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カイラム教派の野望と転生者の決意

 総本部での会議終了後、イルムハートは転移魔法で龍の島へと渡った。

 先ずは現地の状況を把握しないことには次の手を考えようもないからだ。

 一方、アウレルに残ったカール達は更なる情報を集め対策の検討を行う。その結果、皇国の狙いが予想した通りのものであることが分かって来た。

 国内にいくつかある軍港の街にはそれぞれ多くの兵士が集められつつあり、これまた数多くの軍船が着々と出航の準備を始めているとのこと。

 ただ、勇者を含む第一陣が戻るのはまだ数日先になるらしいので、その前に兵を動かすことはないだろう。おそらく帰還した勇者が合流してから作戦の開始となるはずだ。

 つまり、その僅か数日間が未曽有の戦乱を回避するために与えられた猶予と言うことになる。

 そんな中、カール達は思わず首を傾げたくなるような報告を受けた。

 それは、今回の遠征に関しては必ずしも国内での意志統一がなされていない可能性があると言う内容の報告だった。

 何でも今回の件について皇国政府の複数の要人が時期尚早と不満を漏らしているらしいのだ。

 確かに、龍族との全面戦争を控えているにしては兵員の移動を除き国内において特別な動きがあるわけでもない。

 本来なら龍族の本土襲撃に備えた対策等を取るのが当たり前ではあるはずなのだが特に動きも無く、国民に対してもその点についての周知が行われているとは言い難いのが現状だ。

 まさか、龍族が反撃してこないとでも思っているのだろうか?

 いや、それは有り得ない。一国を取り仕切るほどの者達がそこまで無能であるはずはないのだ。

 とすれば、これは一体どういうことなのか?

 もしかすると、本来なら龍の島への遠征はまだまだ準備不足の段階であるにも拘わらず、これを無視して一部の者が先走ってしまったのかもしれない。

 状況から見てカール達はそう考察したのだが、ただこれにはひとつ不可解な点もある。勇者についてだ。

 仮に今回の件が軍部の一部過激派によって無理やり決行されたものだとして、では何故勇者が同行していたのかの説明がつかない。

 本来、勇者を動かすには皇国政府上層部の承認が必要なはずである。たかが軍部の一勢力にどうこう出来ることではないのだ。

 なのに今回の侵攻には勇者が参加していた。複数の政府要人が反対しているにも拘わらずだ。何故か?

(カイラム教派か……。)

 最も可能性が高いのはカイラム教派による工作だろう。カールはそう考えた。

 勇者は皇国政府によって管理されてはいるものの、本来はカイラム教派の所属とされているのだ。まあ、カイラム教派の”秘術”によってこの世界へと召喚されて来たわけなのだからそれも当然の話ではあるのだろう。

 なので、カイラム教派が強引に意見を通せば政府の中に反対意見があっても勇者を動かすことは可能なのである。

 但し、それはそれで当然カイラム教派と皇国政府との間に軋轢を生じてしまうことになるだろう。にも拘らず敢えて勇者を動かしたのだとしたら……。

(もしかすると、皇国の権力構造に変化が生じているのかもしれない。

 軍部はカイラム教派と手を結ぶことで文官の統制を排し、皇国の軍事国家化を狙っている可能性も考慮する必要があるな。)

 皇国の最高権力者は言うまでも無く皇王である。

 ただ、カイラス皇国と言う国は長い歴史の中において何度か事実上の滅亡を迎えていた。そして、その都度国名だけを残し別の支配者が権力を握ると言うことを繰り返して来たのだった。

 そんな中、唯一生き残り建国当初から連綿と受け継がれて来たのがカイラム教派で、ある意味皇王すら迂闊に手を出せないような存在なのである。

 もし、そのカイラム教派が軍部と手を結んだのだとしたら文官連中にはどうすることも出来まい。

(軍部がカイラム教派を取り込んだか、或いはカイラム教派の方から軍部に近付いて行ったか。いずれにしろ、勇者召喚の成功でカイラム教派が今まで以上に発言力を高めているのは確かだろう。

