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冒険者ギルドと冒険者登録 Ⅱ

 ラジーに案内されて通されたのは、階段状に机が並ぶ教室のような部屋だった。

 ここは冒険者になろうとする者が講義を受ける場所で、研修や会議にも使われるらしい。

 普通であれば部外者が入れるのはここまでなのだが、イルムハートは支部長から内部見学の許可を受けている。

 それでもここに通されたのは、まず講習で知識を得た後に内部を見てもらおうという考えからだった。

「イルムハート様は冒険者ギルドについて、どの程度ご存じですか?」

 一番前の席に座るイルムハートに向けて、教壇からラジーがそう問いかけた。

「本に載っている程度の事であれば一通り、です。」

「そうですか。では、既にご存じの内容も多いかと思いますが、そこは我慢してしばらくお付き合い下さい。」

 イルムハートの答えに満足そうな笑みを浮かべながら、ラジーは講義を始めた。

 家庭教師からはいつも1対1の対面で授業を受けているため、正面の大きな黒板に色々と書き込みながらの講義はこの世界に来て初めての事である。

 何やら新鮮で、それでいて懐かしい感覚を覚えるイルムハートだった。

 尚、護衛役のニナであるが、イルムハートの後ろに立ったままではラジーもやり難かろうという事で、入口の側で警戒に当たっている。

 講義の内容はギルドの歴史、冒険者の仕事、そしてランク制度ついてであった。

 歴史に関しては前に述べ通りだが、設立過程で受けた妨害やその後の国との対立についてはさほど深く触れなかった。

 もしかすると、子供相手という事で生々しい内容は避けたのかもしれない。

 それでも、ギルドがどの国にも組しない中立な組織であるという強い主張に、過去の出来事に対するギルドの思いを覗わせた。

「冒険者の仕事は、ご存じの通り魔獣の討伐ですね。他に要人警護や商隊の警護などにも人を出します。

 但し、傭兵の斡旋にあたるようなマネは絶対にしません。政治的中立というギルドの理念に反するからです。」

 現在、登録されている冒険者の数は、全世界で優に50万人を超えると言われている。

 必ずしもその全てが現役として活動しているわけでもないし、また心からギルドの理念に賛同しているわけでもないだろう。

 それでも、それだけの人員を誇る組織が政治的に偏った思想を持ち始めれば、他国にとっては放っておく事の出来ない脅威となるだろう。

 決してそのような疑念を招いてはいけない。

 ギルドにとって政治的中立とは、理念であると同時に自分達を守るための規範でもあるのだ。

 そんな理由もあり、ラジーの講義は仕事の内容と言うよりも、仕事を受けるにあたっての判断基準に重点が置かれているようだった。

 続いてはランク制度について。

「冒険者ギルドの総本部はアンスガルドにあり、そこでは評議員によりギルドの方針が決定されます。

 ですが、現地においての裁量は本部、または支部の長に一切が委任されています。」

 冒険者ギルドはそれぞれの国の首都に本部があり、各都市に支部がある。

 バーハイム王国にも王都アルテナに本部があり、ここフォルタナにはラテス、セーリナス、トラバール、そしてカサルの4つの支部があった。

「冒険者の採用やランク付けにつても所属ギルドの長が判断することになるので、冒険者はそれそれどこかの本部・支部に所属してもらうことになります。

 ちなみに、大都市以外の町には出張所が設けられているところもありますが、そこの責任者はあくまで代理ですので人事の決定権はありません。」

「冒険者は世界中を回ると聞いています。遠く離れた場所で働いている場合、ランク付けはどう判断するのですか?」

「ランクのアップは基本的に試験で行われます。

 試験はどの本部・支部でも受けられるようになっていて、申し込みを受けた場所のギルド長が総本部に実績を照会し受験資格を確認します。

 アンスガルドには冒険者の実績が全て記録として集められているのですよ。

 で、資格があればそこで試験を受けて、見事合格すれば仮のランクアップとなります。

 その後、所属ギルドの長がそれを承認する事で正式にランクが認められるというわけです。」

