第7話 同盟
俺も学生なので、更新頻度が遅れる可能性があります。ご了承を。
というのが、何時間前だろうか。
もしくは何日前?
わからない。
俺は全身凝まくっている体を起こす。周りを見回すと、5m四方くらいの檻の中にいるようだ。俺は拘束などは全くされておらず、自由だ。ただ、俺の覚えたての魔法で、檻を破壊しようとするが、やはり不可能だ。
寝るか。
寝るにしても床が硬い。寝れるだろうか。
というか、自分の今置かれている状況を思い出す。
ナチュラルに忘れていた。
最悪のそのまま死亡パターンは免れたようだ。
えっと……確か、魔法の練習をしていたら、ドラゴンに乗った騎士が現れて、サタンがガードしてくれたが、俺は逃げ出して、そしたら__
「先程はすまなかった。」
思考を巡らせていると、檻の外から女のものか男のものかわからない声が響く。振り返ると記憶の中に出てきた騎士だった。堅っ苦しい鎧を着ている。本当に男か女か判断がつかない。金属質で、機械っぽい。ボイスチェンジャーでも使ってるのか。と問いたくなるほどには。
ただ、今発せられた言葉は謝っているように聞こえた。
「無礼をお詫び申し上げる。すまなかった。」
二度謝られた。どういう状況だ…?言動から察するに、俺の潔白は証明された…ということだろうか。なぜ?
「貴殿は今、困惑しておられるだろう。それもそうだ。済まない。私の方から順を追って説明させて頂く。
名乗り遅れたが、私は地球人の貴殿から見たら、“宇宙人”という定義になる、惑星“サンドネレラ”から派遣された。名はイスタム・ブルーグと言う。」
名乗りながら、鎧の顔を覆っている部分を取っていく。そこには、美しき美貌が隠れていた。
ウェーブを描く薄茶色の髪、何一つ文句のつけようのない整った顔立ち、そして男諸君(特に童貞)が目に行ってしまうところもめちゃくちゃだ。
華奢な体つきであのドラゴンを操るとは、到底考えにくい。
サンドネレラ……という惑星は少なくとも俺の記憶にはない。幼い頃などに聞いていたかもしれないが……が、何故か知っているような、既視感に囚われる。
だが、それは今は関係あるまい、眼の前の騎士の話を聞いたほうがいいだろう。
視線を目の前の騎士に向ける。
「あ、こんにちは。イスタム…さん。あの、僕、記憶が正しければ貴方に殺されたと思うんですが……」
俺が一番の疑問であった、ことをイスタムという騎士に投げかける。しかし、騎士の答えは簡潔だった。
「ああ、それは誠に申し訳ないと思っている。悪魔である、サタナエルが近くにいたこともあり、反射的に攻撃を開始していたのだ。ティアナ様が諭してくれなかったら、罪なき貴殿をころしてしまうところだった。」
凛とした声音ではっきりと語る。ティアナ……は、サンドネレラで、神として崇められているのだろうか。
「そして、僕の誤解は解けたんですか?」
「ああ、無礼にも程があると重々承知の上だが、記憶を可視化する術式を使用させてもらった。そして、上様に報告したところ、問題ないというふうになったのだ。そこで、僧侶に手を貸してもらい、蘇生させたのだ。」
少し、背筋がゾワッと粟立った。流石に、何もしていないとは言え、記憶を覗かれるのは、少し抵抗がある。
しかも俺は一回死んだ。という事実が俺の体をどんどん凍りつかせているようだった。
「なら、なんで僕は檻の中にいるんです?」
檻の向こう側にいる騎士に問う。
騎士は少し申し訳無さそうな表情をした後、
「…それは、貴殿と、協力を結びたいからだ。」
「協力?」
俺はオウム返しのように反復して言う。
つまり、俺と同盟を組むということだろうか。何をどうしたら殺されかけた相手と同盟を組まなければならないのだろうか。
理解に困る。
「……私達の惑星、サンドネレラでも、勢力が2つ存在するのだ。侵略勢と、我々、防衛勢。私は防衛勢だ。
私が勘違いしたというのが、貴方が地球人なのにもかかわらず、侵略勢の後押しをしている…というふうに密告があってな…出動したというわけなのだが、デマだったのだ。本当に申し訳ない。」
深々と頭を下げている様子に、悪意などは少しも感じることができない。
どうするか慎重に動くべきだ。
同盟を組んでもいいが、そうしたらハイリスクだ。死ぬリスクというものもあるはある。
だが……
「謝らなくていいですよ。もう、謝意は受け取りましたから。それより、同盟を組みましょう。」
「ほ、本当か!?」
「但し、戦争が終わったら、地球とあなた方と交流をしたいのです。」
あちらの世界と交流を続けていれば、ガチャスキルとかも、無くならないだろう。
それにより、神様達としばらく一緒に居れる。
「も、もちろんだ!喜んで引き受けよう!やった!」
こうやって無邪気に喜んでいるところは女という感じだな。
「なら、同盟成立ですね、ここを開けてもらっても?」
「あ、ああ。済まない。そこはどんな攻撃等も吸収し、耐久力に変える事ができる檻なのだ。侵略側に貴殿を殺されたら水の泡だから、入ってもらっていたのだ。」
そこで俺はホッとした。俺の安全を憂いてくれたのか。
地球人にとっては檻はなんか悪いことをしたときに捕らえるための道具という認識が強いが、サンドネレラでは違うのかもしれない。
そして、俺は長い通路を歩いた後、地上に出た。
サンドネレラにいるのだと思っていたら、地球だった。空間転移魔法でも使ったのだろうか。
「まず、作戦会議を行おうと思っている。だが、流石に今から向かうのも貴殿の体に良くないだろう。しばらく休んでくれあと、何かあった時用にこれを渡しておく。」
どこから取り出したのだろうか、手には貝が握られていた。
「それは思考共有のときに使える、法螺貝だ。伝えたいことと、それを送りたい相手を頭で思い浮かべながら、法螺貝を吹くと、相手にその伝えたい事が伝わる。送る相手も指定できる。」
結構巨大な法螺貝を手荷物。ずっしりと重く、落としそうになるが、踏ん張る。
「わかりました」
「ああ、よろしく頼む。」
時刻を確認したあと、俺は【空間歩行】を発動させた。
空間が黒く歪む。巨大な穴が出現するまでには0.1秒も要することはなかった。
その中に入る。中はガラス張りの板で歩くことができる。そして光が見えた方に歩くと、マンションに着くはずだ。
だが、なにか、いやな予感がする。
なんというか、胸騒ぎと言うか、胸が痛いと言うか、…
気づいたら俺は走っていた。全力で。
なぜかはわからない。俺もわからない。だが、これだけはわかる。走らなければ、何かが起きている__!
「っ!?」
遠くの光の奥に火の粉が見えた。
俺は更に急いだ。
出口に到達した。そのまま勢いで飛び越える。
出た俺の視界に入ったのは、
まるであの夢のような
ゴブリンの集団、オークにイノシシのような魔物、ドラゴンに熊のような魔物……
混沌とした空間の中心にいたのは……
残酷注意




