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007 ガリア大森林へ

 次の日の朝、レイは訓練場にいた。

 既にダニエルとアントンの部隊が揃っている。


「じゃあ大森林いくか!」


 ダニエルがおもむろに告げた。


「本当にいくんですか!?」


「昨日渡した紙に書いておいただろう?」


 確かに昨日アントンから渡された紙を見たら訓練として大森林にいくとは書いてあったが……


「これ、『大森林で魔物を倒す』、『反省会』しか書かれてなかったんですけど……」


「おう!訓練で身に付く力もあるけどな。ステータスをあげるには魔物倒すのが一番効率いいんだよ。」


「レイの場合は特にな……安心しろ。レイは絶対に俺たちが守るからよ!」


 ダニエルが言いたいことはすぐにわかった。

 レイが持つ【早熟】のスキルは魔物を倒すことで3倍の経験値を得ることができる。

 だからこそ魔物を倒すことを勧めているのだろう。


 ダニエルがそっと身を寄せてきた。


「ちなみにレイのスキルについては、うまいこと誤魔化してるからよ。」


「っ!!ありがとうございます。」


 ハラルトから箝口令が敷かれたこともあり、ダニエルとアントンは部隊の人たちにレイのスキルについては隠してくれていたのだ。


「みなさん!今日からよろしくお願いします!」


「「「「おおっ!」」」」


 先日、部隊の人たちとは歓迎会という名目で交流していたこともあり、既にレイに対しては歓迎ムードだった。


「よしっ!じゃあ改めて大森林にいくぞ!」


「はいっ!」


 こうして一行は大森林へと足を伸ばした。




 ――――――――――――――――




「総員、配置につけ。」


「「「「「はっ!」」」」」


 森に入るとダニエルが号令をかけ、部隊の者たちはあらかじめ伝えられていた通り、レイを囲むような陣形をとった。


「レイ、最初は俺たちが魔物を倒して見せるから、戦闘には参加しなくていいぞ。」


「わかりました。」


 部隊の者たちはレイの周りを囲み、ダニエルとアントンがレイの隣に立つ。




 しばらく歩いていると、ダニエルの部隊のひとりが声をあげた。


「12時方向!シュタルクアッフェ2体、接敵します!」


 程なくして木の上に手の長いサルのような魔物が2体現れ、こちらを威嚇してきた。


「「ギァッッ!!」」


 全員が声に反応して戦闘態勢をとる中でレイはとっさに右側の魔物に対して鑑定を行った。


(か、鑑定!)



 ――――――――――――――――


【種 族】 シュタルクアッフェ

【レベル】 36

【等 級】 C


【体 力】 6,733 / 6,733

【魔 力】 1,095 / 1,095

【攻撃力】 5,689

【防御力】 3,691

【速 さ】 3,694

【知 力】 1,194

【スキル】

剛力:Lv.2


 ――――――――――――――――



(強い!)


 レイが敵のステータスをみている間に状況は動き出す。


「演習通りに動け!」


 ダニエルが声をかけると同時に隊員たちは動き始めていた。

 最も魔物に近いふたりがそれぞれ魔物にナイフを投擲する。

 一体は胴体に命中するも、もう一体は避けると同時にナイフを投げた隊員に飛びついてきた。

 しかし――


「雷槍!!」


「ギャッッ!」


 別の隊員が放った、槍を象ったような雷に貫かれ叫び声を上げながら一瞬動きが止まる。

 その瞬間、魔物に向かってひとりの隊員が剣を構えながら走り寄った。


「はっ!!」


 魔物が間合いに入ると同時に、袈裟斬りで魔物の首を落とした。


「す、すごい……」


 流れるような連携にレイは思わず感嘆の声を漏らした。


「ギギャッ!」


 声のする方に顔を向けると、もう一体の魔物も倒れて動かなくなっていた。

 