 冒険者の正規ランクはAからFの6段階からなっている。

 スタートがFランクで、これには試験は必要ない。講習の受講と身元確認だけで資格が取れるのだ。

 その代わり、依頼は所属ギルド管轄内のものに限定される上、単独では受注することが出来ないという制限が付けられていた。

 未熟な者が己を過信して危険な目に遭う、そんな事態を避けるためなのだろう。

 ひとつ上のEランクになれば単独での受注も可能となるのだが、こちらもまだ活動は管轄内に限定されている。

 そのためF、Eランクの者はまだ一人前とは扱われず、それぞれ ”見習い”、”駆け出し” と呼ばれていた。

 Dランク以上になり、制限が外れることでやっと一人前と認められるのだ。

 一般的に、Dが ”一人前” でCが ”熟練”、Bは ”一流” と呼ばれ、Aになれば ”超一流” として扱われていた。

「イルムハート様はSランク冒険者と言う呼び名を聞いたことがありますか?」

「はい。物語等では良く見かけますが・・・でも、ランクはAからFまでなのですよね?」

「正規のランクではそうなります。

 但し、Aランク冒険者の中で特に優れた功績を上げた者に対し、総本部から名誉称号が与えられる場合があるのです。

 平民でも功績を上げて爵位を授かる場合がありますよね?まあ、そんな感じだと思ってください。

 そして、その称号を受けたものが世の中ではSランク冒険者と呼ばれているのです。」

 超一流の、さらにその上に存在するのがSランクと言う事なのだろう。冒険譚では ”英雄” と呼ばれているもの頷ける。

(どれくらい強いんだろう?アイバーン団長より強いのかな?)

 いつかSランク冒険者に会ってみたい。イルムハートがそう思うのも無理ないことであった。


 一通り説明が終わると、最後に冒険者登録についての説明があった。

「冒険者の登録は11歳の年から可能になります。ですが16歳になるまでは、Dランクには上がれない事になっています。」

 一般的に16歳からが大人とされているため、その年齢に達するまでは制限が付くのだそうだ。

 11歳はもう子供ではない。かと言って成人でもない。そんな微妙な立場が、制限を付けざるを得ない理由となっているのだった。

「登録に際しては身元と犯罪歴の有無が確認されますが、残念ながら全ての身元がしっかりと確認出来るわけではありません。

 戸籍が管理されているのは都市部だけですからね。

 なので、身元に関しては本人の申告がそのまま通りますし、本名でなくとも登録は可能となっています。」

 ラジーはそこでいったん言葉を区切ると、すこしだけ語気を強めた。

「しかし、犯罪歴に関しては厳しくチェックされます。

 ギルドは逃亡犯の捕縛依頼を受ける場合もあるので、総本部には各国の犯罪者リストが集められてるんですよ。

 登録時は本人の申告で受け付けますが、その後、総本部でそのリストと登録者の特徴等を照合して確認します。」

 この世界にはコンピューターなど存在しない。おそらく膨大な資料を元に手作業で照合作業を行うのだろう。

 気が遠くなるような作業だが、冒険者の、ひいては冒険者ギルドの信用を保つためには欠かせない事であった。

「虚偽の申告をした場合は厳しい罰が与えられるので、気を付けて・・・ああ、これはイルムハート様には関係無かったですね。」

 いつもの癖でつい口にしてしまった後に、ラジーは慌てた声でそう付け足した。

 型通りの説明を行っただけなので別にイルムハートは気にしなかったが、ラジーとしては不敬な台詞を吐いてしまったと感じたのだろう。

「と、登録が終わると、このようなギルド・カードが渡されます。」

 己の失言から話題を変えようと、ラジーは一枚のカードを取り出した。

「これに持ち主の魔力を記憶させて手続きは完了となります。

 これには魔力を識別する魔道具が埋め込まれていて、本人が使用した場合のみ情報が開示出来るようになってます。」

 クレジットカード程度の大きさのカードにどうやって魔道具を埋め込んでいるのか興味があったが、初回は無償でも再発行には実費分の金を取られると聞いて、イルムハートは今ここで分解してみたい気持ちをなんとか抑え込んだ。

