表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルモアの星伝説  作者: トド
8/38

第八話 黒の賢者からの依頼

「なんと!!ネルソンがドルドガの村に!?」


リサから事の顛末を聞いたガルダインは、意外な話に少し驚いた様子であった。


「うん、あっと言う間に全部の魔物をやっつけちゃったよ!」


「そうか、それはよかった。しかし、やはり王の派遣した兵士たちは間に合わなかったのだな?危ないところじゃった・・・」


ガルダインは眉間に深いシワを寄せて唸った。


「でも、ここにいる皆もがんばったんだよ!ね、ネイル!」


「お、おう!オレ達も結構頑張ったよな、アレン!!」


「うん、あともう少し遅かったら、今頃エレナやリサ達は・・・」


ガルダインは、そう話すリサの仲間たちを見て、リサに催促した。


「リサ、この頼もしいお前の友達をワシに紹介してくれぬか」


リサは改まって俺達の方を振り向き、塔の主を紹介してくれた。


「あのねみんな、リサのおじいちゃんの名前はガルダインって言うの。この塔に住んでいるのよ」


ネイルは引き継いでリサの言葉を補足した。


「ガルダインさんは、通称”黒の賢者”と呼ばれ、暗黒魔導師の総帥であり、そのルーツは、アルモアの伝説に出てくる三人の勇者の一人なんだぜ!」


「えっ!じゃあ、あの白の賢者ネルソンと言う人と同じ・・・」


「あのね、おじいちゃん!ネイルの隣にいるのがアレン。ドルドガ鉱山で働いていて、爆弾使いの名人なの。剣の腕前もすごいのよ!!」


「で、その隣がエレナ。お姉ちゃんはね、事故で記憶を無くしちゃって、自分の名前以外なんにも思い出せないの。かわいそうでしょ?」


そこまで話すと、リサはある重要な事を思い出した。


「あ、そうだ!!あのね、あの魔物どもったら、エレナを狙っていたのよ!」


リサの言葉におどろいたガルダインは、アレン達に尋ねた。


「何じゃと、それはどういう意味じゃ?今回各地で起こった事件は、若い女性を連れ去ろうとしていたと聞くが、ドルドガの事件だけは、特定の女性を狙っておったと言うのか?」


ネイルはガルダインの問いに答えて、「そうなんですよ、ガルダインさん。ここにいるお嬢さんを狙っていたみたいなんですよ。」


「で、オレの思うのには・・・」


「あんたはそれ以上喋らなくてもいいの!!」


リサが慌てて止めた。


「エレナさん、と申されたの・・・。自分が魔物どもに狙われることに対し、何か思い当たる節はござらぬか?」


「・・・・・・・」


答えられないエレナを見て、ガルダインは他の者に尋ねた。


「ふむ、では他の者に聞くが、魔物がこの娘さんを狙った理由は何だと思う?

魔物との戦いの中で、何か気づいた事はなかったかの?どんな些細な事でもよいぞ」


その時アレンがある事を思い出した。


「そう言えば、確かあいつら、

ミコ・・・・。たぶん神に仕える巫女の事だと思うけど、巫女を捜せ・・・。巫女を殺せ・・・・って言っていたな・・・」


ガタッ!!


アレンのその言葉を聞いた途端、エレナが急に立ち上がった!

顔が蒼白になり、目の焦点が合わずに身体がガタガタと震えている・・・・。


アレンはエレナの態度が急変したのに驚いて、声を掛けたが、エレナには聞こえない。

アレンの言葉がきっかけとなり、フラッシュバックを引き起こしたのだ。




「巫女を・・・・・捜せ・・・・・・」


今エレナの目に見えているのは、激しく燃えさかる赤い炎だけであった。

その炎がユラユラと陽炎の様に揺らいでいる。

他のものは何も見えない・・・・。

その炎の向こうで、誰かが声を出して叫んでいるようだが、それも分からない。


<巫女をさがせ!!風の谷の巫女を捜せ!!テローペの巫女を捜せ!!!>


<巫女は殺してはならぬ!!!!巫女に怪我を負わしてはならぬ!!!>


<巫女を捕まえろ!!!・・・・それ以外の者は皆殺しにしてしまえ!!!!>



「風の谷・・・。テローペの巫女・・・」


エレナがうわごとの様につぶやく・・・。


「ハッ!!」



そして今度は、はっきりとした口調で叫んだ!


