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アルモアの星伝説  作者: トド
30/38

第三十話 氷の洞窟

一方その頃、ドリガンの城では重要な会議が続いていた・・・。


「何ですと!アレンがマイヤの騎士の息子ですと?!!」


「いかにも!」


驚くガルダインに、ボルグは大きく頷いた。


「ガルダイン、おぬし、その者を知っておるのか?」


ネルソンがガルダインに尋ねる。


「う~~~む。ただ者では無いと感じてはいたが、まさか捜しておった黙示録第三巻を持つ勇者の息子とは・・・。このワシとした事が、何ともマヌケな話よ・・・」


ガルダインは沈痛な面持ちでつぶやいた。


そう嘆くガルダインに、ボルグはなだめる様に言う。


「いや、そう落胆めさるな、ガルダイン殿。本人もその事はまったく知らなかったのですからな。このワシですら、最初は気づかず、危うく見過ごす所でした」


その言葉を聞いたフラム王は、ボルグに疑問をぶつけた。


「本人も知らなかった?ではボルグ殿はどうして彼がマイヤの騎士、ジェイド殿の息子と気づかれたのか?」


ボルグはニヤリと笑って、その疑問に答えた。


「アレンがイリヤの涙を持っておったからです」


「イリヤの涙!!?」


ボルグの答えに、ネルソンが驚いて聞き直した。

その驚き様を不審に思ったのか、ガルダインがネルソンに声を掛けた。


「どうかしたのかネルソン?えらく驚いておる様子じゃが?」


振り向いたネルソンは、慌ててガルダインに答える。


「い、いや、その名前は確か・・・。アルモア王のお妃の名前では・・・」


王家の話が出たので、フラム王はボルグに尋ねた。


「イリヤの涙?ボルグ殿、そのイリヤの涙とは、一体どういった物ですかな?」


「イリヤの涙とは・・・。アルモア王が星になった時、魔王の呪いで石像にされたイリヤ王妃の目からこぼれ落ちた光の玉と言われております・・・。ただ、これを何に使うのかは、マイヤの騎士以外誰も知らされておりませぬ」


「なるほど。イリヤの涙はマイヤの騎士の証・・・。それで彼がジェイド殿の息子だと」


フラム王は大きく頷いた。


丁度その時、ドリガンの兵士がネルソンの元へ駆け寄り、何やら小声で報告を始めた。


「ネルソン様・・・。グロー隊長が至急お目通り願いたいと申しております。何やら大切なお話があるとかで・・・」


ネルソンは何か思う節があったのが、すぐさま返事を返した。


「分かった、すぐ行くと伝えよ」


兵士が退出すると、ネルソンは諸侯に対し「会議の途中で申し訳ありませぬが、急用ができたので、しばらく席を外させていただきます」と言って席を立った。


「うむ。それでは、ここでしばらく休憩としよう」


フラム王の号令で、一旦会議は中断する事になった。


城の一室で、ネルソンはグローから報告を受けていた。


「なに!?テローペの巫女を見つけただと!?」


「はい、ポコの村で、腕の立つ三人の若者と一緒です」


「三人の腕の立つ若者?」


ネルソンはグローに急いで説明を求めた。


「はっ!一人はまだ子供ですが、恐ろしい魔法を使う娘・・・・。そしてもう一人、凄腕の剣士はマイヤの騎士と名乗っておりました。それと・・・・」


「なんだと!!マイヤの騎士だと!!?」


グローの話を遮って、ネルソンが声を上げた。

驚いたグローは、そのまま固まっている。


「う~~む・・・・。という事は、ボルグ殿の申していた4人とは・・・。

マイヤの騎士、ガルダインの孫娘、そしてテローペの巫女!!そうか!巫女様とマイヤの騎士は一緒か!!」


さすがのネルソンもこの事実には驚いたようで、つい大きな声を出してしまった。

慌てて周りを見渡し、そしてホッと一息ついた。


「よかった!巫女様にもしもの事があれば、大変な事になってしまう・・・」


そう言って胸を撫で下ろすのであった。

しかしネルソンはある疑問を抱いた。


「いや、待てよ?それなら巫女様はボルグ殿とお会いしているはずではないか!?

なぜボルグ殿は巫女様の事を知らないのだ?」


まさか、ボルグがその秘密を隠している?ネルソンはそう疑ってみたが、だがボルグにそんな素振りは見えなかった・・・・。


「という事は・・・・。まさか!巫女様は自分がテローペの巫女である事を・・・・」


ネルソンが深く考え込んでいるので、グローは恐る恐る尋ねてみた。


「マイヤの騎士?何者ですか、そいつらは?」


先ほどのネルソンの驚きを不審に思ったグローは、自分をボコボコにした相手の事が気になったのだ。


「ワシと同じく、伝説の勇者の血を引く者だ!」


「ゲッ!ア、アルモアの勇者ですと!?」


「そうだ!それだけではないぞ。貴様の言う魔法使いは、ガルダインの孫娘である」


「え~~っ!?それであんなすごい魔法を・・・・」


「ちっ、道理でオレ様が勝てないはずだぜ・・・。すげえ連中じゃねえか・・・・」


グローはネルソンに聞こえないように、文句を吐いた。


「ん?待てよ、ではあと一人は何者だ?グロー隊長!後のもう一人は一体何者だ!」


4人の仲間の内3人までは判明した。あと一人が気になるのは当然である。


「はっ!くそ生意気なトレジャーハンター野郎です」


「なに、トレジャーハンター?」


「はい、テンガロンハットを被り、蛇のような長いムチを持った男です」


「な、なんだと!?蛇のようなムチを持った男だと!!?では、あの時の・・・」


ネルソンはドルドガ鉱山の出来事を思い出した!