 ひょっとすると、カイラム教派は1000年前の夢を再び見ようとしているのかもしれない。)

 1000年前、皇国が最大の国力を誇っていた時期、その版図はこの大陸の四分の一にも及び経済的な影響も含めた勢力圏は更にその倍近くにもなっていた。つまり、大陸の半分が何らかの形で皇国に依存していたことになる。

 そして、カイラム教派はその広大な領域の中において最大の権勢を誇っていたわけだ。

 それを考えれば「夢よもう一度」と言う思いになるのも当然だし、しかも今回は勇者と言う夢を叶えるための”道具”すら手に入ったのだ。大人しくしていろと言う方が無理な話かもしれない。

(過ぎたる力は聖職者すらをも狂わせるか……全く厄介な存在だな、勇者と言う奴は。)

 勿論、本人の意思に反し異世界へと連れて来られたことには深く同情していたし、呼び出した連中と同じこの世界の人間として申し訳なくも思ってはいた。

 だが、それとこれとは別だ。その存在が世界に悪い影響しか与えないのであれば何らかの対処は必要となってくるだろう。

「せめてソシアスのような在野の存在となってくれれば、()()()()()をしなくても済むのだが……。」

 場合によっては望まぬ手段すら取らねばならなくなるかもしれない可能性にカールは憂鬱そうな表情を浮かべ思わずそう呟いた。


 三日後、前回のメンバーが再び総本部に集まり龍の島から戻ったイルムハートの報告を聞いた。

「やはり皇国が奪って行ったのは魔力嵐の魔道具でした。

 そのせいで近海の魔力嵐は極端に弱まっていて、おそらく侵攻して来る船団はほとんど影響を受けることがないでしょう。」

 つまり、今皇国が準備している大船団はほぼ無傷で龍の島近海へと辿り着くことが出来るわけである。

「それで、龍の島は今どんな状況なの?龍族の人達は大丈夫?」

 勿論、魔力嵐のことも気懸りではあるものの、ライラとしては龍族達がどうなったのかの方が心配なようで不安気にそう口を開く。

 そして、それに答えるイルムハートの表情もまた決して明るいものではなかった。

「龍族にはかなりの被害が出ていたよ。

 中には命を落とした者もいる。」

 龍族は体内にある”龍核”こそが本体と言われるほどで、それ以外の肉体的損傷によって命を落とす事などまず無かった。例え手足を切り落とされようと時間さえ掛ければ元に戻る、それ程に強靭な生命力を持った種族なのだ。

 にも拘らず今回の侵攻では何体かの龍族が命を落としたらしいのだ。

「やっぱり、勇者にやられたの?」

「そうだ。」

 怒りと悲しみの混じったような声でイルムハートがそう答えると、その場には深い沈黙が流れる。そして、皆は改めて勇者の力のほどを思い知らされた。

 すると、イルムハートは続けてある疑問を口にした。

「でも不思議なのは、何故勇者がそこまでの力を使えるのか、なんです。

 確かに勇者は神気を持った強大な存在ですが、実のところ持っているだけではどうにもなりません。剣や魔法の技能を高めそれと合わせることで始めて神気は”力”となり得るのです。

 それは龍の島で神気の制御訓練をしている時につくづく感じました。

 なのに、そんな龍族をも圧倒出来るほどの技能を勇者は一体いつの間に身につけたのか、それが謎なんです。」

 勇者召喚が行われたのはイルムハートが龍の島で怨竜と闘った後のはずである。その際天狼は召喚の気配があると言っただけで実行されたとは言わなかったからだ。

 なので、勇者が召喚されてからまだ数か月しか経っていないはずだった。

 果たしてそれ程の期間の中でそこまで圧倒的なほどの技能を身につけることが出来るのだろうか?

