015 元パーティメンバー
――2週間後、レイの部隊は訓練場に集まっていた。
「魔物に全然遭遇しませんでしたね。」
「ちょっと狩りすぎちゃったかな?」
アルの呟きにレイが応える。
ふたごが部隊に加わってからの2週間、ひとりひとりの役割が固定化され、魔物討伐ペースは格段に上がっていた。
レイの役割は強い魔物を弱らせたり、群れの数を減らしたりしながら他の部隊員へ誘導すること。
アル、ベル、リルの役割はレイが誘導した魔物を倒すこと。
この中で最も異色な役割を持っていたのはリリーだった。
役割は全部で3つ。
一つ目は、身体強化を使って魔物を倒すこと。
二つ目は、魔物の攻撃を守護結界で防ぐこと。
三つ目は、レイの指示があった場合に、倒し損ねた魔物へ治癒光を使って魔物を回復させることだった。
特に三つ目は、頑張って瀕死に追い込んだ魔物をリリー自身の手で回復させるのだ。
この瞬間、レイ以外の全員が絶望の表情を浮かべていた。
しかし、その結果リリーだけが全てのスキルレベルを3に上げることに成功していた。
他のメンバーのステータスも2週間前とは比べ物にならないほど向上している。
――――――――――――――――
【名 前】 レイ
【種 族】 ヒューマン
【レベル】 77
【体 力】 20,264 / 20,264
【魔 力】 14,184 / 14,184
【攻撃力】 19,771
【防御力】 15,456
【速 さ】 8,105
【知 力】 11,371
【固 有】
早熟:Lv.1 言語変換
【スキル】
鑑定:Lv.10 火炎球:Lv.4 豪風刃:Lv.3
麻痺針:Lv.3 剛力:Lv.2 毒耐性:Lv.2
金剛:Lv.2 危機感知:Lv.2 索敵:Lv.2
魔力吸収:Lv.2 土槍:Lv.2 投擲:Lv.2
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【名 前】 アルフレート・ベッカー
【種 族】 ヒューマン
【レベル】 34
【体 力】 1,782 / 1,782
【魔 力】 3,846 / 3,846
【攻撃力】 1,407
【防御力】 1,229
【速 さ】 1,764
【知 力】 2,792
【スキル】
雷槍:Lv.2 瞬脚:Lv.2
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【名 前】 リリー・フラウエン
【種 族】 ヒューマン
【レベル】 30
【体 力】 1,392 / 1,392
【魔 力】 4,628 / 4,628
【攻撃力】 997
【防御力】 1,055
【速 さ】 557
【知 力】 3,109
【スキル】
治癒光:Lv.3 守護結界:Lv.3
――――――――――――――――
【名 前】 ベル・ツェルネ
【種 族】 獣人
【レベル】 32
【体 力】 3,577 / 3,577
【魔 力】 1,091 / 1,091
【攻撃力】 2,725
【防御力】 1,931
【速 さ】 1,978
【知 力】 1,159
【固 有】
獣臨
【スキル】
怪力:Lv.2
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【名 前】 リル・ツェルネ
【種 族】 獣人
【レベル】 32
【体 力】 3,541 / 3,541
【魔 力】 1,120 / 1,120
【攻撃力】 2,713
【防御力】 1,929
【速 さ】 1,992
【知 力】 1,162
【固 有】
獣臨
【スキル】
怪力:Lv.2
――――――――――――――――
「毎日すごいペースで魔物を討伐していましたからね……」
リリーは疲れた様子で告げる。
「魔物……」
「少ない……」
ふたごはなぜかしょんぼりしていた。
ちなみに、奴隷身分のためレイの部隊員になる契約ができていなかったふたごだったが、後日ヨーゼフの奴隷館に行き奴隷身分からの解放を行っていた。
その時のヨーゼフの腰がやけに低く、申し訳なさそうにしていたのが印象的だった。
「しょうがない。今日は訓練を休みにしようか。」
訓練の休みを提案するレイにアルが疑問を呈した。
「部隊員のスカウトはよろしいのですか?」
「うーん。最近なかなか良い人材が見つからないんだよねー。」
