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若き冒険者たちと彼等の長い夜 Ⅰ

 ジャックは前方に対峙する敵をじっと見つめた。

 と言っても、その目は3人いるうちのただひとりしか捉えていない。中央に立つ一番手強そうな相手だけをだ。

 ジャックにとって他の2人など最早雑魚ですらなく、目もくれようとはしない。

 そんな侮蔑の気配を敏感に感じたのか、両脇の2人が更に殺気を強めながら剣を抜いた。

 そして、その動きに合わせる様に中央の男も、しかしこちらはゆっくりと剣を抜く。

(元騎士と言ったところか。)

 男のその動作を見てジャックはそう推測した。

 他の2人もいちおう剣術の基本は出来ているようだが、それでも動作が荒い。おそらくは元兵士か傭兵崩れと言ったところだろう。

 だが、中央の男はゆったり構えているように見えながら、それでいて全く隙がないのだ。他の2人とは練度が桁違いである。

(少しは楽しませてくれそうだな。)

 そんな思いを表情に浮かべながらジャックもすらりと剣を抜く。

 好戦的なその性格からすれば意外に思えるかもしれないが、彼の剣は刃渡り40センチほどの短剣だった。

 まあ人を殺すには十分であるものの、正直迫力に欠ける代物ではあるだろう。

 そのせいか、両脇の2人からは思わず笑いが漏れる。

「おいおい、何だよその剣は?

 兎でも狩りに来たのか?」

 しかし、そんな嘲笑う声にもジャックは全く反応しない。彼等などそもそも最初から存在していないかのように、ただ中央の男だけを見据えながらゆっくりと歩を進めた。

 これには当然、2人も怒りを露にする。

「この野郎、ナメやがって!」

 勿論、ジャックにそんなつもりはない、と言うか端から相手にしていないわけなのだが、プライドを傷つけられたと感じた2人はドス黒い殺気を放ちながら剣を構えた。

「くたばりやがれ!」

 そして、先ず右側の男が怒声を上げながらジャックへと切り掛かる。

 が、その剣は虚しく空を切っただけだった。特に避ける動作など見せなかったにも拘わらず、ジャックは相手の剣を易々と躱しその脇を通り過ぎていた。

「この!」

 男はそんなジャックの動きに戸惑いながらも再度切り掛かるべく剣を振り上げたが、結局それが振り下ろされることは無かった。

「邪魔だ。」

 ジャックは無感情な声でそう言い捨てると軽く剣を振る。すると次の瞬間、男の首が斬り落とされゴトンと音をたて地面へと落ちた。

「何だと!?」

 それを見た左側の男が思わず声を上げる。

 まあ、無理も無い。

 ジャックの繰り出した一撃はまるでハエでも追い払うかのように軽く手を振っただけのものにしか見えなかったのだ。それは到底、人の首を切り落とせるような斬撃ではない。

 にも拘わらず男の首はキレイに切り落とされてしまったのである。

 これには今まで悠然と構えていた中央の男も思わず眉をひそめた。ジャックが予想以上に強敵であることを覚ったのだ。

 だが、もうひとりの男は相手が手強い事を認めつつも、少しばかり見当違いの判断をする。

「ちっ、何て剣だ。とんでもない切れ味だな。」

 そう、彼は仲間の首が斬り落とされたのはジャックの技量によるものではなく、あくまでも剣の性能のせいだと勘違いしたのである。

 尤も、それは全くの見当違いと言う訳でもなかった。実を言うとジャックの剣にはある特別な権能が付加されていたのだ。

 但し、それはあくまでも敵を倒すことにより初めて発動する権能であって攻撃力そのものには何ら影響ももたらさない。つまり、首を軽々と切り落とし見せたのも全てジャックの実力によるものなのだ。