「風の谷テローペ!!!」


「アレン!私の生まれ育った所はテローペ!!風の谷テローぺよ!!」


*エレナは風の魔法トルネードを思いだした。


「エレナ!!記憶が戻ったんだね!!!」


アレンは慌ててエレナに駆け寄った。


「あ!」


「・・・・ううん、これだけしか思い出せないの・・・・」


「そうか、でも、少しでも思い出せたんだから、きっと今に全部思いだせるよ!良かったねエレナ」


「うん!ありがとうアレン」


「おじいちゃん、テローペって知っている?」


「テローペ・・・。う~む・・・。聞いたことがあるような気がするのじゃが。はて、思い出せぬわ」


「そっか・・・。おじいちゃんが知らないのなら、きっと遠い国なのね。あ、そうそう、お姉ちゃんたちなんだけど~。魔物に狙われているから、この街に来てもらったの。おじいちゃん、守ってあげてね」


ガルダインは大きく頷き、そして話を切り出した。


「その事なんじゃが、リサよ!お前も含め、ここにいる皆に頼みたい事があるのじゃ」


「えっ?おじいちゃんがリサ達に?」


「そうじゃ、事ここに至っては、もはや秘密にする事は得策ではない。皆にこの事実を知ってもらい、協力してもらわねば、このお嬢さんを救うことは出来ぬ事態となったのじゃ」


「皆も今度の魔物騒ぎで、何か異変が起こりつつあることは、薄々と感じておると思うが、事態は深刻なものとなった」


「実は伝説の魔王が復活したのじゃ!!」


「えーーーーーーっ!!!」


皆が一斉に声を上げた。


「だが、魔王が復活する事は、魔王を倒した時から既に分かっておったのだ。今から二千年も前からの・・・」


アレンはガルダインに尋ねた。


「どうして魔王が復活する事が分かったのですか?

もしかして、本当は魔王を倒していなかったのですか?」


「いや、魔王を倒したのは間違いない。だが、それは魔王の実体だけで、魂は滅んではいなかったのじゃ!」


「そこで時の人々は、魔王を完全に滅ぼす方法をあみ出したのじゃ!魔王が再び肉体を取り戻し、蘇った時のためにな・・・」


そう言うと、ガルダインは魔法で一冊の本を出現させた。


「この本にその方法が記されておる。全部で三巻からなる、キングラムの黙示録じゃ」


「キングラムの黙示録!?」


「その本の話は聞いたことがあるぜ!オレ達トレジャーハンターの間では、値のつけようのない伝説のお宝だ」


「そうじゃ。魔王を倒した三人の勇者に手渡された伝説の黙示録。これには魔王を倒すのに必要な、二つの魔法の事が記されておる。だが困った事に、この二つの魔法のある場所と、使う方法を記した第三巻の行方が分からぬのじゃ」


「じゃあ、魔王を倒す魔法は使えないのですか?」


アレンは恐る恐る尋ねた。


「そうじゃ!しかし、このまま放っておいたのでは、魔王の支配する闇の世界になってしまう!何としても黙示録を探し出し、魔王を永久に葬り去らねばならぬ!そのために、お前たちの力が必要なのじゃ!」


ガルダインはここまで話すと、アレンをその鋭い目で直視した。


「アレンと申したな。お前さんは、爆弾使いの名人と言うではないか。ぜひその腕をワシに貸してほしいのじゃが、いかがかな?」


「これからワシがお前たちに頼むことは、その技術を持つ者でなければ無理な事じゃからな」


アレンは即答した。


「わかりました。それがエレナを救う事になるのなら!