「警戒を怠るな!魔物を回収したらすぐに元の陣形に戻れ!」


 魔物を倒したばかりだというのに、アントンは気を緩めることなく指示を出す。

 ダニエルやアントンの普段と違った真剣な様子を見てレイは気を引き締めた。


(そうだ……ちょっとでも油断したら死ぬかもしれないんだ。気を引き締めないと。)



 それから何度かの魔物との戦闘を終えると、ダニエルがレイに話しかけてきた。


「レイ、そろそろやってみるか?」


 何が、とは聞かない。既にレイは覚悟を決めていた。


「はい。やらせてください。」


「わかった。俺たちが弱らせた後に合図を出すからその時に火炎球を使え。できるか?」


「……やってみます。」


「何回失敗してもいい。そのために俺たちがいるんだからな。」


 気負った様子で返事をするレイにアントンが安心させるように微笑んだ。


「あっ、そうだ。火炎球だけどな、もう少し威力を抑えられるか?この前の訓練場での威力だと魔力がもったいないからな。」


 ダニエルが思い出したようにレイに忠告した。


「威力を抑えるというのはどうすれば良いのでしょう?」


「ああ、厳密な操作は難しいんだけどな。大雑把な操作なら、威力を抑えたいとそう思うだけで大丈夫だ。」


「思うだけ……」


 確かに、訓練場では自分が持つ全力を出すイメージしながら火炎球を使った。

 その結果あのような爆発が起こったのだから自分の考えがスキルの威力に影響を与えるのは本当のことなのだろう。


「来ましたっ!3時方向!シュタルクアッフェ3体!」


「真ん中の1体を残して他は倒せ!レイ準備しておけよっ!」


 ダニエルが隊員とレイに指示を飛ばす。

 隊員たちは先ほどと同じように魔物を相手取り、危うげなく倒していく。

 魔物は瞬く間に残り1体となった。


「魔物の注意を引きつけろっ!合図を出したら退避しろよ!」


 アントンの指示に反応して隊員たちがナイフや魔法を軽く当てて魔物の注意を引く。


「レイ、いけるな?」


「いけます!!」


 レイの意志を確認したダニエルは隊員たちに合図を出す。


「総員退避!!」



バッ



(力を込めすぎないように……!)


 全員がその場から飛び退くのを確認したレイは、威力を出しすぎないように意識しながらスキルの名を口にした。


「火炎球っ!」



ドオォォォォンッ!!



 火炎の球が魔物に当たり、小規模な爆発を起こし砂埃が舞う。

 レイの意識に沿うように、火炎球は訓練場の時とは規模も威力も小さいものだった。


(できたぞ!威力の調整!)


「レイ!油断するな!」


 アントンがレイに注意を促すのと同時、砂埃の中から体毛の焦げた魔物が姿を現した。


「やばっ!」


「ギァッッ!」


 魔物がレイに襲いかかってくる。レイは咄嗟にスキルを放った。


「火炎球っっ!」



ドッッッッガアアアアアアアアァァァァァン!!!!!