 そこを見誤った男に勝機などあるはずも無かった。

「これならどうだ!」

 男は己の剣先がかろうじて届く程度の間合いからジャックに切り掛かる。ジャックの短剣では届かないだけの距離を保ったわけだ。

 それ自体は賢明な戦術だと言えた。但し、ジャックの技量と言う点を無視した場合は、である。

「ふん。」

 ジャックは鼻先で笑いながら、これもまた相手の攻撃を躱しその脇をすり抜けた。先ほど同様に軽く剣を振りながら。

 すると、今度は男の胴体が真っ二つになる。

「な……。」

 おそらく、首を切り落とされた場合よりは僅かな時間意識を保てはしただろう。

 しかし、結局己の身に何が起きたのかを正確に認識する間もなく男は絶命することとなったのだった。


「まあ、この程度の相手じゃこんなもんだろうな。」

 ジャックは何故か倒れた敵ではなく自分が持つ血にまみれた剣を見つめながら呟いた。

 それはまるで剣に語り掛けているかのようにも見える。

「次はもう少しマシなもんを喰わせてやるからな、待ってろよ。」

 そう言ってジャックは最後の敵に目をやった。

 すると、おそらく元騎士であろうその男はそれに相応しく剣を高く構えながらジャックに問い掛ける。

「お前は一体何者だ?

 その力、ただの冒険者とも思えん。」

 男はジャックが剣ではなく、剣に纏わせた闘気で相手を斬っていることに気付いていたのだ。達人ともなれば鉄をも切り裂くことの出来る、そんな技である。

 そして、それを一介の冒険者が使っていることに違和感を感じているようだった。

 しかし、それは少しばかり固定観念に囚われ過ぎた考えでもある。

「何言ってやがる、これくらい上位の冒険者なら余裕で使いこなすぞ。

 ちょっと世間ってものを知らなすぎるんじゃないか?」

 騎士や軍の将校クラスの人間の中には冒険者を下賤な職業と蔑む者もいる。どうやら目の前の男もその類のようだ。

 これにはジャックも少しがっかりした様子だった。

 いくら高い技能を有していようと、つまらない先入観で相手を判断するようではまだまだだ。おそらくは本当の死地というものをあまり経験したことがないのかもしれない。

「やれやれ、少しは手応えがあるかと期待してたんだが、どうやらまだひよっこだったみたいだな。」

 終始平静を保っていた男ではあったが、ジャックのその言葉にはさすがに我慢ならなかったようである。

「なめるなよ、冒険者風情が!」

 男は怒りを込めた声でそう言うと凄まじい殺気を放ち襲いかかって来た。

 一方、対するジャックはと言えば相変わらず飄々と構えている。

(ひよっこと言われて我を忘れる、だからひよっこなんだよ。)