「いつもならこれで講習は終了ですが、イルムハート様には、もうひとつ知っておいてもらったほうがいいでしょう。」

 ここまでの講義で黒板に書いた文字を消した後、ラジーはそう言って再び何かを書き出した。

「”Gランク”・・・ですか?」

 イルムハートはその書きつけられた文字を声に出して読む。

「はい、Gランクです。」

 どうやら、まだ他にもランクがあるようだ。

「先程説明した通り、通常は11歳になる年から冒険者として登録すること出来ます。

 ですが、例外としてその年齢に満たない者でも登録出来る場合があるんですよ。それがGランクです。」

 10歳までは子供として扱われると言っても、仕事に就く者がいないわけではない。

 貧しさがその理由となっているケースが大半ではあるが、中には優れた素質を見込まれ見習いとして雇われる者もいた。

 所謂、青田買いである。Gランクとはそれの冒険者版なのだろう。

 しかし、知識や技術を生業とする職種ならばともかく、冒険者という危険を伴う職業では難しいのではないか?

 そんなイルムハートの気持ちを察したのか、大きくひとつ頷いてからラジーは説明を続ける。

「もちろん無条件でとはいきません。冒険者は危険を伴う職業でもありますからね。

 普通の子供にそんなマネはさせられません。」

 ”普通の子供” と言う言葉にイルムハートは一瞬ドキリとしたが、何とか表情には出さずに済んだ。

「なのでGランク制度について公にはしていませんが、才能有る者を埋もれさせてしまうのも惜しいですからね。

 そのため、Cランク以上の冒険者から推薦があった場合に限り、試験を受けた上でGランクへの登録を可能としています。

 ちなみに、扱いはFランクと同等で11歳の年に自動的にFランクに変わります。

 尤も、ほとんどの者はその後すぐに、Eへとランクアップしてしまいますが。」

 11歳になり普通にFランクとして登録する場合は、試験が無いため誰でも冒険者になれる。

 その中には能力の高い者もいれば、当然低い者もいる。

 それに比べてGランクには試験があり、それを通った者のみが登録出来るのだ。

 実力的には折り紙付きであり、ランクアップが早いのも当然と言えば当然であろう。

(そうか、子供でも登録出来るのか。)

