女友達の家に呼ばれて行ったら死体があった件
久しぶりの投稿です。スルッと出てきたものなので実際どうなんでしょうね……ちなみに主人公くんのモデルは自分です
「リョウくん……どうしよ、これ……」
僕が呼び出されてから10分、息絶えだえに辿り着いた彼女の部屋には、男が1人寝転がっていた。……いやこれ息してないな。死んでいるっぽい。顔もどことなく青白い。
……異常な状況を前に、逆に冷静になってきた。外見から察するに彼女の彼氏だろうか。僕も噂だけは聞いていたが、どうにも典型的なクズ彼氏だったらしい。そんなのとずっと一緒に居る彼女も彼女だが、これは性格だから治しようがないと友だちもボヤいていたっけ。……いや今は関係ないか。
彼女はどうも混乱しているようだし、ヤツからも血が出ていない。血の付いたものも見当たらない。何か事情があったにしろ、まず話を聞かないことには始まらないだろう。ちなみに部屋に入ってからこの間30秒ほど。嫌な時ほど頭は回るってやつだねうん。
ひとまず彼女に駆け寄り、話を聞くことにした。
「……いきなりどうしたんだよ、これ……」
「リョウくん……あのね、タツヤがね、……」
時々相槌を交えつつ、なんとか聞き出した話を要約するとこうだ。
・前々から受けていた暴力が嫌になって、自殺したかった。でも痛いのは嫌だし睡眠薬を使って死のうとした。
・今日の夕飯に入れていたら、彼氏が彼女の分も取って食べてしまったらしい。そのまま言い出せずにいて、いよいよ倒れてしまったから自分を呼んだ。
……いやこれ僕の手に負える案件じゃないな?というのが感想。とりあえず警察に、と電話に手をかけたが、そこではたと気がついた。
―このままだと、彼女は捕まる。
勢いよく振り返って、彼女に確認する。
「なぁ、さっき睡眠薬を使ったって言ってたよな?どういうルートで手に入れたんだ?」
「ど、どうしたのいきなり?え、普通に薬局で買ったり、病院で貰ったりとか……」
これ多分ダメなパターンだ。言い方からして直近で大量に買ったり処方されたりしている。状況証拠からしてだいぶ不味い。
「どうして食事なんかに混ぜたんだよ……」
少しボヤキを交えつつ嘆息する。
「……だって、そうじゃないとチャンスがなかったのよ!夕飯の後は彼ずっと私といっしょにいたがるし、薬を飲んでるところなんて見られたらどうなることか……」
どうやら彼女なりの考えはあったらしい。それが正常な判断じゃないとかは今言っても埒が明かないだろうな、なんて思いつつ今後のことを考える。
なんてったって僕を頼ってくれたんだ、ならばそれに答えなくては……と言いたいところだが、如何せん事が事だ。どうする……と頭を悩ましていると、彼女が伏せていた顔を急に上げて、
「……警察に、電話しなきゃ」
なんて言い出した。
「いや、いやダメだそれは」
「どうしてよ!タツヤが、彼が死んじゃったのよ!早く警察に言わなきゃ……」
「いいやダメだ!このままだと君が捕まる!状況からして君が彼を殺したと思われるぞ!それは嫌だろ!」
つられて声を荒らげてしまった。少しの間の後、彼女は少し泣きそうになって、
「……それは、そうだけど……じゃあどうすればいいのよ……」
なんて言う。そうだよ、今それを考えているところなんだよ。だから少し落ち着いてくれ。泣かないでくれよ、そういうの弱いんだから……
そんなこんなで体感五分くらい―もしかしたらもっと短かったかもしれない―経ったときに、ふと思い至った。
「……まず、この死体をどうにかしなきゃいけない」
これが1番の問題だ。正直こんなクズ、1人いなくなったところでさほど騒ぎにはならないはずだ。問題はこの死体がここにあること、つまり……
「ねぇサクラコさん、車って持っていたっけ?」
「ううん、でもタツヤのはあるよ。でもどうして……まさか」
「うん、まぁここに来たときにすぐ通報しなかったからね、僕も立派な共犯者さ。いいよ、ここまで来たら。一緒に行こう」
たかが友人の1人、それだけの関係性なのに。僕はそんなことを、少しカッコつけて言ってしまう。全くなんのせいか分からないが、僕までちょっとおかしくなってしまったらしい。まぁでもこれで彼女の平穏が保たれるんなら安いもんかもしれない。いやでもこれで人生棒に振ったも同然だな?どうすんだよこれ??
少し後悔もしつつ彼女の返答を待つ。案外その返事は早かった。
「……うん、行こっか。鍵はそこにあるはずだよ」
まだ感情の整理は付ききっていなそうだが、なんとかなるかもしれない。と言うよりも「なるようになれ」か……
どこに死体を隠すか、死体を隠したあとどうするのか。まだまだ何も分からないけど、まずはアレを車の中に運ぶところからだなーなんて考えつつ、ドアを開けて空を見る。
なかなか綺麗な星空だった。