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想定外の事態と予想通りの言葉

 翌朝、イルムハート達は日の出と共にトパの街を出発した。これは、デネクへと向かうには少々早すぎる時間である。

 それには出来るだけ騎士団、と言うかフランセスカと顔を合わせず済むようにといった思惑も無いではなかったが、何よりも今日中に一度緩衝域まで行って様子を見ておきたかったからだ。

 なので、一行はデネクとは若干違う方角へと馬を走らせ、直線距離で一番近い緩衝域を目指す。

 当然、街道を外れての行程となるわけだが、途中には険しい山道なども無かったためそれほど苦労はしなかった。

 草原を走り森を抜け、緩衝域があるとされる場所へと近づくと、小型ではあるがさっそく魔獣が現れ始める。報告通りだ。

 だが、戦闘は起こらない。魔獣達は逃げ去ってしまうからだ。

 彼等にも自分より強い相手を認識し、それとの闘いを避けるだけの知恵は有る。長生するためには必要な知恵だ。

 勿論、中には命知らずな魔獣もいたが、その末路についてはいちいち説明する必要も無いだろう。

 その後、特に問題となる出来事も無く、やがて昼を少し過ぎた頃に一行は目的地へと到着した。

「地図によればこの辺りが緩衝域になっているはずなんだけど……。」

 イルムハートは困惑の表情を浮かべる。それは、ライラとケビンも同様だった。

「全く魔力の変化が無いわね。どうなってるのかしら?」

「緩衝域まで来れば普通なら魔獣の棲息域も感知出来るはずなんですが……それらしい気配すら無いですね。」

 3人が頭を悩ませる中、ジェイクだけはそれの何が問題なんだ?といった表情を浮かべていた。

「何言ってんだ、魔力分布が変わってるなら緩衝域が移動していても別に不思議はないだろう?

 魔獣棲息域だって近付いて来てると思ってたら逆に遠ざかっていたってだけのことなんじゃないのか?」

 まあ、ジェイクも間違ったことは言っていない。但しそれは、あくまでも他の要素を考慮しなければの話であって、今回の状況に関してはむしろ矛盾を生むことになるのだ。

「そんなことは解かってるわよ。でも、それじゃあ魔獣の出没する理由が説明出来ないのよ。」

 やれやれと言った表情でライラが口を開く。

「魔獣が出る理由?」

「そうよ。もしアンタの言う通り棲息域が離れていったのだとしたら、そこに棲む魔獣もそれと一緒に移動してるはずでしょ?