 この話は、俄然イルムハートの興味を引いた。

 11歳になるまでは何も出来ないと、今はあきらめていた冒険者への道が不意に開けたのだ。

「Cランク冒険者の推薦はどうすればもらえますか?それがあれば僕でも登録出来るのですよね?」

 そう言って突然立ち上がったイルムハートの言葉に、ラジーは少しうろたえた。

 興味を持つだろうと予想はしていたが、まさかここまで積極的に反応するとは思っていなかったのだ。

「えっ?あ、あのですね、普通は知り合いの冒険者がその子の才能を認めて推薦したり、弟子入りしてお墨付きをもらったりとか、まあそんな感じなんですが。」

「そうなんですか・・・。」

 残念ながらイルムハートには冒険者の知り合いはいないし、弟子入りするのも身分的に難しかった。

 そんな落胆するイルムハートを気の毒に思ったのだろう。

「本当はこんな事言ってはいけないんですけど、結局は試験に合格するかどうかですからね。推薦の有無はあまり関係ありません。

 要は、冷やかし半分に試験を受けられても困るので、制限を掛けてるだけなんです。

 もしイルムハート様が本気で試験を希望されるのであれば、そのように手配しますよ。

 但し、辺境伯様の了解をいただいてからになりますが。」

 ラジーは内緒話でもするかのように、少しだけ身を乗り出すと声を落してそう言った。

 何にでも抜け道はあるという事なのだろう。

 ウイルバートの了解については、まあ当然と言えた。イルムハートは、何をするにもまだ保護者の許可を必要とする年齢なのだから。

「解りました。お父様の了解を得てから、改めてお願いさせていただきます。」

 そう答えながら、イルムハートがどうやって父親を説得するかを考えていると、ニナが近づいてきて口を開いた。

「その件についてですが、既に辺境伯様は了解しておられます。」

「はい?」

 不意に掛けられた言葉の意味を理解できず、イルムハートは思わず聞き返してしまう。

「どういう事ですか?ニナさん。」

「試験を受ける事については、既に辺境伯様も了解していらっしゃるという事です、イルムハート様。」

「そうなの!?」

「そうなんですか!?」

 あまりにも意外なニナの言葉に、イルムハートばかりかラジーまでが驚きの声を上げた。

 無理もない。イルムハートがGランクの事を知ったのはついさっきなのだから。

 なのに、その試験を受ける許可が既に出ていると言われれば、それは驚くだろう。

「イルムハート様がGランクの話を聞けばおそらく試験を受けようとするだろうと、オルバス団長は考られたのです。

 その話をしたところ、どうやら辺境伯様も同じお考えのようで、試験を受けること自体は問題ないとおっしゃったそうです。」

 イルムハートの行動パターンはお見通しという事らしい。

「そうなんですか。でも、そういう事ならもっと早く言ってくれてもいいのに・・・。」

「あくまでも、イルムハート様が試験を希望された場合に限り、それを伝えるようにと言われていましたので。」

 少しだけ恨みがましい口調でイルムハートが言うと、ニナは申し訳なさそうな顔をした。

 まあ、必ずしも試験を受けようとするとは限らないし、逆にたきつけるような事になっても困ると考えたのだろう。

 それは良いとしても、こうも簡単にウイルバートの了解が得られた事にイルムハートは正直面食らっていた。

(特異種討伐の時もそうだったけど、随分と簡単に許可が出るんだなぁ。

 お父様の説得には、少し時間がかかるかと思ってたのに・・・。)

 トラバールで問題を起こしてしまった事へのトラウマから、以降は自分の行動が与える影響に対しナーバスになっていた。

 なのに、いろいろと気を使っているのが馬鹿らしくなる程、簡単に希望が叶う事も少なくない。

 その辺りの基準がイルムハートにはどうも良く判らなかった。

 まだまだこの世界の文化や価値観を理解出来ていないだけもしれないが、それが己の行動を縛ってしまう事に歯がゆさを感じてしまう。

 それでも今のイルムハートの立場では、まだしばらくは大人しくしているしかない。

(早く大人になりたい・・・か。前世でもそんな風に考えた事があるのかな?)