 男が振り下ろす剣を例によってジャックは易々と避けた。

 が、前の2人とは異なり男はその動きを読んでいたようで、すぐさま切り返した剣でジャックの胴を狙う。

「おっと。」

 しかし、これもまた簡単にいなされてしまった。

 その後、男は矢継ぎ早に剣を繰り出しジャックを攻撃するが全て避けられてしまう。しかもその間、ジャックは己の剣を振ろうとすらしない。

「おのれ!」

 男は屈辱に顔を歪めながら一旦距離を取り、それから闘気を高め全身に纏わせ始めた。そして、奥の手を繰り出す。

 連撃である。

 男の手からまるで何本もの剣が同時に存在しているかの如く凄まじい速さで連撃が繰り出される。

 だが、何とジャックはこれも全て躱したのだ。

「馬鹿な……。」

 男は思わず呆然とした声を漏らす。

 これが剣により弾かれたのであればまだ分かる。相手の技量が勝ってたというだけのことだ。

 しかし、全てを避けられてしまったというのであれば話は違ってくる。

 連撃の際に何処を狙って剣を繰り出すかはその時々の判断で決まる。そこに規則性は無く全てランダムなのだ。

 それが人に出し得る限界のスピードで迫ってきた時、咄嗟に剣で受けることは可能でも身を躱し全て避けるのはどんな達人であっても至難の業と言えた。

 なのに易々とそれをやってのけると言うことは、人を超えた反応速度を持っているか或いは繰り出される剣の軌道が予め解っているか、そのどちらかとしか考えられ無い。

 いずれにしろ人外の能力である。

 男はそれを理解し絶望した。自分が勝てる相手ではないと悟ったのだ。

「どうやら、ここまでみたいだな。」

 もうこれ以上やっても時間の無駄だろう。

 怯えすら浮かべる男の顔を見たジャックはそう判断し、己の剣を彼の胸に突き刺した。

 心臓を貫けれた男は「ぐっ」と苦悶の声を漏らし、そのまま地面へと倒れ込む。その死の間際、彼は自分を貫いた相手の剣がぼんやりと光を放つのを見たような気がした。

「あばよ。まあまあ良い”魂”だったぜ。」

 そして、そんなジャックの声を遠くに聞きながら男は死を迎えたのだった。


「どうやら向こうも終わったみたいね。」

 ジャックの戦闘が終わったのを確認し、ライラはほっと息をついた。

 彼なら大丈夫だろうと分かってはいるが、何事にも絶対ということは無い。

 なので無事決着がついたことに安堵したわけだが、他の2人の方はどうやらそんな心配とは無縁のようである。

「この程度の相手、オッサンにしてみればどうってことないだろ。

 まあ、ひとり手強そうなヤツはいたけどな。」

「見た所、元騎士か何かのようですね。

 尤も、それほど上位の者ではない様子でしたのでサマーズさんなら余裕でしょう。」

 そんな2人を見てライラは思わずため息をついてしまう。もう少し緊張感ってものを持ったらどうなの?と、そう思いながら。

 ただ、自分達が相手にした襲撃者達は3人とも意識を失い地べたに倒れており、既にやるべきことは終えている。

 なので、多少気を緩めたからと言ってわざわざ小言を言うつもりはなかった。少なくとも、2人が度を越して脱線しなければだ。

「おう、こっちももう方が付いたのか。

 さすがに早いな。」

 やがて最後の男が息絶えたのを確認した後、ジャックはライラ達の下へと戻って来て倒れている襲撃者達を見ながら感心したようにそう言った。

「このくらい楽勝さ。」

 フフンと鼻を鳴らしながらジェイクがそれに応える。

「俺にかかればこの程度の連中なんかひとひねりだぜ。」

「あんまり調子に乗るんじゃないわよ、バカ。」

 が、少々大口を叩きすぎてすぐさまライラにダメ出しされてしまう。

 既にこのパーティーのお約束を理解したジャックもジェイクの言葉を華麗にスルーした。

「ところで、コイツ等全員生かしてあるのか?」

「はい、皆気を失っているだけです。

 でも、情報を聞き出すのはひとりで十分ですからね。

 残りの2人はどうします?殺したいのならそれでも構いませんよ?」

 しかし、ケビンの吐く毒にはまだ慣れていないらしく、そう言われ嫌そうに顔をしかめた。

「だから、俺は殺人狂じゃねえって言ってるだろうが?

 意識の無いヤツを殺したところで面白くも何とも無いっての。」

「確かに、死ぬ間際の驚きと苦悶の表情が見られないのなら殺す意味もありませんからね。」

 ジャックは複雑な表情を浮かべながら無言でケビンを見返す。

 それはケビンの言葉に呆れ返ったせいなのか、それとも図星を突かれてしまったからなのか。

 いずれにしろ、ケビンに対し「コイツはマジでヤバイ」とジャックが感じているのだけは誰の目にも明らかだった。


 マジでヤバイ。

 捕らえた襲撃者達を尋問するケビンを見て、ジャックはその認識をより強くした。

 敢えて詳細な記述は避けさせてもらうが、魔法を駆使して相手の精神をギリギリまで追い詰めるそのやり方にはさすがのジャックも背筋に冷たいものを覚えるほどだったのだ。

「お前等、いつもこんなやり方してるのか?」

 呆れた顔でジャックにそう問い掛けられ、ライラもジェイクも思わず視線を逸らす。

「べ、別にいつもってわけじゃないわ。

 普段は魔獣討伐をしてるから人を相手に闘うことなんて滅多にないし。」

「それに、耳を削ぎ落すとか指を切り落とすとか、そんな拷問よりはまだマシなほうだろ?

