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1.人狼ゲームの魔王様

 私はルシェ。どうやら魔王らしい。急にあなたは魔王ですと言われたばかりなので、自覚はないが。

 前世、人狼ゲームで人狼に選ばれた時と一緒だな。


 そうそう、私には前世の記憶がある。

 七歳くらいからここがどんな世界か調べ始めていたが、わかったのは先週。しかもヒャク……ーー神様に聞いてからだ。

 ヒャクも勇者から聞いたので、詳しいストーリーはわからず、結局は私が魔王と言うくらいだ。

 あと昨日邪悪なボスも倒した

 そっか……まだヒャクが来て一週間しかってないんだ。一週間でボスクリアってRTAもびっくりだよな。プロローグでボスにラスボスをぶつけるって中々ない攻略だな。ってかバグ技だ。

 ただ、ゲームクリアはまだ出来ていない。


「後は中ボスを退治してゲームクリアか。ボスよりも」

「ルシェ。僕と結婚してゲームクリアですよ」

「ひゃ、ひゃひゃひゃく? な、なななんで。エスパー?」

「途中から口に出ていましたよ」


 突然声をかけるのはやめてほしい。そっと声の方を見るとヒャクはいつものようにふわふわと笑っていた。うわっ。なんだその余裕。相変わらず何を考えているのかわからないな。


 神様だからと余裕ぶっこいてるのか。

 顔良し、料理良し、タイムリープ持ちで勝ち組に所属しそうな神様だ。

 性格は……とても残念だ。ただ性格は過去に出会った自称勇者の転生オタクからの入れ知恵もあるから不可抗力ってのも……ってそれも考えてはいけない。


 残念な性格が許されるんじゃないかって思うくらい顔が良いからな。その顔で村の女の子達の心を一瞬で奪ったほどだ。

 透明感のある白い肌。緑……いや、グレイのような少し薄い髪色のゆるふわヘアー。髪と同じ色の瞳は少し大きいからか私よりも年下に見える。ケド背や体格はなんとなく大人なんだよな。謎の美青年……かな? でも美少年ではないな。とりあえずイケメンだな。そうだな。フリフリの可愛らしいエプロンをあざとく着こなす中性的なイケメンだ、よね? とりあえず顔が綺麗で、そして料理が上手だ。


 そんな彼は未来の魔王である私を倒すべくハニートラップにかけていた。だが神様故に人の口説き方はわからない。そこで勇者(オタク)から得たギャルゲー知識で私を落とそうとした。

 ヒャク曰く包容力のあるお姉さんだが、ヤンデレ属性の高いヘンタイになっていたので、私は辛うじて心ときめくことはなく致命傷は逃れられた。胃袋をちょっとだけ掴まれただけだ。ということにしないとやばい。色々。今は。

 普通が一番と言ったら、ほどよい距離を取ってくれて、私の話をニコニコ聞いてくれる聞き上手。竜との戦いでまだ歩くこともおぼつかない私に快く肩を貸してくれるし、手を怪我しているからとご飯を食べさせてくれる。しかも猫舌対策でほどよく冷ましてくれるお気遣いの紳士。

 料理はめちゃんこ美味しい。……やばい長所しか思い浮かばない。けどこんな完璧神様なんだ。ときめくなって方がおかしい。油断しているとうっかり惚れてしまいそうになる。とても危険な神様だ。


 ってか、なんでヒャクはまだ私を口説いているんだろう? ヒャクの敵である邪竜ボスは私と共闘して倒した。もう私といる理由はない、はずだ。……やっぱ。私が魔王だからだからかな。

 私は今のところなんの哲もない村人だが、親友のミカちゃんが殺されると闇落ちして魔王になると聞いている。

 ってことはまだ魔王になる可能性はある。


「結婚はないですよ。きっと最後は神様が魔王を殺して終わりますよ」

「ルシェを僕はどちらかというと普通ですので、そういった趣味は」


 ヒャクは恥ずかしそうに視線を外す。そういった趣味。なんかえっちな事を想像しているのはわかる。勇者(オタク)から呪いのように付与された特殊性癖は今日もキレッキレだ。

 勇者め。お前のせいでこの神は私の範疇を超えた話をしてくるぞ。


「いや。普通ないですから! 勇者の知識は辞めて下さい。私も普通! ノーマル。変態はお断り」

「それでしたら、なんで僕がルシェを殺すんですか」


 魔王だからでしょ? そもそもなんで私がエロい話している前提で話すの? 勇者が一般的な人間と思わないで欲しい。


「魔王になるからですよ! 闇堕ちだよ。闇堕ち! ……きっとそうなったらもうそいつはルシェじゃない。だからいなくなった方が私も世界も平穏です」

「ふふ。どんな姿になってもルシェはルシェですよ。それにルシェの前世では醜くなった獣は愛する者のキスで戻るという迷信がありますし、試してみる価値は」

「ないです。遠慮します」


 それで元に戻ったら、私は絶対ヒャクに惚れる。それは良くない。


「それでしたら、魔王にならないでくださいね」


 ヒャクはそう言いながらふわりと笑った。なんとなくどこか事務的な言い方であっさりしている。やっぱそうだ。ヒャクは私に対して婚約を迫る割に、どこか淡泊だ。


「わかってますよ」

「それなのにもし魔王になったらキス、しますからね」

「はっ?」

「そして元に戻ったルシェが僕にプロポーズするんですよ。素敵ですね」

「そんな事ないから!」


 あっ。そうだ。ヒャクは魔王になるなと言っているがちゅうしないとは言っていない。この神はこの手口で私と婚約したんだった。侮れない。

 元に戻ったら、僕が忠告したのに勝手に魔王になったのはルシェなんですよ。とかのたまいそうだ。そこでお前がちゅうしたんだろ。なんて言ってしまったら、責任取りますよとか言いかねない。よし、お口にチャックだ。


「僕の唇を奪うんですよ。ちゃんと責任を取って下さいね」


 えっ? こっちに責任発生するの? ん? 元に戻してあげたんですからね。じゃないんだ。どっちにしろ闇堕ちがさらに危険になったのは間違いない。


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