 現状に不満があるわけではないが、どうしてもそんな事を考えてしまうイルムハートだった。

 理想とする自由で気楽な人生、それが実現するのはまだまだ先の事になりそうである。


 急遽、イルムハートのGランク試験実施が決定された。

 ただ、手続きや準備に少々時間がかかるらしく、その時間までギルド内の見学を続ける事になった。

 最初に訪れたのは冒険者が依頼を探すためのホール。

 掲示板に張られている依頼書を見て、冒険者本人がどれを受注するか決める仕組みになっている。

 掲示板はランク別に分かれていて、基本的には自分のランクより上の依頼は受けられない。

 但し、一定数以上の人数を揃えれば、ひとつ上のランクで指定された依頼でも受注できる場合もあった。

 質を量で補うわけである。

 とうに昼も過ぎ、時間が遅いせいもあって、ホールにいる冒険者の姿はまばらだった。

 新規の依頼は朝いちで張り出されるため午前中は混雑するが、午後は皆仕事に出払ってしまうからだ。

 その場にいた冒険者達はイルムハートとニナの姿に興味を引かれたようだったが、特にちょっかいを出してくるような事はなかった。

 ラジーが付き添っているせいもあっただろうが、そもそも騎士団員相手に手を出すほど馬鹿ではないだろう。

 その後は資料室や魔獣の研究を行っている部署などを見学し、残すは訓練場のみと説明された時、イルムハートはふと足を止めた。

 何か足りないのだ。

「魔獣の解体場は?ギルドでは討伐した魔獣の身体を解体し、素材として売ると聞いていましたが。」

 そう、魔獣の解体場が無かった。

 冒険者ギルドは討伐した魔獣を解体し、採取した素材を売って利益を上げている。

 実はギルドの収入の内、依頼で得られる料金よりも素材の売買で上がる収益の方が断然多かった。

 むしろ、収入面だけで言えばそちらの方が本業と言ってもおかしくない程、利益は莫大だった。

 何しろ、魔獣の素材売買については冒険者ギルドがほぼ独占している状態なのだ。

 別にギルド以外の者による売買が禁じられているわけではない。

 集落の近くに出た魔獣を自力で討伐したり、あるいは軍による討伐が行われたりと魔獣の素材が採取されるケースは他にもあり、それを商人に直接売ったとしても何の問題も無い。

 但し、間違いなく買い叩かれる。需要と供給がマッチしていないからだ。

 商人としては欲しいものを欲しい時に仕入れたい。

 だが、軍や個人から入ってくる素材は必ずしも今必要としている品と一致するとは限らず、また入荷も不定期となる。

 その場合、商人からしてみれば無駄な在庫を抱えるリスクもあり、どうしても価格を下げざるを得なくなってしまうのだ。

 その点、冒険者ギルドには常に様々な魔獣の素材が集められており、安定供給が可能だと言う強みがあった。

 当然、商人は素材の仕入れをギルドに依存し、また軍や個人も正規の価格で引き取ってくれるギルドに売ろうとする。

 それは、一部の商人にとっては面白くない話ではあったが、彼等としても自力で素材集めを行える程の力があるわけでも無く、あえて対立しようとする者はいなかった。

 また、いずれの国も税金さえ収めれば問題無いというスタンスなので、特に介入はしてこない。

 その結果が素材市場の独占ということになったのだった。

 つまり、素材の採取を行う解体場は重要な施設であり、それが無いギルドなどあり得ないのだ。

 だが、イルムハートの疑問に対するラジーの答えは単純だった。

「解体場はこの建物にはありません。別の場所にあるんですよ。」

「ギルドの建物が他にもあるんですか?」

「はい。西門のすぐ側に解体専用の建物があります。

 こっちの建物は門から結構な距離があるので、運搬が大変なんですよ。

 大通りを魔獣の死骸を抱えてここまで運んでくるのは、いろいろと問題がありまして・・・。」

 問題、と言うのはどうやらクレームらしい。

 全ての冒険者が収納魔法を使えるわけでもないし、それに代わる高価な魔道具を持てるわけでもない。

 また、解体作業にもそれなりに技術が必要で、下手な者が行うと素材に傷が付き商品価値を著しく下げてしまう事になる。

 そのためほとんどの場合は簡単な防腐処理のみを施した死骸を丸ごとだったり、必要な部位のみを切り取った形で持ってくるのだった。

 そんな物を持って大通りを歩けば、それは苦情も出てくるだろう。

 いかに屈強な冒険者を揃えている組織であっても、ご近所さんのクレームには勝てないと言う事か。

「ですので、魔獣の死骸はそちらの方へ運び込むようになってます。

 まあ、解体専用のため特にギルドの看板を出してるわけでもないので、関係者以外にはあまり知られていませんけど。」

「どこの冒険者ギルドも、それぞれ解体場を別にしてるんですか?」

「そう言うわけでもないです。と言うか、別になっているのは少ないですね。

 フォルタナだとここラテスとセーリナスだけです。他は同じ建物の中にありますよ。」

 どうやら、解体場の扱いは街の規模や特性によるらしい。

 政治や商業の中心となる街においては周囲への配慮が必要だが、軍事や工業の街、あるいはそれほど大きくはない町であれば、住民もあまり気にはしないとの事だった。

(確かにラテスとセーリナスは、良く言えば上品だけど、悪く言えば堅苦しいところがあるしね。)

 イルムハートは、領内学習でそれぞれの街を訪れた際に感じた雰囲気を思い出しながら、そんな事を思っていた。

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