毎日のように冒険者ギルドでの紹介や奴隷の見学に行っていたレイだったが、アルやリリー、ふたごほどの能力を持つ人材を発掘できないでいた。
「でしたら私は、他に人材を探す方法がないか街で調べてみます。」
「え?別に休んで良いのに……」
アルの休日返上発言に戸惑うレイ。
「問題ありません。私がやりたいだけですので。それに……」
「それに?」
「私はもう、休み方を忘れてしまいました……」
「そんなブラック企業の社員みたいな……」
レイは呆れた声を返したが、アルが入隊してからの2週間弱は全く休みなく、午前中は部隊員のスカウト。午後は魔物の討伐。
明らかにブラック企業のそれであった。
「ぶらっく?」
「きぎょう?」
「ああ、気にしなくて良いよ。」
ふたごが聴き慣れない言葉に反応するも、レイはそれ以上の追求を阻止した。
「じゃあアルは良いとして、ベルとリルはなにかやりたいことある?」
レイがふたごにやりたいことを聞いてみるとすぐに返答が返ってきた。
「串焼き」
「お腹いっぱい食べる」
「食べ歩きかー、いいね!どこかの仕事中毒の人と違って健康的な休みの過ごし方だ。」
「っ!?」
レイの「仕事中毒」という発言にアルは静かに傷つくのだった。
「まだお給料は出てないだろうから、これで好きなだけ食べると良いよ。」
レイは金貨を1枚ずつふたごに渡した。
「「おー。」」
ふたごは心なしかキラキラした目で手のひらの金貨を眺めた後、レイにお礼を告げた。
「「ありがとう。」」
「どういたしまして。それじゃあ早速行っておいで!」
ふたごは顔を見合わせて頷くと、軽やかに街の方へと走り去っていった。
「あとはリリーだけど……」
レイは一度言葉を区切りながらリリーに顔を向ける。
「少し付き合ってもらえるかな?」
「…………へ?」
レイの申し出にリリーは惚けた声を発した。
――――――――――――――――
レイとリリーは2人で街に来ていた。
「せっかくの休みにごめんね。」
「いえ、それは全然大丈夫ですけど……」
リリーは言外に用件を話すよう要求する。
「いやぁ。リリーに武器を買ってあげようと思ってさ。」
「私に武器を……ですか?」
「うん。魔物を倒すとき訓練用の剣を使ってもらってるでしょ?」
「……はい。私は攻撃系の魔法も適性がある武器もないので、今のままでも十分ですが……」
武器の適性がないリリーは高い武器を買っても使いこなせないため、武器を買うこと自体に消極的だった。
「それだと何か不測の事態があって、リリーがいざひとりで行動するってなった時に困るかと思ってさ。」
リリー以外のメンバーは各々が単独行動になっても状況を打破できるだけの力を有しているが、リリーはまだまだ戦闘技術が足りていない。
レイはそうした状況にリリーが陥ることを危惧しているのだった。
「そこまで考えてくださっていたんですね……ありがとうございます。」
リリーは自分のことをしっかり考えてくれていたレイに深く感謝した。
「いやいや、今まで気が付けなくて逆に申し訳ないよ。……ほら!武器屋さんに行こう!」
「はいっ!」
リリーの感謝を申し訳なく思ったレイは、空気を変えるかのように明るく声を発し、リリーもそれに明るく応えた。
――すると、そこに声をかけてくるものが現れた。
「おやぁ?もしかしてそこにいるのは、能無しリリーじゃないのかなぁ?」
まるで全身に絡みついてくるかのような気色の悪い声の主は、蛇のような細長い目をした青年だった。
レイは青年の発言に聞き捨てならない言葉があったものの、リリーの知り合いのようだったのでひとまずは様子を見ることにした。
「エリック……」
リリーは青年の名前を呟いた。
「エリックさんだろ?誰が能無しのお前を、この俺のパーティ【怒れる鷲】に入れてやったと思ってるんだ?」
口ぶりから察するに、目の前のエリックという青年はリリーが元いた冒険者パーティのリーダーであろう、とレイはあたりをつけた。
「そのパーティから私を追放したのもあなたでしょう。」
「おいおい、僻んでんじゃねえよ。低級ポーションで代用がきくような奴がこの俺のパーティで必要とされるわけがねえだろ。」
「……くっ!」
エリックの散々な言いように、リリーは咄嗟に反論することができなかった。
「……だがまあ、俺が間違ってたよ。」
「…………?」
エリックの突然の掌返しに困惑するリリー。