 答えは否である。少なくともイルムハートはそう考えた。

 今まで反則的とも言えるスピードで技能を習得して来たイルムハートが言うのもなんだが、それは一朝一夕で身につくものではないのだ。

 ましてや龍族と闘えるほどの力を付けるにはどれほどの鍛錬を必要とするかイルムハートには良く解かっていた。

「元々、向こうの世界でも軍人とかそんな闘いに関わる仕事をしていたのではないでしょうか?

 その分、技能を身につける時間が短くて済んだとかではないですかね?」

 そんなケビンの言葉はそれなりに筋は通っているし、イルムハートも一時はそう考えもした。しかし、それでも納得のいかないことがある。

「その可能性は僕も考えてみた。でも、やっぱりそれだと説明がつかないんだよ。」

「何がですか?」

「魔法さ。

 地球には魔法と言うものは存在しない。だから、どんなに優れた闘いの技能を持っていたとしても魔法だけは一から学ばなければならないんだ。

 龍族の話によると勇者は大魔法士にも匹敵する程の魔法を使えるらしいんだが、僅か数か月でそこまで魔法の技能を上げることが出来るものなのだろうか?

 それがどうにも気に懸かるんだ。

 もしかすると勇者には、と言うか勇者召喚の魔法にはまだ僕達の知らない特別な秘密があるのかもしれない。」

 その秘密を解き明かさないまま勇者の前に立つのは危険過ぎる。イルムハートはそれを心配していた。

 すると、それまで黙って話を聞いていたカールが唐突に口を開く。

「それについては以前ギルドでも調べた事があるんです。」

「そうなんですか?」

「ええ、実を言うとナディア・ソシアスの場合もそうだったのですが、彼女も勇者として覚醒すると同時に並外れた技能にも目覚めたのです。

 それまでは平凡な冒険者でしかなかったはずが、覚醒後の彼女はいきなりAランクにも匹敵する技能を持つようになりましてね。

 最初はそれも神気による恩恵ではないかと考える者もいたのですが、かつて始祖も召喚当初はその力を全く使いこなせず苦労したと語っていたらしいのです。

 と言うことは神気に目覚めたからといってそれだけで技能が上がるわけではないと言うことになります。

 そこでそのことを不思議に思った当時のギルドもイルムハート君同様、召喚魔法に何か秘密があるのではないかと考え調べてみたのだそうです。

 とは言え召喚魔法についての情報は厳重に秘匿されていて確証を得るまでには至らなかったのですが、それでもひとつの結論に達しました。

 召喚魔法が人の魂を贄として発動することは知っていますよね?

 どうやら召喚魔法にはその際生け贄として捧げられた者の技能を召喚者の魂に付与する効果があるようなのです。

 つまり剣士を贄とすれば剣の技能が、魔法士を贄とすれば魔法の技能がそれぞれ何の鍛錬も無しに得ることが出来るわけです。」

「成る程、そう言うことなんですね。」

 それなら全て説明がつく。

 考えてみれば召喚魔法は”古の魔物”によって滅ぼされる寸前まで追い詰められた古代文明人が最後の希望として創り出したものだ。そんな状況で闘いの素人を呼び出したところで何の役にも立つまい。

 召喚直後であってもある程度戦力として使えるよう考慮しておくのは当たり前と言えば当たり前のことだろう。

 だが、それはそれでまた別の問題があった。勇者の”自覚”についてである。

 さしたる苦労も無しに力を手に入れた者はしばしば勘違いをしてしまう。己を特別だと思い込み周りを見下してしまうのだ。

 それは転生者として特別な能力を持つイルムハートにも言える事なのだが、幸いにも彼の場合は周囲の人間に恵まれたお陰で人として歪まずに済んだ。

 しかし、勇者の場合はどうか?

