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008 思惑の蠢動

「それでは失礼します。」


 次の日の朝、ハラルトはレイが部屋から出ていくのを見送った。


「つい先日までレベル1だったとは思えないな。」


 レイからもらった紙を見ながらハラルトはため息まじりに呆れたような声を漏らす。


「嘘をつくにしてもこのステータスは突拍子がなさすぎます。」


 ゲルトが姿を見せながら意見を述べた。


「ゲルトはまだレイを疑っているのかい?」


「それが仕事ですので。」


「そうだね。助かっているよ。」


 ハラルトはゲルトに礼を言いながら再度紙に目を通す。


「レイが快く応じてくれてよかったよ。」




 ――――――――――――――――




――時は遡り、レイが初めて魔物の討伐を行う日の朝。


 レイは訓練場にいく前にハラルトに呼び出されていた。


「おはようレイ。今日から訓練が始まるらしいね。」


「はい。紙には魔物の討伐と反省会しか予定が書かれていませんでしたが……」


「ははっ。思い切りがいいなあ。まあ、ダニエルとアントンの部隊がついていれば大丈夫だろう。……この後訓練があるのならあまり長居させても悪いね。率直に用件を話そう。私はレイの戦力を正確に把握しておきたいと考えているんだ。」


「はあ……」


「そのためにレイのステータスを私と他数名にだけ公開してほしい。」


「ステータスを……ですか。」


 ハラルトの要請にレイは内心驚いていた。

 ハラルトにはレベルやスキルの話もしているので今更ではあるのだが、レイの鑑定能力の重要性からも分かる通り、他人に自分のステータスを公開することはリスクが伴う行為だと認識していたからだ。


「警戒させてしまったかな。軍の者たちは戦力把握を目的として軍内部でのステータスの公開が義務になっているけど、客将はステータスの公開が義務ではないからね。というより軍以外でステータスを公開する職業自体そう多くはない。」


「では、なぜ……」


「レイは自分がどの程度の魔物なら危険なく倒せるか、把握しているかい?」


「いえ、まったくわからないです。」


「この世界に来て日が浅いから当然だね。ステータスの公開をお願いしたいのは、レイのステータスに応じて倒す魔物の等級を決めたいからなんだ。」


「なるほど……」


「ちなみにステータスを公開してほしい人数は5人。1人目は私。2人目は軍の大将であるベルンハルト。3人目は偵察隊の最高責任者であるゲルト。あとの2名はこれからレイをサポートしてくれるダニエルとアントンだ。」


 ベルンハルトとはまだ面識がないものの、軍の大将という肩書きであればステータスの公開も納得できると考えたレイは承諾の意を示した。


「わかりました。そういうことでしたら協力させていただきます。」


「ありがとう。私を含めた5人は【契約】のスキルでいかなる手段でもレイのステータスを他者に伝えることができないようにするから安心してくれ。」


「そんなすごいスキルがあるんですね。」


「ああ、約束事をする際には便利なスキルだよ。契約を破ろうとすると神経を焼き切るような痛みが体全体に走るようになっていて、契約違反に該当する行為を続けると死に至るほど強力なスキルだ。」


「お、恐ろしいスキルですね……契約は一生続くんですか?」


「いや、契約の代表者が死ねば契約が解除されるよ。ちなみに今回の契約は私が代表者になっているから私が死ぬまで契約は続くことになるね。……他にも契約を解除できる方法があるにはあるんだけど、少なくとも王国内でそれを実現できる人間はいないね。」


「なるほど……」


「よし。じゃあ訓練がある日の朝にでもこの部屋に寄ってステータスを書き写した紙を提出してくれるかな。」


「はい。早速明日の朝から提出しに伺います。」


「よろしく。あと、討伐する魔物のランクについては提出してもらったステータスを見てから判断することになるからね。その辺は現場担当者のダニエルとアントンから指示があるだろう。」


「わかりました。ダニエルさんとアントンさんの指示に従います。」


 こうしてレイは、訓練の日の朝はハラルトにステータスを書いた紙を持っていくことになった。




 ――――――――――――――――




 レイは約束通り訓練の日の朝に、自身のステータスを書いた紙をハラルトに持ってきていたのだった。


「このステータスを契約した他のメンバーにも伝えてくれ。」


「はっ。」


 ゲルトがいなくなった部屋でハラルトは呟く。


「レイが大森林に現れてわずか数日。本人の話からするとその数日でレベルが20以上上がったことになる。」


 ハラルトは改めてレイのレベルの上がり幅について考察を始めた。


「まだ軍の中では下から数えた方が早いが、このペースでレベルが上がるのならば、ひと月後にはどうなっているんだ?レイには単独で動いてもらったほうがいいか?いや、部隊を率いてもらった方が……うーん……」


 ハラルトはこの後もレイという戦力の運用に頭を悩ませるのだった。





 ――――――――――――――――




 この時バルカディア王国の首都にある王城では、とある思惑が動き出していた。


「宰相よ。辺境伯が客将を迎えたらしいな。」


「はっ!今代の辺境伯が客将を迎えたのは初めてのことです。」


「何者だ?」


「それがまったく情報が入ってこないのです。分かっているのは子どものような容姿ということだけでして……」


「なんだと?情報の統制でもされているのか?」


「そのようです。辺境伯が何か企んでいる可能性があります。探りを入れますか?」


「うむ、任せる。あの計画も進めておけよ。」


「もちろんです。他国との交渉も問題なく進んでおります。」


「ならば良い。ふん、あやつは力を持ちすぎた。自業自得というものだな。」


「まったくです。」


「ほっほっほ」


「ふぁっふぁっふぁ」


 歪な笑顔を浮かべる王と宰相。

 水面下で、王国を揺るがす企みが蠢動を始めていた。

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