「しょぼい回復魔法でもないよりはマシってことに気付いたんだ。低級ポーションつっても銀貨1枚使うだろ?あれの出費が馬鹿にならなくてな。……だからリリー、お前をまた俺のパーティに入れてやるよ。」
「計算もできないんですか?私がパーティに戻ったら報酬が分割されるので、個々の取り分は今以上に減ることになるんですよ?」
エリックの血迷った発言に、リリーは挑発気味な返答を返した。
エリックは勿体ぶったように話を続ける。
「……俺はな、思ったんだよ。俺たちはいずれSランクの冒険者パーティになる。つまりそんなパーティに所属できること自体が最大の報酬ってわけだ。」
エリックは一度言葉を切り、まるで諭すかのようにリリーに問いかける。
「ここまで言えば後は分かるよな?」
「つまりは私にタダ働きをしろと?」
「話を聞いてたのか?俺のパーティに所属できることが対価だって言ってるじゃないか。」
話の通じないエリックにリリーが呆れていると、レイが会話に入ってきた。
「あのー……」
「ん?……なんだてめぇは。」
エリックはレイの存在に今気づいたかのような素振りを見せる。
「僕は辺境伯様に客将として雇われているレイと申します。立場的にはリリーの上司にあたります。」
「お前が客将で、リリーがその部下だと……?」
エリックはレイの発言を口に出して整理し――
「あっひゃっひゃっひゃっひゃっっ!!!」
――突然笑い始めた。
「何かおかしいことでもありましたか?」
大笑いするエリックにレイが尋ねる。
「ひゃっひゃっひゃ!はぁ、はぁ……。おかしいも何も、どんだけ頭がイカれてたらそんな嘘思いつくのかと思ってな。」
エリックは笑い疲れ、荒い息を吐きながらレイを嘘つき呼ばわりする。
「いえいえ、本当のことですよ?」
「ちっ……まだ言いやがるのか。そのネタはもう飽きたんだよ。」
エリックは笑みをおさめ、レイを睨んだ。
「僕があなたに言っておきたいのは一つだけです。リリーは大事な仲間ですので、あなたのパーティに戻すことはできません。」
「……もう良いよお前。」
シュンッ
そう言ってエリックは予告なく腰の剣を抜き、レイを真横から切り払った。
――しかし、そこにレイの姿はなかった。
「こんな街中で剣を抜くなんて何を考えているんですか?」
エリックの後ろから声が聞こえてくる。
シュッ
エリックはすぐに声が聞こえた方向に再度剣を振るう。
しかし、そこにも既にレイの姿はなかった。
「うーん。すぐに引き下がってくださる雰囲気ではないようですね。」
今度は真横から声が聞こえてきた。
ゆっくり横を見るとリリーの隣にレイが立っていた。
(こいつ……どんな手品使いやがった……)
エリックはレイが何をやったのか全く目で追えていなかった。
実際にはただ素早く移動しただけなのだが、エリックの目にはレイが瞬間移動したかのように映っていた
「それではこんなのはどうでしょう?」
エリックの混乱をよそに、レイは淡々と話を進めていく。
「あなたがリリーと決闘をして、リリーが勝ったら金輪際リリーに干渉しない。あなたが勝ったら、リリーはあなたのパーティ【イカれた鷲】に戻る。」
「【怒れる鷲】だっ!!このくそガキが、なめやがってっ!…………だが、まあいいだろう。その話乗ってやるよ。」
パーティ名を間違えられ怒るエリックだったが、リリーとの決闘の話には厭らしい笑みを浮かべながら乗ってきた。
「折角ならギルドの決闘制度を使おう。ギルドに立会人を頼めば【契約】スキルで相手に契約を遵守させることができるからなぁ。」
エリックはギルドの決闘制度を使うことを持ちかけてきた。
「それは良い!では早速ギルドに向かいましょう!」
レイの返事を聞いたエリックは、レイたちに背を向けてギルドの方へと歩いて行った。
(ふん、バカがっ!無能ごときが俺に勝てるわけがないだろう。)
エリックの後について行こうとしたレイに、リリーが待ったをかける。
「レイ様!お待ちくださいっ!私が1対1でエリックに勝つなんて不可能です!」
「…………僕はリリーを信じてるよ。」
レイはキリッとした顔をリリーに向ける。
「信じられても困ります!エリックは剣も魔法も使える万能タイプの冒険者なんですよ!?攻撃手段のない私じゃサンドバックになるのがオチです!」
「大丈夫、大丈夫。僕を信じて。」
レイはリリーを落ち着かせるように告げるのだった。
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