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9 アルフォンス殿下の来訪

「やぁ、ナターシャ」


 やぁ、じゃないんですよね~。何していらっしゃるんですか、アルフォンス殿下。我が家のサロンで。


 ちなみに、昨日の今日のできごとです。いきなり表舞台に出てきて大丈夫ですか。


 病弱でお名前すら高位貴族の我が家にすら伏せられていたとされていたお方が、白昼堂々、略正装で弟君の元婚約者の家を訪れているとは……。


「ナターシャ。アルフォンス殿下はこれより表舞台に立たれる。本日は、私に後ろ盾になって欲しいということを挨拶しにこられたのだ」


「……お父様、知ってらしたのですね?」


「私はこの国の宰相だからな。むろん知っていた。アルフォンス殿下はお命を狙われること以外は安心して国を任せられるお方だ。私、及び私を筆頭とした保守派の派閥はアルフォンス殿下の王位継承権第一位を推していく」


 いやにイキイキしていますね、お父様。アルフォンス殿下もわたしへの好意の視線を隠そうともしていません。


 これは……もしや、わたしまた王家の方との婚約になるのでしょうか? お母様もお兄様もいない話し合いに、わたしが『お客様がいらしています』と呼ばれたのはそういうことでしょう。


 しかし、王位継承権第一位にアルフォンス殿下がつかれればのお話です。


 さきほど、お父様が言ったように、この国の貴族は3つの派閥に割れています。


 現国王陛下のやり方をもとに国を発展させていこう、という保守派。2番目に数が多いです。お父様が筆頭で、わたしに過密スケジュールをしいたのも、パーシバル殿下が表舞台に立った時に私が守るためです。パーシバル殿下が無駄にしてくださいましたけどね、あのバカ。


 次いで、現国王陛下のやり方に反発を覚え、税制改革やら領地の割り振りを改めるべき、爵位も見直すべきと提唱する改革派。1番数は多いのですが、こちらは伯爵以下の爵位の方々が多いです。つまりは、もっと甘い汁吸わせろ! という考えの方々ですね。パーシバル殿下推しです。


 最後、中立派。名前の通りどちらにも属しません。パーシバル殿下が操られた時には多少の手助けはしますけどね……、と王族のやり方を見守っている方が多いです。国が荒れるのを避けたいという方もここに属していますね。


 そして全ての貴族の方々にとって、パーシバル殿下とわたしはセットで考えられていました。パーシバル殿下ひとりなら御しやすいのにとほぞを噛んでいた改革派が、今がチャンスとばかりに活気付いています。


 自分の娘との結婚どう?! ってやり方で。


 で、その動きが本格的になる前にアルフォンス殿下は動き出したのでしょう。今はちょうどパーシバル殿下が空いてますからね、その隣に我が家の娘をそえたい、と改革派はそちらに忙しいところでしょう。


 山積みの見合いの申し出に陛下は囲まれているかと思いますが、それもあってアルフォンス殿下が後ろ盾を得て正当な王位継承権第一位を獲得されるために動くのを許可したのでしょう。


 今まで病弱で……という理由で秘されてきたお方です。後ろ盾がなく、いきなり王位継承権第一位と言われても納得しない方が多いはず。特に改革派なんかは、王族が嘘をついていた! なんて騒ぎ出しかねません。それを守るための後ろ盾です。


 結果的に保守派のお父様の所にきたのは正解です。こちらは高位貴族や臣民を思う貴族の方々が多い派閥ですし、貴族裁判についても設立に関わった方が多い公平性を重んじる方が多いです。


 アルフォンス殿下の事情についても各々お調べになると思いますが、アルフォンス殿下が嘘をつく理由はありません。


 信用を得ようという時に、誇張や嘘は何よりも邪魔なものです。


「で、わたしはなぜ呼ばれたのでしょうか?」


「顔が見たかったそうだ」


「私が頼んだ。一緒にお茶を飲みたくてな」


 お仕事でいらしているのにめちゃくちゃ私用じゃないですか!


 と、ここでメイドが私にお客様ですと呼びにこられました。


 はて? 私は学園では学業優先、友人というものもいなかったので誰か訪ねてくるなんて考えてもいなかったのですが。


「フィーナ・カルティエ伯爵令嬢とおっしゃる方がいらしております」


 わたしは目を丸くして、いったい何の用だと思いながら玄関に向かいました。


 家にあげる? ありえませんから、そこでお話を聞いてきます。

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