雪の中、大好きな人と迎える新年
「うぅ〜。寒いですね、先輩」
「雪まで降って来たな……」
ゴーン、ゴーン、ゴーン。
除夜の鐘が鳴り響く中、私たちは手を繋いで歩いていた。
今年のクリスマスイブに付き合い始めたばかりの私と先輩。私たちは今、初詣のためにとある神社へやって来ている。
人生で一度はお正月デートをしてみたいとずっとずっと思っていたのだ。
今まで年末年始は家族と帰省するだけだったので、好きな人と過ごせるのは楽しい。
寒いのを我慢してせっかく着てきた朱色の着物を褒めてもらえないのは残念だが、先輩は不器用な人なので気にしない。
先輩の手の温もりを感じられるだけで幸せだった。
「なんだ、ニヨニヨして」
「なんでもないです」
私はふふふ、と笑う。
先輩は怪訝そうにしていたがすぐに興味を失ったのか、「そうか」とだけ言って、私の手を引いて参拝者の波の中へ入っていった。
※※※
ゴーン、ゴーン。
ゴーン、ゴーン、ゴーン。
雪がさらに強くなり、冷たい風が吹き抜ける。
私は先輩の手をさらに強く握りしめた。
「除夜の鐘、100回目ですよ。もうすぐ年が明けますね」
「お前、いちいち数えてたのか」
「はい」
ゴーン、ゴーーン。
108回目の除夜の鐘の音が境内に鳴り響いた。
その瞬間、年が明けた。私と先輩が二人きりで迎える、初めての新年が幕を開ける。
荒れ狂う雪がまるで紙吹雪のようで、私たちを祝福しているかのように思えた。
「Happy New Yearです、先輩!」
「新年早々お前は元気だな」
そう言って笑う先輩は、空いている方で私の頭を撫でて、「今年もよろしくな」と小声で言ってくれた。
それだけで私は嬉しくなってしまい、思わず先輩に抱き着いたのだった。
今年はきっといいことがありそうだ。