 貴重な戦力である彼(彼女)はおそらく誰からも諫言など受けることなく、むしろもてはやされながら日々を過ごしているのではないかと思われた。それでは精神を歪めてしまうだけである。

(話が通じるような相手であってくれれば良いんだけど……。)

 出来る事なら勇者と闘いたくはなかった。手を引いてくれるよう説得して済む相手ならそれに越したことはないのだ。

 単なる希望的観測でしかないことは十分承知の上だが、それでもイルムハートはそうであることを願うのだった。


 勇者の件で少々話は脇道に逸れたものの、その後いよいよ本題へと入る。

 龍族の出方と今後の対応についてだ。

「幸いな事に龍族としては今のところ皇国との全面戦争までは考えていないとのことです。

 ただ、”龍王の冠”だけはどんなことをしても奪還するつもりのようです。」

 実はイルムハートが龍の島を訪れた時、”龍王の冠”奪還部隊が今まさに皇国へ向け出撃しようとしていたところだった。正に間一髪と言ったタイミングだったのである。

「龍族とすればそれも当然のことでしょう。

 ですが、そうなると皇国本土への襲撃は避けられそうもありませんね。」

 それを止める権利は誰にも無い。そう解かってはいても歯痒さを感じずにはいられないカールだった。

「そうですね、僕には止めろなんて言えませんし、そもそも言うつもりもありません。

 ですが、だからと言ってこのまま龍族と皇国との闘いを黙って見ているわけにもいきません。例え今は龍族側に全面戦争の意志が無いとしても、状況がそれを許してはくれないでしょう。

 奪われれば奪い返す、奪い返されたらまた奪いに行く。結局、それが繰り返されるだけで戦火がどんどん広がってゆくのは目に見えています。」

 その結果どうなるかは誰の目にも明らかであり、それが皆の気持ちを暗くする。

 そんな思い空気が部屋を満たす中、まるで救いを求めるかのような声でライラはイルムハートに声を掛けた。

「それってどうにかならないの?