(確かあの時4人の若者が魔物と戦っていたが、その中にグローの言う容姿の男が・・・。

その横には艶やかな紫色のローブを着た魔法使いの小娘も・・・)


「そうか!あの時の4人か!!」


「グロー隊長!その4人を見失ってはならぬ!!直ちに行け!!」


「は、はい!!」


「ただし、こちらの事を気づかれてはならぬ!貴様と副隊長の3名で監視せよ!!」


そう言うと、ネルソンはグローに“魔法の羅針盤”を授けた。


「ネ、ネルソン様、これは一体何なのですか?」


とまどうグローにネルソンは説明した。


この羅針盤は、使用者に特定の位置を教える魔法の道具であった。

この道具を使うには、もう一つ”座標の宝玉”という道具がいる。宝玉に魔力を込めると、その位置を羅針盤が示すようになっているのだ。

アレンたち4人であれば、当然テレポートの魔法を使うであろうと予測し、この道具を渡したのである。

テレポートする場所(座標)は特定されているため、街や村の座標の位置に宝玉を持たせた配下を忍ばせておき、アレンたちがその座標に現れると、魔法で宝玉を発動させ、羅針盤に位置を知らせる仕組みになっているのだ。


「よいか、4人がテレポートしても、羅針盤がその場所を知らせてくれる。副隊長のパットのテレポートで後を追うのだ!」


「はい!分かりました!!」


グローは急いで部屋を飛び出した。


が、すぐに慌てて戻って来た。

「あ、あの~。4人を見つけて監視するとは?見つけた後、どうすれば・・・」


「・・・・・・」




ポコの村で旅の準備を整えたアレンたちは、船で川の北側へ渡り、氷の谷へと向かった。

険しい雪道だが、スノーバレーの様に迷う事はなかった。

2時間ほど歩き、ようやく氷の谷の入り口へとたどり着いた。

険しい山に囲まれた谷の入り口には川が流れ、一本の橋が架かっている。その橋を越えると氷の谷である。


橋の手前にある立札には「この先氷の谷」と書かれ、さらに「危険!この橋渡るな!!」

とも書かれていた。


「よし!さっさと橋を渡って氷の杖を手に入れようぜ!!」


ネイルを筆頭に、アレンたちは躊躇なく橋を渡って行く。


アレン達が橋を渡り氷の谷へ入った直後、橋の手前で強烈なプラズマが発生した。


バチッ!ジジッ・・・。ジジッ・・・。


空間が裂け、魔王の使いキュバスが姿を現した。


「ぐふふ・・・・。やっと来たか・・・テローペの巫女。

いでよ!氷の巨人ども!!」


雪の台地が揺れ、雪の中から巨大な氷の柱が数体現れた。そしてその姿を巨人の姿へと変えて行く・・・。


「巫女は氷の谷に入った・・・。巫女を生きてこの谷から出してはならぬ!