 だったら、むしろ魔獣の出没する頻度は低くなるはずじゃない。

 なのに今は逆のことが起きてるのよ。魔獣は前よりも人里近くに出てくるようになった。それも頻繁に。

 そんな、まるで正反対のことが起こってるから困ってるの。」

「なるほど、言われてみればそうだな。で、何でそんなことになってんだ?」

「それが分かれば苦労しないわよ。」

 ライラに睨み付けられ、ジェイクは思わず肩をすくめた。

「どう思います?」

「うーん、現状では何とも言えないな。

 確かに魔獣棲息域は地図よりも遠くへ移動しているみたいだ。なのに、むしろ以前より魔獣が出没するようになってしまっている。」

 ケビンに問い掛けられたイルムハートは魔力分布の地図を見つめる。彼の魔力探知は遥か後方へと退いた魔獣の棲息域を捉えていた。なので、その事実は明白である。

 だが一方では、それにも拘わらず魔獣の出没頻度が上がっていることも事実なのだ。

 イルムハートはその相反する2つの”事実”が共に成り立ち得る状況を考える。

「……もしかすると、魔獣の棲息域は”遠ざかった”というわけじゃないのかもしれない。」

「遠ざかったのではない?でも、実際に棲息域は離れていっているのですよね?」

 イルムハートの矛盾した言葉にケビンが首をひねるのも当然と言えば当然だろう。

「ああ、確かに棲息域の”境界線”は遠く離れた場所に移っている。けど、それは棲息域がそのまま移動したからだとは限らないさ。」

「どう言うことですか?」

「”遠ざかった”のではなく”縮小”したんじゃないかってことだよ。そのせいで”境界線”が遠くなり、まるで棲息域が移動したかように見えるのかもしれない。」

 一瞬、不思議そうな表情を浮かべたケビンだったが、すぐさまその言葉が示す意味を理解した。

「なるほど、棲息域が小さくなってしまえば当然そこに棲むことの出来る数も減ってしまう。

 そのせいで一部の魔獣が締め出されてしまい、行き場を失った連中が町の魔力に引かれて姿を現し始めたということですね。」

 人が集まるところには魔力が集中する。人が持つ魔力もあれば使用する魔道具から発せられるものもあり、それなりに地域の魔力濃度は高まることになる。

 例えそれが棲息域の魔力濃度に比べればほんの僅かなものでしかないとしても、棲み処を追われた魔獣にとっては彼等をそこへ導く灯火となり得るかもしれないのだ。

「今のところあくまでも推論でしかないけど、その可能性は十分にあると思う。しかも、まだ小さくなり続けているのかもしれない。

 ギルド職員の話によると、最初は取るに足らない小物だけだったのが段々とそこそこに強い魔物が現れるようになったらしいんだ。

 仮に、今も棲息域の縮小が止まらず力の弱い魔獣から順次締め出され続けているのだとすれば、その説明も付くんじゃないかな。」

「だとすれば、かなり厄介ですね。」

 これにはさすがのケビンも思わず顔をしかめた。

 もしイルムハートの推測が正しければ、いずれは棲息域そのものが消滅し大型の魔獣までが棲み処を失って人里へ姿を現すかもしれないのだ。

「厄介どころの話じゃないわよ。」

 イルムハート達の会話を聞いていたライラが口を挟んでくる。

「もしそうなったら、軍を動かすしか対処する方法はなくなるわ。」

「今の内に俺達でぱぱっと片付けちまう……ってのは無理か、さすがに。」

 この状況ではいくらジェイクでも普段のような大口は叩けないようである。

「当たり前でしょ。どれだけの魔獣がいると思ってるの?

