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どうしてこんなことになったのだろう。
普段は騒がしいと自認している脳内も今ばかりはこの思いでいっぱいだ。
「殿下、足元にお気をつけ下さい。御身は国にとってなくてはならない存在なのですから。」
「騎士様!たとえ殿下がどのようなお怪我をなさっても私なら完全に回復できます!傷一つ残しませんよ!」
「あら、聖女様は殿下がお怪我をなさっても良いと思ってらっしゃるの?さすが、神殿の方は仰ることが違いますわね。私には考えもつかないことですわ。」
「なっ、そんなことおもってません!どうしてそんな意地悪を言うんですか?魔法使い様!」
「あなた方は殿下の前で言い争いを行うつもりなのか?聖女殿、魔法使い殿。」
「まぁ、わたくしそのようなつもりはありませんわ、騎士様。申し訳ありません、殿下」
「うっ、私も申し訳ありません殿下、騎士様」
確かにチートとか最強ムーブとか俺も好きだよ、男の子だもん。異世界召喚とか転生とか憧れる気持ちが無かったとは言わないけどさ。
「はぁ、女性陣はギスギスしていますね。あれでは殿下もお疲れになるだろうに。」
「けっ!あの王族野郎がちゃんとあいつらの手綱を握らねーからこうなるんだろ。じごーじとくって奴じゃねーか!」
「おや、まさか拳士の口から自業自得なんて言葉を聞くとは。悪意ある語彙だけは豊富ですね。」
「なんだとエルフ野郎!喧嘩売ってんのか!」
「落ち着け、拳士。エルフも、あれで拳士は殿下を心配しているのだ。」
「おやそうですか?狩人が言うのならそうなのかもしれませんね。」
「狩人!余計なこと言うなよ!」
そりゃ、神様に会った時にお願いしなかった俺が悪いのかもしれないけどさ。
普通、異世界召喚されて神様に会ってチートもらって世界を救って欲しいって言われたらもう一つのお約束もついてるもんだと思うじゃん?
「みんな交流を深めているようだね。仲良きことは美しきかな、そう思いませんか?勇者様」
「ああ、そうだな」
なんで一番大事な恋愛要素は他のやつのハーレムなんだよ!あり得ないだろ!しかも男女関係なしかよ!
くそっ、金髪碧眼キラキライケメン王弟殿下め!俺なんてこの会話「そうだな」しか言ってねーよ!
つーかハーレムメンバーの視線が痛いんだよ!なんで俺の隣から動かないんだよ!
脳内だけでも騒がないとやってられねーよ。なんでこんなことになったんだったか………