 まあ、正直どっちもどっちと言われればそれまでなんだけどさ。」

「……お前等も苦労してんだな。」

 必死に罪悪感と闘っているかのようなそんな2人の姿を見せられてはジャックとしてもそれ以上突っ込むわけにもいかず、そう返すしかなかった。

 とまあ、周りからは散々な評価を受けつつもしっかりと尋問の役目を果たしたケビンのおかげで色々と有益な情報が手に入る。

 先ずは盗賊団の正体だが、どうやら彼等の背後にはサウワズ王国内の犯罪組織がいるらしかった。要するにその組織がシノギのひとつとして盗賊行為を行っていたのだ。

 尤も、これについては特に驚く程のことでもない。

 普通、盗んで来た品物は足が付かないよう裏のルートで売りさばかれる。そこには当然犯罪組織が関与しており、互いに無関係でいられるはずはないのだ。

 まあ、組織が直接盗賊団を指揮していたのは少々意外だったものの、両者が協力関係にある可能性は想定していた。

 とは言え、想定していたからと言って問題が無いと言うわけではない。

「犯罪組織が直接からんでいるとなるとちょっと厄介よね。これはもう王国に任せた方がいいんじゃないかしら?」

 単なる盗賊団と王国全土にその手を広げる犯罪組織とではあまりにも規模が違い過ぎる。この人数で立ち向かうのは少々無謀ではないかとライラは主張した。

 それは極めて常識的な意見ではあったが、しかしジャックの考えは違うようだ。

「別に組織と正面切って闘うつもりはない。

 あくまでも盗賊団は別グループとして動いているわけだし、俺達はっそいつらを叩けばいいだけさ。

 仮に組織が増援を出して来るにしてもそうすぐには動けんだろう。

 その間にさっさと片を付けてしまえばんいいんだよ。」

「それはそうだけど、後々報復される可能性だってあるんじゃない?」

「そこは心配いらんだろ。

 もし、そんなことをすれば冒険者ギルドと全面戦争になる。

 組織の連中だってそこまでバカじゃあるまい。」

 確かに、その通りではある。

 冒険者ギルドには依頼の遂行に対する妨害や圧力から冒険者を守るという絶対的ルールがあった。冒険者との信頼関係を築くためだ。

 自分達が決して使い捨ての駒などではないと知れば冒険者も安心して任務の遂行にあたれるし、その結果中途半端に依頼を投げ出したり犯罪行為に走ったりすることも無くなる。

 そうやって冒険者ギルドは人々の信頼を勝ち得て来たのである。

 そしてそれは事後の対応にも適用された。

 もし依頼遂行の結果に不満を持つ者が冒険者に報復しようとすれば、ギルドは全力でこれを擁護する。相手が犯罪組織の場合は勿論のこと、例えそれが国家であろうとだ。

 正直、いくらサウワズ王国内屈指の犯罪組織であっても所詮はローカル組織でしかない。それが世界的規模を持つ”武力組織”である冒険者ギルドにケンカを売るなど自殺行為に等しいと言える。