 多分、千人単位の兵士を動員しない事にはどうしようもないわよ。」

 ここの魔獣棲息域は他と比べそれほど大きなものというわけでもない。敢えてランク付けするとすれば下の上、あるいは中の下といったところだろうか。

 それでも、あの広大な王都よりも更に広い面積を持つのだ。その中に棲む魔獣の数がどれほどになるのか、単純には計算出来ないくらいである。

「だよな。例えロードリック先輩達の力を借りたとしても、こればっかりは無理だよな。やっぱり。」

 そんなジェイクの呟きを聞いたイルムハート達は思わずハッとして互いに顔を見合わせた。その顔には何やら不安気な表情が浮かぶ。

「……あのフランセスカさんのことです、この話を聞いたら自分達で全ての魔獣を討伐するなんて言い出したりしませんかね?」

「まさか、いくらなんでもそれは無いだろう……と、思いたい。」

「そうよね、さすがにそこまで無茶な人じゃない……はずよね、きっと。」

「いや、あの人なら言うんじゃないか?」

 しばしの間、重々しい沈黙がその場を支配した。まあ約1名、事の厄介さに気付いているのかいないのか、呑気な発言をする者もいたが。

「ま、まだそうだと決まったわけでもないし、とりあえず確認を優先しよう。」

 やがて、そんな空気にいたたまれなくなった感じでイルムハートが声を出す。

「もう少し近付けば棲息域の全体像まで探知出来ると思う。そうすれば移動したのか縮小したのか、おおよその見当は付くはずだ。」

「そうですね、先ずは事実確認が先ですよね。」

「そうよ、もしかしたら考え過ぎかもしれないものね。」

「……なあ、その前に昼メシにしないか?」

 そんな中、またしても場の空気を読まないジェイクがそう漏らすと「そんなもの馬に乗りながら勝手に食べてなさい!」とライラに一喝されてしまう。

 といったような茶番を挟みながらも、イルムハート達は更に奥へと馬を進めることにしたのだった。


 陽が落ちる頃、イルムハート達は緩衝域の調査を終えデネクの町へと到着した。

 その表情は皆、それぞれ暗い。調査の結果、やはり魔獣棲息域の縮小が確定的となったからだ。

 しかも、一部の大型魔獣までもが棲息域から締め出されうろついることが分かり、現在進行形で縮小し続けている可能性が濃厚となったのだった。

 これは由々しき事態である。いずれはその大型魔獣までもがデネク近辺に出没してくるおそれがあるからだ。

 それだけでも気の重くなる話だった。

 その上、イルムハート達にはもうひとつ頭を悩ませることがある。

「フランセスカさんにこの事を話すのは、やっぱりちょっと不安があるわよね……。」

 トパのギルドで教えてもらった宿を探し町中の道を歩きながら、ライラがポツリとそう口にした。

「でも、さすがに黙っているわけにはいかないさ。いつ大型魔獣が町に姿を現すかわからない状態では、騎士団と協力してそれに対処しなければならないからね。」

 それくらいライラも十分承知しているだろうことはイルムハートも分かっている。だが、それでもそうこぼさずにはいられない気持ちも、また理解出来るのだった。

「警備を増強するまではアタシ達でこの町を護らなきゃならないってのは分かるわ。そのためには騎士団の手も借りる必要があるってこともね。

 でも、それってこの町でじっとしてなきゃいけないってことでもあるのよ?

 魔獣と闘う気満々でいるフランセスカさんが、果たして大人しく町にいてくれるかしら?

 むしろ、この話を聞いたら喜んで討伐に出て行ってしまいそうな気もするのよね。」

「仮に町に留まってくれたとしても、そのせいでフラストレーションが溜まりイルムハート君に勝負を吹っかけてくるかもしれませんしね。」

「笑えない冗談だな。」

 ケビンの言葉にイルムハートの表情が陰る。十分に有りそうな話だけに笑い飛ばすことも出来ない。

「フランセスカさんがどう動くかはともかくとして、どの道情報自体は伝えておかなければいけないだろう。予想外に大物の魔獣まで棲息域から出てきてしまっているんだからね。

