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アルモアの星伝説  作者: トド
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第六話 旅立ち

無事ドルドガの廃鉱で赤い結晶石を手に入れた俺達は、いよいよジュダに向かって出発することとなり、俺とエレナは、村長の家に挨拶に行った。


「おお、そうか、いよいよジュダへ出発するのか・・・」


「はい、いろいろとお世話になりました」


村長はエレナのあいさつに頷くと、こう告げた。


「村の警備に来た兵士の話ではのぉ、えらい勢いで魔物の数が増え続けておるそうじゃぞ。

もう一人で旅を出来るような、そんな平和な世の中では無くなってしまったそうじゃ。

あの事件以来、この村の周りにも魔物が頻繁に現れるようになってしもうた。

どうやら、いま世界は暗い闇に向かって進んでおるようじゃ」


「エレナよ、その様な時にお前がこの村にたどり着いたのは、これはひょっとすると神様のお導きによるものかも知れぬ・・・」


「えっ?神様が?!」


「そうじゃ。お前たちの出会いが、何やら目に見えぬ運命の糸によって、定められていたような気がするのじゃよ」


「運命の糸に・・・」


二人は思わず顔を見合わせた。


「アレンよ!ワシはお前の父と母から、お前の面倒を見てくれと頼まれておった。じゃが、お前の両親がこの村を出てからもう1年になる。ワシは方々知人やこの村を訪れる旅人達から、心当たりは無いか尋ねてみたのじゃが・・・。いまだに何の情報も得ておらぬ・・・」


「しかしこの1年の間に、アレン!お前は心優しく、逞しい立派な男に成長した。

かかる上は、ワシはもうお前をこの村に引き留めておきはせぬぞ!お前は自分の意志で、これから待ち受ける試練に挑むがよい!!」


「はい!村長」


「お前たちは今、ジュダへ向かって旅立とうとしておる。じゃが本当の旅の終点はジュダではないじゃろう。アレンよ!再び元の平和な世界に戻ったら、きっとここへ戻ってくるのじゃぞ!!エレナを連れての・・・・」


「そうですよ。あなた達二人は、この村にとっても、私たちにとっても、大切な家族ですから」

そう言うと、村長の奥さんが俺たちにお弁当を渡してくれた。


「では、達者での」


「気をつけて行くのですよ」


村長と奥さんは、そう言って二人を見送った。


村長の家を出で、リサとネイルが待つ場所まで行く途中、俺はあることを思い出した。


「そうだ!俺、家に大事な物を置いたままだったよ。しばらくの間ここへは帰れないから、ちょっと取ってくるよ」


「ごめんねアレン。私のせいでこの村を・・・」


エレナは申し訳なさそうな顔でアレンを見た。


「なに言っているんだよ。そんな事当たり前じゃないか!

もしキミに何かあったら、俺は・・・」


そこまで言って、あわてて後の言葉をにごした。


「俺は・・・なに?」


「あ、いや・・・。は、は、は・・・」


「俺もうずっと前から決めていたんだ!キミの記憶が元に戻るまで、俺が守ってやんなきゃって・・・」


「だって、この村にキミを連れてきたのは俺だからね。ちゃんと最後まで責任を持って面倒を見なきゃ!は、は、は・・・」


エレナは話が最後まで聞き取れなかった事が気になったようだが、まさか「キミに何かあったら、俺は生きては行けない・・・」などと、恥ずかしくて本当の事が言えないので、必死にごまかしたのである。


