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7.夢魔と怪しい遊び

「うひょー! 夢魔って言っても露出の多い服を着てるんだな! エロ!」


 妖花に連れられて踏み入れた夢魔の城は夢のような世界だった。


 妖花自身もエロい格好してるけど、これは選り取りみどり!!

 ロリからお姉さままでそろってる!

 しかも特性なのか分からないけど人懐っこくていいと思います!


 見たことのない顔が物珍しいのか、わらわらと夢魔が集まってくる。

 夢とは言え色事によって力を溜める特性上か男女共に顔の整っている者ばかりだ。

 人懐っこい性格のものが多いのか、口々に話しかけてくる。


「へぇ、お兄さん異世界から来たの」

「面白い気配ですっごい強そう。異世界のお話聞かせて欲しいな」

「どうしてこの世界に来たんですか?」


「色々あったんだよ。俺の世界の話は今度機会があったらな」


 そう、色々ありすぎた。

 ただ天使を堕天させようと企んだだけなのになんで女神の従者に間違われるんだか……。

 まじふざけんなよ!

 リーチェめ!


 諸悪の根源はリーチェだと思い出し、どこにいるのか分からないリーチェに怨念を送る。

 女神パワーとやらでこの程度なら弾いてしまうだろうが、気持ちの問題だ。


「確かに色々あったのでしょうね。そうでなければ異世界になんて来ないもの」


 俺の前に立って城を案内する妖花が悠然と微笑む。

 鼻にかかる色っぽい話し方もあってとてもエロい。

 他の夢魔を押しのける色気だ。


 夢魔って色欲の悪魔並にエロいけど、妖花は群を抜いてるよな。

 存在が男を誘惑してる。

 まあ、女の子をたぶらかすために顔の整った男も居るみたいだけど。


 こちらに近寄って来ないが、様子を遠くから伺っている夢魔の気配もかなり感じる。

 ちらっと見た感じ男の夢魔もかなりいるようだ。


「ほんとにな。なんでこんなことになったんだか。ところでこの城には生き残った夢魔が全員いるのか?」


 俺の世界では同じ欲望の悪魔がかたまって生活するなんてなかったから新鮮だ。

 もしかしたら数が減ったことでまとまって少しでも生存率を高めようとしているのかもしれない。


「ほぼ全員いるわ。どうしても単独行動したい子は別だけど、それ以外はかたまっているの。この世界は力のある魔族が逃げ出したせいで聖と邪のバランスが崩れているから」


「え、それって天変地異が起きるってことじゃん」


 世界は聖と邪のバランスを保てないと様々な異常をきたし始める。

 そうならないようにどうにかする筆頭が魔王であり最高神なのだ。


「そうよ。だからさっき居た場所が荒廃していたのよ。この世界はまだ若いから魔界とひとつの星しかない星界と天界からできていて、聖と邪の混じり合っている星界が一番影響を受けているの。それでも魔界もかなり酷いことになっているわ」


 うわぁ……。

 聖女は周りを寝かせてしまうだけの能力っぽいのにあそこまで影響が出ていたのはそのせいか?

 力があるなら逃げる前に問題を解決していけよ!


 俺がこの世界の悪魔だったら真っ先に逃げていただろうということは棚に上げて、この世界の魔族を恨む。

 どうやら俺たちの世界とは違って悪魔ではなく魔族が邪を司っているらしい。


 この世界の滅びを加速させたのは間違いなく魔族の行動のせいだ。

 少しでもタイミングがずれていたら俺が拉致されることもなかったはずなのに。

 もうちょい早いか遅いかしてくれれば!


 内心ぶーたれている間に妖花がひとつの扉の前で立ち止まる。


「さて、此処にリリーちゃんが居るわ。貴方本当にリリーちゃんの言葉が分かるのよね?」


「……もちろん分かるとも!」


 妖花の言葉になんで招待されたのか思い出した。

 俺はリリーちゃんの言葉がわかるとうそぶいて妖花に連れてきたもらったのだ。


 まあ、リリーちゃんがどんな生き物かは分からないが、適当に話を合わせておけばなんとかなるだろ。

 妖花たちも話ができないから俺が呼ばれた訳だし。


 どうやって誤魔化すか考えながらも自信満々に開かれた扉の先を見ると、そこには口を大きく開いたドラゴンが居た。


「ぎゃー!! ドラゴンじゃねーか!!」


 悲鳴を上げて横に飛んだ瞬間、リリーちゃんの口から炎のブレスが放たれる。


「ぎゃおー!!」


 見知らぬ俺を敵と見なしたのかただ単に機嫌が悪いのかリリーちゃんが首を曲げ、再度俺にブレスを吐こうとする。

 リリーちゃんは連続でブレスが吐けるほど強いドラゴンらしい。


「聞いてねーぞ! 俺は敵じゃねー!!」


 確かにリリーちゃんの言葉を翻訳してくれとは言われたが、リリーちゃんが攻撃的だともドラゴンだとも聞いていない。

 よく見るとリリーちゃんは俺の2倍以上の身長がありそうだ。

 横は4倍以上ある。


 こんなにヤバイやつだと知ってたら妖花について来なかったのに!

 リリーちゃんなんて名前だからもっと小さいペット的な何かだと思ったわ!