 もしそれを知らないまま不意に連中と出くわしてしまったら、例え騎士団でも無傷では済まないかもしれないんだ。

 まあ、フランセスカさんも小隊長を任されるほどの人だ。一見、その言動に問題があるように見えても、いざという時の状況判断を間違えたりはしないはずだよ。」

「それもそうね。」

 イルムハートの言葉にライラはちょっと安心したような表情を浮かべる。

「なーに、心配する事ないさ。厄介事に巻き込まれるなんて今までにも何回かあったけど、何とか切り抜けてきたじゃないか。

 今回だってどうにかなるって。」

 少し重くなりかけた空気を吹き飛ばす意図があってかどうかは分からないが、そう言ってジェイクは笑って見せた。

「アンタのそういう能天気なところ、時々羨ましくなるわよ。」

「そうか?そう言われるとちょっと照れるな。」

「別に、褒めてるわけじゃないけどね。」

 そこから例によって2人の口喧嘩が始まる。どうやら、いつものパーティーらしさが戻ったようだ。

「こういう時、ジェイク君がいてくれると助かりますね。

 あのお気楽な性格でも人並みに生きていけるのですから、深刻に考えるのが無駄なことのように思えてきます。」

 それを見てケビンがしみじみと言う。

「どうせ褒めるならもう少し良い言葉を使ってやってもいいんじゃないか?」

 イルムハートはこれがケビンなりの誉め言葉であることは解かっているものの、それでも思わず苦笑いしてしまうのだった。


 それからしばらくの後、イルムハート達は再び町の外にいた。

 騎士団一行は宿に泊まらず、町の外で野営しているという話を聞いたからだ。

「宿が無いわけじゃあるまいし、何をすき好んで野営なんかしてるんだ?」

 それを聞いた時、ジェイクは不思議そうに呟いた。

「多分、野営も訓練の内ということなのではないしょうか。徹底してますよね。」

 おそらくケビンの言う通りだと思われた。フランセスカにとっての”実戦”訓練は既に始まっているのだろう。

 騎士団の野営地はすぐに分かった。陽もすっかりと落ていたため、そこには火が焚かれていたからだ。

「何者か?」

 近付いて来るイルムハート達を見て、見張りの団員がそう声を掛けてきた。

「私の名前はイルムハート・アードレー。冒険者です。

 最近この辺りに魔獣が出没し始めた原因を調査しているのですが、その件で小隊長殿にお話があります。取次ぎをお願い出来ませんか。」

 今回の件には冒険者ギルドも動いていることをロードリックなりフランセスカなりから聞いていたのだろう。特に疑われることも無く、すぐ取り次いでくれた。

「やあ、イルムハート・アードレー。君の方から会いに来てくれるとは思わなかったぞ。」

 いくつかある内の一番大きなテントの中でフランセスカはイルムハート達を迎えた。

 それにしても、いちいちフルネームで呼ぶのは彼女の癖なのだろうか?

「お時間を頂きありがとうございます、ヴィトリア隊長。

 それと、僕のことはイルムハートと呼んでもらって構いません。」

 そう言った後にイルムハートは改めてパーティーのメンバーを紹介する。トパのギルドで顔は合わせているものの、名乗らせてもらえなかったからだ。

「では、私のこともフランセスカと呼んでくれ。あと、”隊長”も必要無い。」

 部下ではないのだから対等に話してもらって構わない、フランセスカはそう言った。

 こういった開けっ広げなところは彼女の魅力でもある。ただ、それが行き過ぎることもあり、場合によっては難点にもなり得るのだが。

「それで、話とは一体何だ?例の魔力分布の件か?」

 イルムハート達がこの辺りの魔力分布について調査をしに来ていることは既にロードリックから聞いているようだった。であれば話は早い。

「それに関してなのですが……。」

 イルムハートは調査の結果をフランセスカに話した。

「ふむ、魔獣の棲息域が縮小しているというわけか。」

 それを聞いたフランセスカは険しい表情で少しの間考え込んだ後、ゆっくりと口を開く。

「なるほど、そのせいで棲息域を追い出された魔獣が出没するようになったのだな。

 しかも、今も尚小さくなり続けているということは、いずれ全ての魔獣が棲み処を失いその一部が町を襲うという事態も考えられるわけだ。」

 さすがに理解が早い。

「しかし隊長、魔獣の棲息域が消滅するなどということが本当にあるのでしょうか?」

 すると、副官らしい男性がフランセスカにそう問い掛けた。トパのギルドで見かけたもうひとりの男性だ。

「魔力の濃度は地下を走る魔力流によって決まるとされている。地表に近ければその場所の魔力は濃くなるし、離れていれば薄くなる。

 おそらく今回の件はその魔力流が何らかの原因で地下深くへと移動したことにより起きたのだろう。それで一帯の魔力が弱まってしまっと考えられるな。

 魔獣の棲息域が移動した事例は過去にも確認されている。つまり、魔力流が横にズレることは実際にあるのだ。ならば、上下に動くことがあっても別段不思議はあるまい。」

 フランセスカが副官にそう説明する。

 これにはイルムハートも少し驚いた。

 地面から魔力が湧き出しているという事は大方の人間が知ってはいる。しかし、それが地中を流れる魔力の”河”より発生し、その深度により濃度の分布が決まると言う話まで知っている者は少ないのだ。

 事実、ジェイクなどはフランセスカの話を聞いてもキョトンとした表情を浮かべるだけだった。

 まあ実際には検証されたわけでもなくその手段も無い、あくまでも”学説”でしかないため知らなくとも無理のない話ではある。

 だが、フランセスカはそれを知っていた。どうやら彼女はただの戦闘狂……もとい、剣一筋の人間というわけでもないようだ。

 そうして魔力流の説明をし終えた後、フランセスカはさらにこう付け加えた。

「となれば、やるべき事は決まりだな。溢れ出して来た魔獣を討伐するぞ。」

 ……いや、やはり戦闘狂なのかもしれない。これはひょっとして、ライラの不安が的中したのではないか?

