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3.王道とマイナー

 最初の散歩から三日。相変わらず軟禁生活を送っていた。

 私の体は回復し、今は問題なく動けるようになっているが、過保護なのかヒャクは理由をつけて散歩について来ていた。


 今日もヒャクとの散歩を終え、部屋に戻ると押し入れの中にある武器を見る。七歳の時から十年くらいかけて集めた武器だ。いや、集めたというのは少し違うなダンジョンで拾った武器だ。

 ヒャクの話だと伝説の武器らしいが、私には扱えない武器たちだ。剣は切ったら切れ味が悪くなるし、エイムが下手すぎるので弓は扱えない。ナックルをつけるよりも素手で殴った方が戦いやすい。ゲームで言う装備が出来ないってきっとこうなんだろうな。


 唯一装備出来るのがこん棒だ。そのこん棒もこの前の戦いで壊れてしまったのか、気付いたらなくなってしまった。


「武器がない」


 こうなったら、魔法の杖(物理)か。こん棒だと思えば……いけるはずだ。きっと。ケド私が振り回すには太さが心許ない。やっぱ木を切るしかないか。良さげな木を切るか。


「ミュルグレスで切れるかな?」


 斧はないし、とりあえずヒャクが一番強いと言っていた剣でいっか。ミュルグレスを出すと壁に立てかける。木の棒を作りに行きたいけど、まだ外に出れないし……。早く体を治すしかないか。

 そのまま布団にダイブする。ベットがふわふわして気持ち良いな。


「ふぁー」


 欠伸が出てきた。寝たら早く治るかな。そう考えると少し眠くなって来る気がした。





「ルシェ~。玄関に来て下さい!」


 ん? 玄関? ん? あぁ寝てたんだ。ゆっくりと起き上がるとヒャクの呼ぶ声が聞こえてくる。どうしたんだろう。


「いま行きます!」


 ヒャクに返事をして玄関の方へ向かう。あれ? ヒャクの他に誰かいる? 誰だろう? 更に急ぐと、ミカちゃんが視界に入った。


「ミカ、ちゃん?」


 ミカちゃんは私の友達でとても可愛い子だ。ピンク色に金髪が混じったようなロングヘアー。瞳は紺と灰色の中間のようなちょっと薄い色で少しはかなげで可愛い。ヒロイン枠じゃないかって思うくらいだ。

 実際キーキャラだったんだけどね。ミカちゃんが死んだら私はこの世界に絶望し、魔王になる。魔王誕生のきっかけの人物だ。やっぱこの可愛い顔はモブじゃなかったんだな。


「ルシェ。生きてた。うちの近所の家が壊れていて」


 ミカちゃんは私が視界に入ると突進するように近づき、そのまま抱きつく。いい匂いして来そうって違う。ミカちゃん家の近所が壊れた。確実に邪竜の光線だ。


「私の家の近くに血の跡が」


 あっ、それ私の血だな。やばい。これは怒られるな。まずは謝ろう。反省はしている。もちろん対策も考えている。もっと強くなる。これに限る。


「ミカちゃん。ごめん。次はもっと」

「だから、だから。ルシェが死んじゃってたらって」

「えっ?」


 私が死んだら? ってそうだよね。普通なら村人が竜と戦うなんてあり得ない。

 倒せたので反省点ばかり考えてしまったが、そもそもギリギリだった。私は辛うじて生き残れたんだ。


「ジェラールさんが何の気配もないって言っていて、それでもルシェが見つかるまで信じないといけないと」

「大丈夫。ほら、生きてる。えーっとほら。足があるよ」


 ジェラールさんが誰か知らないが、私を勝手に殺すな。会うことはないだろうが、会ったら文句言おう。ルシェは生きている。ちゃんと足もある。


「ルシェ。そんなバカな事言っている場合じゃないでしょ! 私がどんなに、どんなに」


 あっ。ミカちゃんが泣きそう。泣かないで。何か言おうと考えるが、良い感じの事なんて思い浮かばない。


「ごめんね。心配かけちゃった。その、もう大丈夫。ほら回復してるから」

「回復? やっぱり、あの血は?」

「ええ、あれは全てルシェの血ですよ。魔物はそんな綺麗な色をしてませんからね」


 後ろからヒャクの声が聞こえた。ミカちゃんは私から離れ、ヒャクに向けて頭を思い切り下げる。そういや、ヒャクはこの村の神様だ。


「安心して下さい。僕が看病しています」


 僕がと言う部分が強調されている気がする。なんだこの婚約者ヅラ。


「神様。ルシェをありがとうございました」

「いえ。ルシェは僕の伴侶ですから」

「婚約者! です!」


 隙あらばだな。簡単に言質なんて取らせないぞ。否定するように言うが、ミカちゃんは面白そうに私を見る。やめて全く面白くないよ。


「ルシェの婚約者?」

「ええ。まだ婚約者ですが、僕が結婚に一番近いです」


 なんだ結婚に一番近いって。そもそも私と結婚したいと宣う物好きはヒャクしかいない。近いも何もオンリーワンだ。


「ミカちゃん。ただの婚約者だから」

「ただのって、婚約者だよ。ルシェ。おめでとう」


 嬉しそうに笑うミカちゃんを見ていると否定し辛くなる。こうやって外堀って埋められるのか……。



 ***



 ヒャクとの結婚は否定できたが、私の保護者認定されてしまった。確かに婚約者よりも母親に近いけどさ。

 このままだと良くないな。ホントどうしよ。とりあえずヒャクに結婚しないと言っとこ。ミカちゃんを見送り、居間へ戻ろうとするヒャクに声をかける。


「ヒャク」

「ルシェ、どうされましたか?」

「外堀を埋めても結婚する気はないですからね」


 ここはびっしりきっちり言わせてもらう。


「ルシェ?」

「ミカちゃんに協力して貰おうとしてもムダですからね」

「ミカに? ミカは協力しませんよ」

「え?」


 なら、なんでミカちゃんにあんな事を言ったんだ? 訳がわからない。そのままじっと見つめているとヒャクが拗ねたような表情に変わる。


「あなたとミカは結ばれる運命と勇者が言っていたんですよ」

「運命?」

「王道かぷと呼ばれているそうです」


 そういうことか! 確かに魔王わたしにとってミカちゃんはキーキャラだけど。そう見えるってことか。それでも拡大解釈しすぎだ! 勇者め。ヒャクに変な事を吹き込みやがって。いつかあったら文句言ってやる。

 って……ならさっきのはミカちゃんに牽制していたって事? ミカちゃんにしても良い迷惑だ。


「ミカちゃんは大切な友達だけど結婚したいとは思ったことはないです。なのでそういう目で見るのはやめて下さい」


 自分は正妻でミカちゃんが側室。以前言っていたセリフがフラグになっていたとは知りたくなかった。

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