「アレン・・・。ありがとう!」


「は、は、じゃあ行こうか」


「うん」


「あ、あった、あった。これだ!」


戸棚の引き出しからようやく見つけた大事な物を、アレンはテーブルの上にそっと置いた。

それはダイヤモンドのようにキラキラと美しい輝きを放つ、不思議な玉であった。


「うわっ!きれい!!」


「アレン、これは?」


「これ、”イリヤの涙”って言うんだ」


「イリヤの涙?」


「アルモア王が星になった時にね、石像になったイリヤ王妃の目から、ポロポロと零れ落ちた光の玉なんだって」


エレナはその美しい光の玉を不思議そうに見つめ、アレンに尋ねた。


「ふ~~ん・・・・イリヤの涙かぁ・・・・」


「ねえアレン、これって何に使うの?」


「さあ?オレも何に使うのか知らないんだ。とても大切な物だから、絶対人に見せちゃいけないって、父さんと母さんから言われていたんだけど・・・・」


その時、エレナはふと村長の言葉を思い出した。


「アレンのご両親・・・。1年前に村を出たって、村長さんが言っていたけど・・・」


「うん。母さんは、すぐに帰って来るって言ったんだけど・・・」


・・・・・・・・

・・・・・



<1年前アレンの家>


長い赤い髪を両脇で束ねた、上品な感じの美しい女性と、立派な口ひげを蓄え、がっしりとした体格の大柄な男が、ベッドで眠るアレンを見つめていた。

母エミリヤと、父ジェイドである。


「よく眠っているわ・・・」


エミリヤは、幸せそうに眠っているアレンの寝顔を見て、そうつぶやいた。


「そうだね、今日はこのまま寝かせておいてあげよう」


そういうと、ジェイドとエミリアはアレンの部屋を出た。


「ジェイド・・・。テローペからの報告は本当かしら?」


「どうかな?それは行ってみなければわからないさ。だけど・・・」


「だけど?」


「キミも感じているだろ?はるか西の最果てから来る、冷たく深い闇の気配を・・・」


「近頃、アルモアの星の瞬きが急に早くなったわ」


「とにかく、私たちは早急に旅立たなければならない」


「そうね、”あの御方”の身にもしもの事があれば、この世は闇に飲み込まれてしまうわ」


「そう、すべての命あるモノの自由は奪われ、暗い絶望の時代が訪れる・・・」


ジェイドは眉間に深いしわを寄せて、そうつぶやいた。


「アレン・・・・。ああ、この子が立派に育つまで、その時は来て欲しくなかった・・・。

いいえ、この子の生きている時代にも、そしてこれから先もずっと・・・・」


エミリヤはアレンの寝室に戻り、愛おしい我が子の寝顔を見つめ、そう嘆いた。


「させないさ、闇の支配する時代などに!!この忌まわしい戦いに終止符を打つ事!それが私たちの使命なのだから!!」


「そうね、でも、アレンは・・・」


エミリヤの言葉に、ジェイドは首を横に振った。


「アレンには・・・。この子には、彼の地までの旅はまだ厳しすぎる」


「でも・・・。もし、わたくし達の身に何かあって、このまま帰らなくなったら・・・」


「エミリア、滅多な事を言うものじゃない。私たちが戦いに敗れることはあってはならないのだ」


「古の戦いの後、この日の来ることはすでに分かっていたのだ。その日に備え、二千年の永きに渡り、我が一族は戦いの準備を引き継いできたのだから・・・」


「・・・・・・・・」


エミリアは無言で、頷いた。


「それに、まだ決まった訳じゃない。この子をどうするかは、事の次第がハッキリしてから考えればいいさ」


「そうね、無理にこの子を辛い旅に連れて行かなくてもいいわね」


「そうさ、テローペに着いてから考えればいいんだよ」


「ええ、そしてもしもの時は、わたくしがアレンを迎えに戻るわ!!」


勿論、この父と母の会話の事は、眠っていたアレンには知る由もなかった。

いや、もし聞いていたとしても、彼にはまだ理解できる話ではなかっただろう。





「うん。母さんは、すぐに帰って来るって言ったんだけど・・・」


そうエレナに言うと、アレンは一年前の父と母の旅立つ姿を思い出した。




そこには村の出口にたたずむ父と母の姿があった。


「それでは村長、後の事は頼みます」


ジェイドはそう言うと、村長に頭を下げた。


「おお、ワシに任せておけ!なんも心配せずともよいぞ!!」


「アレン。母さんはすぐに帰ってきますからね、いい子で待っているんですよ・・・」


「母さん、俺もう子供じゃないよ!心配しなくても大丈夫だよ!!」


「そうね・・・」


「アレン。もし父さん達の帰りが遅くなったときは、ソーネリアで宿屋を営むジムリと言う人を訪ねなさい。彼にはお前の事を連絡しておくから」


「うん、わかった!!じゃあね、お土産を忘れないでよ」


「気を付けて行くのじゃぞ」


「それじゃあ皆さん、あとの事はよろしくお願いします」


大勢の村人たちが見送る中、二人は村を去って行った・・・・。



アレンは、父と母の姿が見えなくなるまで見送っていたあの日の事が、まるで昨日の事のように思い出された。


「すぐに帰るって言ったのに・・・」


「アレン・・・・」


そうつぶやくアレンに、エレナは心配して声を掛けたが、ふと思い出したように尋ねた。


「ねえ、アレン。そのソーネリアのジムリって人の所へはもう行ったの?」


「えっ?」


「あ、忘れてた!そんなことすっかり忘れていたよ!」


「うっそーーーー!信じられない!!」


「だってこんな話、今まで誰にもした事がなかったから、今の今まで思い出さなかったよ」


「じゃあ、行ってみましょうよ!」


エレナは、今からすぐにでも行くような勢いで、アレンを急かした。


「え?でも、あれからもう1年も経っているんだよ」


「それに今はジュダに行くのが先だよ。さ、そろそろ行かないと、きっとネイル達は待ちくたびれているよ」


「え、ええ、そうね!」


エレナは二人を待たせていた事を思い出し、アレンと村の出口へと向かった。


村の出口では、ネイルとリサが二人の来るのを待っていた。


「よお、早かったな!もう村の皆とお別れのあいさつはすんだのかい?これからしばらくの間は、村の人たちとも会えなくなるからな、お別れを言うのは今のうちだぜ」


俺はいつでも出発できると、ネイルに伝えた。


「そうか、じゃあ出発だ!」


「ジュダの街までの予定は15日間だ!楽しく行こうぜ!!」


こうして、不思議な縁で出会った俺達四人は、意気揚々とジュダの街へ向けて旅立つことになった。

だが、これは果てしない旅の、ほんの始まりに過ぎなかった。

アレン達四人の運命の歯車は、いまようやくカラカラと音を立てて動き出したばかりなのである・・・。



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