 イルムハートがそんなことを考えていると、フランセスカの言葉を聞いた副官が慌てたように声を上げる。

「ちょ、ちょっと待ってください、隊長。

 我々だけで棲息域に棲む魔獣全てを相手にするのはさすがに無理があるのではありませんか?」

 尤もな意見だった。だが、それに答えるフランセスカの口調は少し呆れているようにも聞こえた。

「誰が全ての魔獣を相手にすると言った?そんなわけがあるまい。一体どれだけの数がいると思っているのだ?」

「では、町の周辺にいる魔獣を討伐するということでしょうか?」

「莫迦め、そんなことをしたところで大して意味などありはしない。」

 イルムハートは副官がちょっと気の毒になった。実際、フランセスカの話は要領を得ないのだ。

「いいか、我々が相手をするのは棲息域からデネク側へと溢れ出て来た奴等だ。これを徹底的に狩る。奴等にデネクへ向かえばどうなるか、身をもって教えてやるのだ。

 魔獣とて危険を回避するだけの知恵は持っている。デネクへ向かうのが危険だと分かれば当分の間近付いては来ないだろう。その間に町の護りを強化するなり討伐軍を編成するなりすれば良い。つまり、それまでの時間稼ぎが出来るというわけだ。」

 なるほど、とイルムハートは感心した。実に理にかなった案である。僅かな時間の間にこれだけの判断が出来るとは並みの才覚ではない。

 騎士団長が敢えて不安視する周囲の声を押し切ってまでして小隊長へと昇格させただけのことはある。

 ただ、これには多少の不安要素もあるにはあった。

「すみません、ひとつ気になる点があるのですが、よろしいですか?」

「何だ?言ってみてくれ。」

 イルムハートにそう口を挟まれてもフランセスカは不快な顔はしなかった。むしろ、楽しんでいるような表情さえ浮かべていた。

「はい、魔獣達に危機感を与えるためにはそれなりの数と相手を倒す必要があると思うのですが、今のところまだそれ程には溢れ出して来ていないようなんです。

 小型や中型の魔物であればそこそこの数はいるのですが、それを倒したところで効果は薄い様に感じます。」

「つまり、もっと大物を倒す必要があるということだな?それも数多く?」

「そうです。ですが、あいにくと大型の魔獣はまだ僅かしか棲息域から出てきていませんので……。」

「ならば、おびき出せば良い。」

「は?」

 フランセスカの言葉に意表を突かれイルムハートは戸惑いの声を上げた。

「おびき出す?」

「そうだ。闘気をぶつけることで相手の注意を向けさせることは出来る。要は挑発だな。

 魔法士の場合、魔力をぶつけることで同様のことが出来ると聞く。しかも、闘気の場合よりさらに遠くの相手に対してもだ。

 その方法で棲息域から大物をおびき出してしまえば良いのではないか?どうだ、出来るか?」

「まあ、それは可能ですが……。」

 ある程度予想はついていたが、どうやらフランセスカの作戦には既にイルムハート達も戦力として組み込まれてしまっているようだ。

 まあ、それは良い。元々、傍観者でいるつもりなどなかったのだから。

 ただ、今のフランセスカの言葉には少なくない不安を感じていた。

「……どのくらいの数を、ですか?」

 おおよそ、その答えを予測出来てしまう質問ではあったのだが、何とかそれが外れてくれることを祈りながらイルムハートは問い掛ける。

 しかし、そんなイルムハートの想いをあっさりとへし折りながら、フランセスカは実に楽しそうな笑顔でこう答えたのだった。

「勿論、可能な限りの全てをだ。」

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