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第1話

 俺は双子ではないが、同い年の妹がいる。


 俺は元々、母の実家で母と祖母と三人で暮らしていて、生活はお世辞にも余裕あると言えるものではなかった。若くして俺を産んだ母は夜職で生計を立てていたため、俺の面倒を見てくれたのはほとんど祖母だった。


 母が注いでくれなかった愛情を代わりに埋めてくれた俺の祖母はとても厳しいが、感謝こそすれ嫌いになったことは一度もなかった。ほとんど俺の面倒を見なかった母のことも、別に嫌っているというわけではない。ただお互いに無関心なだけだ。


 その生活に変化が訪れたのは、今から一年半ほど前のことだった。ある日突然、母親に連れ出され、見るからに高級そうな飲食店にやってきた。


 その店で俺たちを待っていたのが、今の義父と義妹だった。母と義父は仕事の関係で知り合ったらしく(おそらく義父が母の働いている店の客だったのだろう)、お互い片親ということで意気投合し、何度か会ううちに惹かれあったということらしい。


 元妻に捨てられて、仕事一本で頑張ってきたという義父からすれば、年頃の娘のことはわからないから、同じ女性が見てくれた方が良いだろうということ。母からすれば、生活が安定して仕事を辞めることができるという、お互いに利益のある結婚だったのだ。

 

 俺たち子どもに拒否権なんてものは当然存在しなかった。


 これから家族になる相手だからと思い、出来るだけ愛想良く挨拶しようとした。しかし、普段学校で伊達に陰キャやってない俺のあいさつは、「初めまして、柊真しゅうまと言います。これからよろしくお願いします」という淡々とした自己紹介になってしまった。


夏奈なつなです。よろしくお願いします」


 俺と似たように前髪で顔を隠す義妹は、もっとそっけない自己紹介をした。


 実際に俺たち家族が一緒に暮らすことになったのは、俺と夏奈が高校に合格してからだった。


 新しい生活は俺にとって居心地の良いものではなかった。母は義父に媚を売るために、常に義妹を優先した。まあ元々俺があまり母に好かれていないのはわかっていたし、たまに早く帰宅する義父が優しくしてくれていたので今更それはどうでも良かったのだ。しかし、今まで頼ってきた祖母を実家に一人残して自分はいい暮らしをしようとしていることは許せなかった。


 そしてもう一つ問題を挙げるとすれば、義妹の存在だ。同じ学校に通ってはいるものの、お互いに陰キャということもあり学校では特に会話をすることもなかった。


 問題だったのは、年頃の男女が同じ家で暮らしているというその事実。互いに相手のことを何も知らないので、顔を合わせるのがただただ気まずい。常にクラスメートが近くにいるという状況は、自分の家にいるはずなのに体が休まらないばかりか、ただ居心地を悪くさせる要因だった。


 そんな時、休日ですることもなく暇を持て余していた俺は、祖母から突然呼び出されることになった。


 幼い頃からよく祖母に連れていって貰っていた喫茶「ラニ」は、今の家よりもどんな場所よりも心落ち着く場所だった。


 俺は祖母が体を悪くしたことを知っていたので、最後に店へ連れきてくれたのだと思っていた。だが、実際には俺をアルバイトとして雇おうという目的があった。


 鈴さんと挨拶を交わし、まだやるとも言ってないのにそのまま仕事内容をレクチャーされた。


 その翌週から、ワックスで髪をセットしてメガネを外してコンタクトをつけさせられ、早速接客として立たされることになった。そして、緊張から半ばヤケになって営業スマイルとワントーン高い声を張り付けた存瀬柊真の裏の顔、「アルマ」が誕生したというわけだ。


 名前の由来は単調すぎて説明するのは恥ずかしいので察してくれると助かる。



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