 俺は再度放たれたブレスを仰け反ることで回避する。


「ごりってゴリっていった今! 俺の腰がー!」


 無理な体勢をとったせいで腰が悲鳴を上げている。

 もう一度同じことをすれば間違いなく腰が死ぬだろう。


 これは意外とピンチ!


 焦ってリリーちゃんを見上げる間に妖花が無警戒でリリーちゃんに向かっていく。


「どうどう、リリーちゃん落ち着いて。彼はお客様なの。威嚇しなくて大丈夫よ」


 近づいた妖花はリリーちゃんの首を撫でながら説明をする。

 どうやらリリーちゃんの言葉は鳴き声にしか聞こえないが、リリーちゃんはこちらの言葉を理解することができるらしい。


「ぐぬぬ」


 傲慢の力を使って肉体を強化し、腰の回復をはやめる。

 こういう時に一瞬で回復することのできない悪魔は不便だ。

 傲慢が魔王オヤジ並に伸びれば一瞬で治せるらしいけど、マジで腰が痛い。


「ぎゃお?」


「ええ、そうよ。不審者ではないの」


 まるで会話しているかのような妖花とリリーちゃんが不思議だ。


 本当に会話できないんだろうな?

 互いに分かりあってますって雰囲気が漂ってるんだが。


 流石に異議申し立てしてやろうと立ち上がると、妖花が俺に向かって眉を下げた。


「ごめんなさいねぇ。普段はこんな子じゃないのだけれど、知らない人が突然来たから警戒したみたいなの。貴方は強いからワタシを守ろうとしてくれたようで」


 いや、流石にごめんで済む範囲を超えてるんだが……と文句を言おうと思ったが、妖花とリリーちゃんのシンクロしたお辞儀にバカバカしくなる。


 リリーちゃんのブレスの炎は赤色だったし、直撃したとしても死ぬことはない。

 ちょっと熱いだけだ。

 その程度のことで怒るのも大人げない。


 俺は大人の余裕を見せることにした。


「次はないからな」


 次があったらもう許せる気がしない。

 でも今回は妖花の為に許してやろう!

 俺が優しくてよかったな!


 ふんっと鼻を鳴らすと、妖花がほっとしたように笑った。

 見ず知らずの俺に頼みごとをするくらい大切なペットなのだ。

 大事にならなくて安心したのだろう。


「ありがとう。迷惑をかけたお詫びに住処を提供するわ。好きにこの城に泊まっていって」


「あ、それは助かる」


 このままだと野宿になるところだ。

 ファッションピンクの目に優しくない城とは言え、屋根があるだけましだ。

 食事は悪魔なのでしなくても生きていけるが、快適な生活ができるならそっちの方が良い。


 いつ天変地異が起きるのか分からないのは怖いが、寝る場所があるだけでも喜ぶべきだろう。

 妖花や見目麗しい夢魔のみなさんもいることだし。


 夢魔だと実際に良いことはできないのかもしれないが、夢のなかではスペシャリストのはずだ。

 そう考えながらむふふと笑った瞬間、再びリリーちゃんからブレスが飛んでくる。


「ぎゃー!!」


 さっき次があったら許さないと言ったばかりなのにリリーちゃんには伝わっていなかったのだろうか?

 俺はとっさに羽を使って上に避けた。


 さっきまでこの避け方をしなかったのは忘れてた訳じゃない。

 ちょっと久しぶりに体を使ってみようと思っただけだ。

 そう、別に飛べることを忘れてたとかいう訳じゃないんだからな!


 心の中で言い訳をしながらリリーちゃんを睨む。


「流石にこれは許しがたいんだけど、こっちも反撃していいのかな?」


 腕輪で力が半減しているから勝てるかは分からないが、ここで逃げたら悪魔の名が廃る。

 リリーちゃんはこの世界でかなり強いようだが、そもそも発展途上の世界だ。

 上位の世界から来た影響か俺も本来の力と同じくらい悪魔の力が使えそうだし、いい勝負になるかもしれない。


「や、やめて。リリーちゃん、なんてことを……」


 妖花もなんて言っていいのか分からないようでおろおろとリリーちゃんを撫でる。

 けれどリリーちゃんは俺が悪いと言わんばかりの態度で鼻から炎を出した。


 確実に俺の考えていたことを読まれてる!


 どうやったのかは分からないが、ここは許した方が良いかもしれない。

 深く突っ込んで俺が妄想しかけていたと妖花に伝わったら宿がなくなってしまう!


「ちっ、今回は不問にしてやるけど、次やったらミンチにするから覚えとけよ。ドラゴンハンバーグにしてやるからな!」


 許すとは言ってもこれ以上格下のやつに我慢する筋合いはない。

 実際にドラゴンの肉は美味しいのだ。

 攻撃されたのを理由に反撃して仕留めて食べてしまっても良いくらいだ。


 でもリリーちゃんを倒したら妖花が泣くんじゃないか?

 それは流石に望んでないんだよなぁ。

 一応俺が発端みたいだし……。

 優しい俺に感謝しろよ!


 腰に手を当ててリリーちゃんの鼻先を押すと、妖花もこれで一件落着と安堵のため息をついた。


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