 今度は力を入れすぎてしまい大きな爆発を起こしてしまった。

 先ほどとは違い、油断せず構えるレイだったが……


『レベルアップしました。』


 レベルアップの機械音が響いたことで、魔物を倒すことができたのだと理解する。


「総員、周囲の警戒に努めろ。」


 ダニエルの声が響き、隊員たちは陣形を整える。

 そして、ダニエルとアントンはレイに歩み寄ってきた。


「油断してたのはいただけなかったが、なんとか倒せたようだな。」


「焦って威力の調整を間違えたのも今後の課題だ。」


「……はい。」


 レイは自身の至らなさに顔をうつむけた。


「とはいえシュタルクアッフェをスキル2発で倒すとはな……」


「ああ、威力は大したもんだ。」


 ふたりの励ましにレイはパッと顔を明るくした。


「ちなみに、今のでレベルは上がったのか?」


 ダニエルが顔を寄せ、声を潜めて尋ねてきた。


「はい、上がったみたいです。」


「そっか。やっぱあのスキルすげえな……」


 ダニエルは【早熟】のスキルの効果に改めて感嘆した。


「あと言い忘れていたが、自分への鑑定はここでは使わない方がいいぞ。目線でバレることもあるからな。」


「そうなんですね。わかりました。」


「よーし、どんどんいくぞ!」


 ダニエルが今度は周りにも聞こえるように発破をかけた。


「はい!」





――こうしてレイは部隊のサポートの元、次々と魔物を倒していった。





「お疲れさん!よく頑張ったな!」


「あ……ありがとう……ございまし……た。」


 レイたちは訓練場に戻ってきていたが、今まで大して運動もしていなかったレイにとって、魔物との連戦は心身を疲弊させていた。


「ボロボロだな。今日は反省会やめとくか。」


「す……すみません。」


 アントンは、レイの様子を見てこの後予定していた反省会という名の宴会の中止を提案してきた。

 レイは立っているのもやっとの状態だったので、この提案をありがたく受け入れた。


「部屋に戻ったら自分のステータスを確認しておけよ。」


「分かりました。」

 

「じゃあ今日は解散だ!」


「「「「「はっ!」」」」」


「はい!」


 こうして初日の訓練は終了した。




 ――――――――――――――――




 レイは自分の部屋に戻ってきて、ベッドに倒れ込んだ。


「あぁ……疲れた…………そうだステータス確認しないと」


 レイは身を起こして、自身を鑑定した。



 ――――――――――――――――


【名 前】 レイ

【種 族】 ヒューマン

【レベル】 11 ➡︎ 22


【体 力】 1,036 ➡︎ 824 / 1,953

【魔 力】 728 ➡︎ 57 / 1,191

【攻撃力】 572 ➡︎ 1,012

【防御力】 556 ➡︎ 914

【速 さ】 420 ➡︎ 680

【知 力】 552 ➡︎ 902

【固 有】

早熟:Lv.1 言語変換

【スキル】

鑑定:Lv.10 火炎球:Lv.1 NEW 剛力Lv.1

NEW 毒耐性:Lv.1


 ――――――――――――――――



「また一気にレベル上がったな。……あれ?名前がレイだけになってる。」


 レイは先日、ハラルトとの契約時に契約書に【レイ】とサインしたことが原因かと考えた。

 名前に関しては個人的に寂しい感情はあるものの特に困るわけではないため、すぐに気を取り直す。


「この世界だと【レイ】の方が都合がいいから別にいいけど少し寂しいな……おっ。スキルも新しいのがあるぞ。」


 レイはこの日、魔物を全部で10体ほど倒していた。

 そのため、レベルも大幅に上がりスキルも新たに獲得していた。



 ――――――――――――――――


剛力:Lv.1


常時発動型スキル

魔力消費なし


スキル【怪力】の上位スキル。

50%の攻撃力上昇に加え、スキルレベル × 5%の攻撃力を上昇させる。


 ――――――――――――――――


毒耐性:Lv.1


常時発動型スキル

魔力消費なし


スキルレベル以下の毒攻撃を無効化。

6級以下の毒物を無効化。


 ――――――――――――――――



 【剛力】は猿のような魔物のシュタルクアッフェから。

 【毒耐性】は蜂のような魔物のグバルトビーネから得たスキルだった。


「【剛力】の効果がすごいな。スキルレベル1で55%も攻撃力が上がるんだ……常時発動型?ってことは常に攻撃力が上昇している状態ってことか。しかも魔力消費なし……頼もしいスキルだ。」


 レイの認識通り、常時発動型スキルは使うことを意識しなくとも常にスキルの効果を享受できるスキルだ。

 常時発動型スキルの最も着目すべき点は、魔力を消費せずに利用できるスキルであることだった。


「【毒耐性】も常時発動型か。毒を無効化できるのはありがたいな。……よし、紙に書き写しておこう。」


 レイは表示されているステータスを書き写し終えると、ベッドに体を沈めた。


「ふぅー、明日もまた魔物討伐だ。今日はもう寝よう。」


 疲れていたこともあり、レイはすぐに寝息を立て始めたのだった。

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