俺に出来る事があれば何でも手伝います」


ガルダインは、アレンの頼もしい言葉に頷くと、


「うむ、では頼むとしょう。

アレンよ!ジュダの街から南に行くと、”マードラの遺跡”がある。

そこにある古い書物を持ち帰って欲しいのじゃ」


エレナが尋ねた。


「古い書物?それが、その・・・黙示録の第三巻なのですか?」


「いや、いや。そんな簡単に見つかると苦労はせぬよ。はっ、はっ、はっ・・・」


「実は第三巻を持つと思われる、もう一人の勇者の事は何一つ分からんのじゃよ。

そこで、その時代の事を調べたいと思っておるのじゃが・・・」


「ここで少し、この世界の時代の事を説明するとしよう・・」


そう言うと、半分眠っていたネイルを一括した。


「ネイル!目を開けておるか?!」


慌てて飛び起きたネイルを確認すると、ガルダインは話を続けた・・・。


この世界の歴史を大きく分けると、三つの時代に分けることが出来た。

第一期と呼ばれるのが、キングラムの栄えた黄金の時代と言われており、魔王が現れた暗い時期もあったのだが、それでも魔王の恐怖の去った後、この国はさらに永きにわたり栄え続けた。だが、栄華を極めた国は必ず衰退の道を歩むもの・・・。

やがてキングラムの強大な権力も弱まり、この広大な大陸を三人の王に譲り、自らは辺境の地へ隠れたのである。


第一期の黄金の時代は、キングラムの衰退と共に終わり、第二期の銀の時代が訪れるのだが、この時代は三つに分かれた国同士が争う戦乱の時代であった。

ジュダ、ソーネリア、ドリガンの国が互いに争い、その覇権をめぐって戦う長い戦乱の時代であった。だが、その長き戦いもようやく終わりの時を告げる。

暗黒魔法を極めるガルダインの一族と、聖魔導士を束ねるネルソンの一族とがソーネリアの王に協力し、再び国を一つにまとめ、この戦乱の世を終わらせたのである。



「それじゃあ今の時代は、キングラムに代わってソーネリアがまとめる第三期なのですね」


アレンが尋ねた。


「うむ、その通りじゃ。では、話を現在に戻そう」


「第一期の終わり頃に、ミューゼという有名な吟遊詩人がおった。その者は生涯をかけ、キングラム王家に伝わる伝説を一冊の本にまとめたのじゃ。

その本はミューゼの死後、人から人へと渡り、第二期の終わり頃にジュダの王に献上されたと聞く。ここから南にあるマードラの遺跡は、第二期に栄えたジュダの王が住んでおった城じゃ。」


「ミューゼの書があれば、伝説のキングラムの事や、第三の勇者の謎が解けるかも知れぬのじゃ。危険な場所だが、この仕事はお前たちに頼まねばならぬ。なぜならワシは急いでソーネリアへ行き、王やネルソンと会わねばならぬからじゃ。もたもたしておっては、取り返しのつかぬ事態になってしまう」


