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厳選短編集

「せんせー、溶けない雪だるまを造ったよ!」

作者: 白夜いくと

なろうラジオ大賞3の参加作品です。

お題は「雪だるま」です。

「ねぇ加藤(かとう)せんせー。どうして、ゆきだるまはまっしろなの?」


 そう訊いたのは園児のユウちゃん。みんなは楽しそうに真っ白な雪だるまをゴロゴロ捏ねています。さて、どうして雪だるまは真っ白なのでしょう。先生は困ってしまいました。


「それは、雪が真っ白だからよ」

「じゃあ、まっきっきなゆきなら、まっきっきなゆきだるまできるじゃんー」


 なるほどわかる。

 そう思った先生はいろいろ試しました。オレンジジュースを少しかけて雪の色を変えてみる。雪が溶けて失敗。クレヨンの粉を振りかけてみる。滲んで汚い色になって失敗……。


「もういいよ、せんせーあきた。ゆきがっせんしよ」

「いいえ、諦めません!」

「えー」


 ユウちゃんよりムキになってしまった加藤先生。手や顔を真っ赤にしながら真っ白な息を吐き、必死にカラフルな雪だるまを造ろうと考えます。


「さむい~! へやにはいる!」

 

 とうとうユウちゃんは、温かいお部屋(ひまわり組)に籠って出てこなくなりました。何やらお絵かきをして他の先生たちに見せびらかしています。


 それでも諦めない加藤先生。


「みんな、お外遊びはおしまいですよ!」


 時間切れのようです。

 こわーい先生が生徒や先生たちに号令を出します。


 加藤先生は同じ姿勢で腰が痛くなっていました。詰まらないことに意地を張ってしまった自分を恥じながら、諦めて他の園児を元の場所へと戻します。

 

 そして、ユウちゃんの居るひまわり組の部屋に入りました。暖かい暖房の空気が加藤先生の耳をじんわりと通ります。


「――わぁ……!」


 加藤先生は感嘆の声を漏らしました。なぜなら、ひまわり組の部屋に残っていた園児たちが、色とりどりの雪だるまを描いて、先生を待っていたからです。


「加藤せんせー、できたー! みてー!」


 代表者のごとく現れたユウちゃんの絵には、カラフルな雪だるまを造る加藤先生らしき人物の姿が描かれています。ユウちゃんの手や服はクレヨンで沢山汚れていました。


「ユウちゃん、飽きたんじゃなかったの?」

「そとからずっとせんせーみてた。おもしろかった!」


 あらま。そうなのユウちゃん。あなたが言い出したことなのよ?


 そう思いながらも加藤先生は、その絵を大事に大事にひまわり組の壁に貼り付けました。他の園児の絵も、沢山沢山貼り付けました。


 その雪だるまたちは、この先ずっとずっと溶けることがありません。加藤先生と園児たちの大切な宝物です。


「ユウちゃん。ありがとう」

「どういたしまして!」

最後まで読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 絵本を読んでいるようなほのぼのした気持ちになりました。
[良い点] 光景が見える作品でした。素晴らしいと思います。この季節ならではのいい物語です。雪だるまに色を付ける発想や、大人が本気(マジ)になるところが面白くて好きです。
[良い点] ゆうちゃん、なんて素敵な子なのでしょう。ゆうちゃんの温かさに触れて、先生の心も溶けたのではないでしょうか。心温まりました。
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