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12 貴族裁判

「これより、カルティエ伯爵によるフォレスト侯爵家の殺人未遂容疑による裁判を開始する」


 散歩の翌日、すぐさま貴族裁判となりました。証拠のマカロンが日持ちしないこと、直接わたしが襲われたことが原因です。


 訴えを出したわたしたちフォレスト家は裁判官から右手、訴えられたカルティエ伯爵家は左手です。


「この件でフォレスト侯爵家の訴えが実証された場合、カルティエ伯爵家には国王陛下より追って沙汰がある。それまで王宮にて監視がつく。また、フォレスト侯爵家の訴えが正当でなかった場合、虚偽の訴えを起こしたとして法に則り厳罰に処す。では、まずフォレスト侯爵家より証言と証拠の提示を」


 えーと、あまりにもバカらしいので、わたしがダイジェストでお送りしますね。あまり堅苦しいのもいかがなものかと思いますので。


 まず、カルティエ伯爵家の方は伯爵そのひとと奥様、そしてフィーナ嬢ですが、みなさま顔面蒼白で震えていました。なんでやろうと思ったんでしょうね。万が一フォレスト侯爵家が一家そろってばたばた死んでいたら、フィーナ嬢が持ち込んだマカロンが死因だとすぐに分かるのに。


 で、こちらからは暴漢の服装をしたカルティエ伯爵家の私兵5名(カルティエ伯爵と親交のある他の貴族の方の私兵の方の身元保証つき)、マカロン製造元であるお店の買収された下働きの店員(梱包担当だそうです、その時に毒を仕込んだのはすでに怒れるお兄様が吐かせています)、で、物証のマカロン。


 それから、フィーナ嬢が並ばずに店に入り品を受け取ったという証言多数と、その日の馬車の動きの調査結果。


 溢れんばかりの証拠ですね。これで逃げ切れると考えていたのならあまりにもこちらを舐めすぎです。


 しかし、死人に口無しとも言いますからね。うちは王家ではないので毒味役などはいませんし、食後のデザートとして出していたらいっせいにバタバタ死んでいたかもしれません。


 毒に耐性があるアルフォンス殿下が異常なんです。……本当に、感謝しかありません。


 彼はいったいどんな気持ちで目の前で亡くなっていく毒味役の方を見ていたのでしょうか。どんな覚悟で自ら毒をあおって耐性をつけようと思ったのでしょう。そして、王位継承権を譲って影から弟を、国を守ろうと……。


 考えていたら泣きそうになりました。いけません、今は裁判のさなかです。


 ここまで証拠がそろっていて、カルティエ伯爵には反論材料がないようです。当然といえば当然、これで反論できたらすごいものです。


 決め手はあれですね、では毒が入ってないというのならご家族それぞれひとつずつ食べてみよ、という。食べませんよね、死にますから。


 そんなわけでカルティエ伯爵家は王宮にて謹慎、屋敷もすべて押さえられ、追って陛下の沙汰があるまで何も自由にできません。


 フィーナ嬢が最後にわたしを睨みました。お門違いですよ。


 あなたが真面目に授業をうけ、本当に国王の妻になろうと努力をし、その結果パーシバル殿下のお心を射止めていたのなら。


 こんな無様な最後にはならなかったのです。


 わたしはただ、静かな視線で彼女を見送りました。


 そして、傍聴席にいらしたパーシバル殿下も。


 元婚約者と婚約者にすらなれなかった恋人の裁判です、みずからのまいた種だと理解する頭はあったようですね。


 パーシバル殿下はもう、だめでしょう。これから改革派がいくらパーシバル殿下を推したとしても、アルフォンス殿下の登場と同時に王位継承権は彼にうつるはずです。


 バカなひと。かわいそうに。わたしはそうとしか思えませんでした。憂えていたように、パーシバル殿下が王になっていたら、こんな争いがあちこちで起こったことでしょう。


 国、かたむくまえでよかったです。

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