そこまで一気に話すと、ガルダインはアレン達に向き直った。


「アレンよ、後は頼んだぞ!」


「ネイルよ!お前に依頼した赤い結晶石は、マードラ遺跡の探索に必要な物じゃ。無くさぬようにな!!」


と、締めくくった。


「ええっ!!?オ、オレも行かなきゃならないんですか?」


ネイルは驚いてガルダインに聞き直した。


「何じゃ?嫌なのか?」


ガルダインは威圧するように、鋭い目でネイルを睨んだ。


「い、いや・・・。別に嫌じゃないですけど、まだ報酬も頂いていないし、それにオレ、ちょっと行きたい所もあるんで・・・」


ネイルの声はだんだん小さくなり、最後の言葉はほとんど聞こえない。


「報酬の5000ゴールドは、リサに渡しておこう。行きたい所があるのなら、この仕事が終わってからにすればよいのじゃ!」


「そ、そんな~~~」


さすがのネイルも、ガルダインを相手にこれ以上は何も言えず、ガックリと肩を落とし、渋々引き受けるのであった。


トボトボと去っていくネイルの後ろ姿を見送ったガルダインは、立派な髭を手で撫でながら、何やら難しい顔で思案していた。


「風の谷・・・テローペの巫女・・・・」



塔の外に出ると、ネイルがアレンに話しかけた。


「おいアレン、大変な事になったな。

お前、簡単に引き受けたけどよ、マードラの遺跡は恐ろしい所らしいぜ!」


「え!?恐ろしいって、一体どんなふうに?」


ネイルは白目をむいて、恐ろしい顔をして見せた。


「出るんだよ!アレが・・・」


このネイルの話に即座に反応したのは、好奇心の塊リサだった。


「アレって何さ?」


ネイルは手で首を絞める真似をし、さらに苦しそうな顔をして、


「アレって、アレに決まっているだろ! お ・ ば ・ け !だよ!!」


「ええ~~~っ!!!お、おばけ~~~~~っ!!!」


「うそ!?」


エレナもさすがに驚いて、ネイルにその訳を聞いた。


「あそこは昔、戦争でたくさんの兵士が死んでいったからな・・・。

それにジュダの王というのが欲深いヤツでよ。自分の宝を取られるのが嫌で、城を荒らしに来る連中を襲うんだってよ!」


「ひぇ~~~~~~っ!!」


リサが青い顔をして悲鳴を上げている。


「じょ、冗談だろネイル」


アレンも、ちょっとビビッたようだ。


「ま、オレもよその墓荒ら・・・いや、トレジャーハンターから聞いた話だからな。

本当の事は分からねえよ。とにかく、マードラの遺跡に行く前に、街で情報を集めなきゃな」


「で、情報集めと言えば、当然人の集まる酒場だろ?」


ネイルはそう言うと、さっさと酒場へ向かって歩き出した。


俺たちも一緒に行こうとしたが、その時リサが固まっている事に気づいた。


「リサ、どうしたんだい?大丈夫かい?」


「あわわわ・・・・・・」


子ども扱いされるとキレるリサだが、さすがにお化けは苦手らしい・・・・。

このへんは、やっぱりまだまだ子供のようだ。


街の酒場では、ネイルはかなりの顔利きのようで、店の女性たちからもモテモテの大人気であった。

確かにネイルは美男子で、ニヒルな大人の雰囲気を持っている。それに平気で女性を口説く特技を持っているので、そんな事が出来ないアレンにとっては、ちょっと羨ましく思ったりもするのだが・・・。

そのネイルのお陰で、情報の収集はスムーズに行う事が出来た。


街の情報をまとめるとこうだ。

*マードラの遺跡は昔この国を治めていた王の城で、荒らしに来る者を王の亡霊が襲うらしい。

*マードラの遺跡に入った者は、みんな呪われて生きて帰れない。

*マードラの遺跡の近くには、アーズという村がある。

*マードラの遺跡の近くに死者の谷と呼ばれるところがあり、そこにはすごい宝が隠されているらしいが、その入り口を見つけた者はいない。

*マードラの遺跡の近くには、ジュダの王様が隠したすごい財宝が眠っている所がある。たくさんのトレジャーハンターが捜しに行ったけど、だれも戻ってこない。


とまあネイルの言うように、ろくな噂は無かった。

とりあえずアーズの村を探索の拠点にする事で話はまとまり、俺達はもらった報酬で、武器や防具を強化する事にした。



ネイル   トレジャーハンター

武器    トゲのムチ

エスケープ 洞窟の中などから外へ脱出

レイズ   戦闘不能から復活させ、体力を10%の回復させる


リサ    魔法使い

武器    ウイザード・ロッド

レイズ   戦闘不能から復活させ、体力の10%を回復させる

ファイア  敵単体に炎属性のダメージを与える


エレナ   テローペの娘

武器    クロスボウ

レイズ   戦闘不能から復活させ、体力の10%を回復させる

リカバー  味方全体の体力を30ポイント程回復させる

トルネード 敵全体に風属性のダメージを与える


アレン   鉱山の青年

武器    鋼の剣

ヒール   味方単体の体力を40ポイント程回復させる

キュアー  毒状態を回復する

レイズ   戦闘不能から復活させ、体力の10%を回復させる



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