャクに追い付きたいだけど、ヒャクの事は言わない方が良さそうだし。

 後は……やっぱり勇者かな。


「勇者になりたいです」


 その言葉にジェラールさんが豪快に笑う。幾ら偉い人でもそれは失礼だ。むかつくけど、なるべく笑顔でジェラールさんの言葉を待つ。


「ブハッ。ミカから聞いた通りだな。期待に応えられるかわからねぇが。うちで良ければ大歓迎だ」


 まじで? 超展開だ。名乗ってからフレンドリーなのは気になるが、余計な事を言うのはやめよう。


「団長さん。ありがとうございます」

「ジェラールで良い。騎士団に所属するのなら、団長でも構わないがな」


 騎士団に勝手に入ったらヒャクに怒られるのは間違いないな。それは良くない。


「そ、それは。……勝手に入ると婚約者が煩いので」

「婚約者か。まぁ。あんたを放っておくヤツはいねぇな」


 何か含んだ言い方だ。気になるが、ジェラールさんはそれ以上言わなかった。

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