 なので、ジャックの言う様に報復の可能性は極めて低いと考えて良いだろう。

 尤も彼の場合は組織からの報復いかんに関わらず、単純にまだ暴れ足りていないだけなのだと言うことがその表情から見え見えではあったが。

「つまり、サマーズさんはこのまま敵のアジトに殴り込みをかけようと考えているのですね?」

「そう言うことだ。今なら十分相手の不意を突けるからな。」

 ケビンの言葉にジャックは大きく頷いた。

 尋問で得られた情報によれば敵は町はずれのとある商家の屋敷をその根城としているとのこと。但し、商家と言っても堅気ではない。組織が運営する所謂”フロント企業”だ。

 そして、そこにいる盗賊の数は12人。加えて組織から出張って来ている人間が5人ほど。

 その他に屋敷の奉公人が何人かいるようだが、これは除外して良いだろう。

 つまり、”敵”はおよそ17人。

 まあまあの数ではあるが多ければ良いというものでもない。その辺りのごろつき程度なら何人集まったところで大した問題にはならないだろう。

 ただ、どうやらそう楽観出来る状況でもなさそうなのだ。

「ですが向こうには元騎士団の人間がまだ2人いるようです。しかも、その内ひとりはかなり上位の地位にあった者らしいですよ。

 闇雲に突っ込んで行くのは危険なのではありませんか?」

 今襲撃を掛けて来た連中の中にも元騎士らしき者がいた。なので、これから向かう先にも同様に元騎士がいたとして別段不思議ではない。

 おそらくはどこかの没落した貴族の下で働いていた者達なのだろう。それが再仕官せず(出来ず?)にそのまま犯罪組織に雇われる形になったのだと思われた。

「騎士かぁ、あんな厄介な連中、出来れば相手にしたくないけどな。」

 ケビンの言葉に思わず顔をしかめながらジェイクがそう漏らす。以前、ニーゼックの騎士団と闘った時の記憶が蘇ったのだ。

 こればかりはさすがにケビンも茶々を入れることなくジェイクに同意する。

「そうですね、強いだけでなく魔法も効きづらいときてますからね。

 全くもって面倒極まりない相手ですよ。」

 すると、それを聞いたジャックが怪訝そうな顔をした。

「何だお前等、まさか騎士と闘ったことがあるのか?」

「ああ、あるぜ。

 騎士団の小隊相手にな。しかも、副団長のオマケ付きでだ。」

 これにはジャックも心底驚いたようである。

「騎士団の小隊に副団長だと?

 良くそれで生き残れたな。」

「何とか撃退したさ。

 っても、ほとんどイルムハートがひとりで倒したようなものだけどな。」

「イルムハート?

 ああ、今留守にしてるっていうお前等のリーダーか。

 そいつ、そんなに強いのか?」

「とんでもなくな。」

「そうか……いっぺん会ってみたいもんだな、そいつには。」

 どうやらジャックはイルムハートに興味を持ったようである。

 が、そんなジャックに対しジェイクはゆっくりと首を振って見せた。

「腕試ししようってのならやめておいた方がいいぜ。

 何せアイツの強さはバケモノじみてるからな。いくらアンタでもさすがに敵わないと思うぞ。」

「そんなにか?

 まあ、それが本当かどうかは知らんがどの道闘うつもりなんてないさ。

 俺は腕試しなんかに興味は無いし、そもそも絶対に勝てる相手としか勝負しないことにしてるんでな。」

「清々しいほどに卑怯な台詞だな。」

「馬鹿言え、これは生き残るための絶対的な真理だぞ。

 つまらん意地やプライドのために命を危険に晒すなんざ、愚か者のすることよ。」

「それはそうかもしれないけどさ……。」

 いつもながらジャックの言うことは正鵠を射ていた。

 心情として否定したい気持ちはあるものの、理性がそれもひとつの道理だと認めてしまうのだ。

 そのせいで最終的には彼の言葉に押し切られてしまうジェイクだった。

「それで、結局サマーズさんとしてはこのままアジトに奇襲を掛けるという作戦を変えるつもりは無いんですね?」

 既に誰の目にも明らかではあったものの、念のためライラはそう確認した。

「おうよ。この好機を逃す手は無いからな。

 元騎士の2人は俺に任せておけ。

 と言うか、お前等は絶対に手を出すなよ。そいつらは俺の獲物なんだからな。」

 それに対し、予想通りの答えを返すジャック。

 そんな妙に生き生きとした彼の声を聞きながら、ライラは内心でため息をつく。

 どうやら長い夜になりそうだ。そんな諦めにも似た気持ちを抱きながら。

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