 龍族と皇国が直接闘わなくて済む方法はないのかしら?」

 そんなものがあれば誰も苦労はしないだろう。そのくらいライラにも解かってはいたが、それでもそう問い掛けずにはいられなかったのだ。

 すると、そんなライラをイルムハートは力強い目で見返した。

「ひとつだけある。

 龍族と皇国を闘わせることなく、”龍王の冠”だけを奪い返せばいいんだ。」

 一瞬、その場の全員がぽかんとした顔になる。まあ、それはそうだろうが、そんなことが可能なのか?と言った感じだった。

 が、次第にその表情に明るさが差し始めた。イルムハートが何を言わんとしているのかを悟ったのだ。

「そう、龍族に変わって誰かが奪い返せば良いんです。そうすれば少なくとも両者が直接衝突するのだけは避けられる。

 なので僕が……。」

 と、そこまで言いかけてイルムハートは自分に向けられる強い視線に気付いた。「おい、解かっているよな?」と言いたげな顔でジェイク達がじっとこちらを見ていたのだ。

 それを見たイルムハートは内心呆れながらも「解かったよ」と視線を返し、こう言い直す。

「なので僕達・・が皇国に乗り込んで”龍王の冠”を奪い返すんです。」

 その言葉を聞き「うんうん」と満足げに頷くジェイク達3人。これにはイルムハートも苦笑を漏らすしかなかった。

「実を言うとその方向で既に龍族とも話は付けてあります。

 ”龍王の冠”さえ戻れば皇国への攻撃は行わないとの約束もしてくれました。」

 そうなればとりあえず戦乱は回避出来るだろう。

 だが、それでもまだ重大な問題がひとつ残っていた。

「確かに、それで今回の衝突は避けられるかもしれません。

 しかし、再度皇国が”龍王の冠”を奪いに龍の島へと攻め込む可能性も十分にあります。

 そうなると結局は振り出しに戻るだけと言うことにはなりませんか?」

 タチアナが抱く危惧は尤もである。龍族と皇国の戦争を止めるためにはもっと根本的な解決策が必要なのだ。

「それは解かっています。

 だから、今回は”龍王の冠”を奪い返すと同時に勇者の説得も試みるつもりです。

 元々勇者はこの世界とは無縁の人間で、誰かを憎んだり敵視したりして闘っているわけではないはずです。

 なので、このまま争いが続けばどうなるかきちんと説明すれば考え直してくれるかもしれません。

 皇国がここまで強気に出られるのも勇者の力があってこそですからね。それさえ何とか出来ればこの争いも収まるはずなんです。」

「ですが、もし説得が上手くいかなかったら?」

 勿論、イルムハートも自分が言っているのは単なる楽観論でしかないことくらい十分理解しているし、それだけに運命を任せるつもりもなかった。

「もし上手くいかなかったら……その時は勇者を倒します。」

 タチアナの問い掛けにイルムハートは悲壮だが断固たる決意を持ってそう答えた。

「本人の意思を無視した形で無理やりこの世界へと呼び出されてしまった勇者には心から同情しています。

 ましてや僕もかつては同じ世界で暮らしていたいわば同郷の仲間みたいなものですからね、出来る事なら勇者にはこの世界で幸せに生きてほしいと思っています。

 でも、今の僕はこの世界の人間なんです。この世界のひとりとして生まれ暮らして来ました。

 ここには僕の大切なものが沢山あるんです。それを守るためなら相手が誰であろうと闘います。

 例えそれが僕の身勝手な思いであっても、例えそれがかつて同じ世界に住んでいた仲間であっても、それでも僕は闘います。

 おそらく僕のこの力はそのためにあるんだと、そう思うんです。」

 そんなイルムハートの決意を聞いてその場の全員が黙り込む。その心の内を考えた時、何と声を掛けてよいのか分からなかったのだ。

 だが、そんな重い空気を打ち払ったのはやはり仲間達だった。

「全く、アナタはいつも細かい事考え過ぎなのよ。

 守りたいものを守ることの何が問題なの?

 それが身勝手だって言うならそれでも良いじゃない。堂々と胸を張って身勝手に振舞えば良いのよ。」

「本当なら俺が勇者ってヤツと闘ってみたいところだが、今回はお前に譲ってやるぜ。

 もし話が通じないようなヤツなら、その時は遠慮なくガツンとやっちまえばいいんだよ。」

「何を偉そうな事言ってるんです。

 あんな単純な色仕掛けに醜態を晒すような人間が勇者に敵うとでも思っているんですか?」

「いや、だからアレはだなぁ……。」

「まあ、ジェイク君の戯言は置いておいて、イルムハート君。あの時、僕は言いましたよね?

 僕達は君の力になりたいと。

 それは何も闘いだけのことではありません。

 もし、万が一イルムハート君が間違った道を進もうとしたら僕達は身を呈してでもそれを止めてみせますし、心が悲しみに染まった時は全力で支えるつもりでいます。

 ですので、イルムハート君は自分が信じた道を迷わず進んでください。

 その後のことはその後のことです。何かあっても皆で解決していけば良いのですから。」

「……何だよ、お前だけ何かカッコイイこと言ってるじゃないか。自分ばっかズルいぞ。」

「僕に文句を言うのはお門違いと言うものですよ。

 むしろ、自分の気持ちを正確に言葉として表せない致命的な語彙力の無さをこそ恨むべきではないですか?」

「何だよ、それじゃまるで俺がただの言葉足らずのバカだって言ってるみたいに聞こえるぞ?」

「安心しました。耳だけは正常なようですね。」

「お前なぁ……。」

「いいからアンタは黙ってなさい。

 せっかく良い話してるんだから余計な茶々入れるんじゃないわよ。

 少しは空気読みなさいよね。」

「うう……。」

 いつものごとく最後にはオチまでついてしまったが、彼等の言葉はイルムハートの心を軽くしてくれた。

「ありがとう、みんな。」

 これでもうイルムハートに迷いは無くなった。後は事態の解決に向け全力を注ぐだけである。

「それでは、最終的な手順を詰めるとしましょうか。」

 そのせいか声を掛けるカールの表情も先ほどまでとは打って変わって明るいものとなっていた。

 こうして皆は希望を見い出し、ここにイルムハート達の”龍王の冠”奪還作戦は始動したのである。

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