巫女を殺せ!!大魔王ギーガ様のために!!」


「グオーーーーー!!!」


巨人は一声吠えると、地響きと共に氷柱へと姿を変え、そして雪の中へ消えて行った。

それを見送ったキュバスは、魔法で谷への橋を破壊した。


「ぐふふふ・・・。これで谷から逃れられまい。まぁ、ここまで戻る事すら叶わぬであろうがな・・・・」


不吉な笑い声を残し、再びプラズマの中へと消えて行った。


それからすぐに、今度はグローと副隊長の三人組が現れた。


「うわっ!なんじゃこりゃ!」


「さっき、大きな音と、怪しい光が発生したと思ったら・・・。隊長!こりゃ、きっと魔物どもの仕業ですよ!」


壊れた橋に驚くグローに、剣士のディックがそう説明した。


「う~~~む・・・。キュバスの仕業か・・・・」


そう唸るグローの言葉に、大いにビビる二人。


「これじゃ、先へ進むことが出来ませんよ。どうします隊長?」


聖魔導士のパットが尋ねた。


「ま、まいったな・・・。ネルソン様から奴らを護衛するように言われているのに・・・」


困っているグローに、パットとディックが進言した。


「しかし隊長。魔物が待ち受けている所に行くとなると、ちょっとヤバイんじゃ・・・。

それに、あの連中結構強いし!何も俺たちが行かなくても・・・」


「そうそう!大体俺たちより強い奴らを、俺たちが護衛するなんておかしいですよ」


自分たちの情けなさをおくびにも出さず、平然とそう答える二人組。


「ま、それも、そうだな・・・。よし!ひとまず退却!!あいつらの事だ、放っておいても大丈夫だろ!」


「さんせー!!さすがはグロー隊長!」


そう言うなり、二人の副隊長は飛ぶように去っていった。


「こらーー!!ワシより先に逃げるなと言っただろうが!!!」


大声で怒鳴りながら、グローは慌てて後を追って行った。


橋を越え、複雑に入り組んだ細い道を北へ進むと、山の中腹に洞窟らしきものが見えた。

しかし、ここからはその場所まで行くことは出来ない。氷で出来た山の急斜面を登る事は、自殺行為に等しいからだ。


「あの場所へたどり着ける道を探すしかないな」


俺たちはその洞窟らしきものを見ながら、山を大きく東へ迂回する道を進んだ。

しばらく進むと、周りを樹木に囲まれた、だだっ広い場所に出た。雪に覆われて見えないが、おそらくこの場所は湖に違いない。

その湖と思われる場所の中央まで進むと、北の方向に洞窟が見えた。


洞窟の中は氷に覆われており、途中から道が東西二手に分かれていた。

東の道を進むと、突き当りに上に上がる階段があり、その先には不思議な地底湖があった。

何が不思議かと言うと、その湖の真ん中には、明らかに人工的に作られた大きな四角い建物が立っており、水面にその建物の中に入るための入り口が見えているのである。


「何だ?このオレ様の欲望をそそるあの建物は?!」


ネイルがそれを見て吠えている。炎の洞窟を見た時もそうだったが、きっとお宝があると分かっているのに、そこへ行けないストレスでイライラしているのだ。


「なんでこの湖は凍っていないのかな?周りは雪と氷なのに・・・」


リサの疑問にエレナも頷きながら、「でも、ここに氷の杖があれば、水を凍らせてあそこへ行けるのにね!」と答えた。


「そうだぜ!氷の杖を見つければいいんだ!!」


答えが見つかり、急に張り切りだしたネイルに、アレンが再び彼を悩ませる別の提案をした。


「俺たちの持っている無限のツボで、この湖の水を無くしたらどうなるのかな?」


一瞬で固まるネイル。


「はあ?そんな事をしたら、今見えている入り口に・・・」


そう文句を言いかけて、途中で止めた。


「今見えているのが二階の入り口だとしたら、水面の下に一階の入り口が隠れているかもね?」


エレナの一言がネイルの琴線に触れたのだ。


ネイルはその二つの選択を前に、ジレンマに陥り苦しんでいる。


「ま、どちらにせよ、氷の杖を探してからの話だよね。もし見つからなかったら、この水を無くすって事で・・・」


アレンが話をまとめかけたが、ネイルが待ったを掛けた。


「いやアレン、もし水を無くして何もなかったらどうすんだよ!後で氷の杖が見つかっても、あの入り口に入れないじゃねえか?」


「大丈夫よネイル。もう一つの神器、ガニメードの水がめを手に入れたら入れるわ」


「そう!ガニメードの水がめで再び湖の水を満たし、氷の杖を使えばいいのさ!」


エレナとアレンがそう答えた。


「おぉ!!そうか!!・・・って、おめえ、何をやってんだよ?」


ネイルはようやく納得し、再びやる気を出したが、雪で小さな雪だるまをせっせとこしらえているリサの姿を見た途端、肩をガックリ落としてしまった。


地底湖を出たアレンたちは、今度は西の道を奥へ向かって進み、地上に出る階段を上った。

そこは洞窟に入った所よりも一段高い中腹となっており、そこから西の方角を見ると、洞窟入り口の西に広がる森林地帯を抜けた先に、黄金の扉で閉ざされている洞窟が見えた。


「見ろよネイル!あの扉がひょっとすると青い結晶石の扉かもしれないな・・・」


俺の言葉にネイルはニヤッと笑うと、すぐさま行動に移した。

だが、事はそう簡単には進まなかった。

洞窟を出てすぐ西にある森からは、結局黄金の扉へはたどり着けなかったのだ。

散々迷った挙句、俺たちは氷の谷の入り口近くまで戻り、そこから西に広がる森の中をさまよい歩き、木々の間を縫ってようやく黄金の扉とは別の洞窟にたどり着く事が出来たのだった。


その洞窟の中は全て氷で覆われており、氷の地面からはツララを逆さにしたような先の尖った大きな氷柱が無数に突き出ていた。氷柱というより、大きな氷のトゲと言った方が分かり易いかも知れない。

俺たちの背丈より高い氷柱の突き出る、迷路のような洞窟を進んで行く・・・。


「何か誰かに見られいるような、嫌な予感がするなぁ・・・」


俺がそう口にした途端、いきなり足元から氷のトゲが飛び出てきた。


「うわっ!危ない!!」


咄嗟に避けたが、その氷柱は見る見るうちに巨大な氷のゴーレムへと姿を変え、俺たちに襲い掛かってきた。

強烈な力と底知れぬ体力。さらに凍えるような冷気(凍てつく息吹)を放つそのゴーレムは、かなりの強敵であった。

とにかく体がデカいため、俺とネイル、エレナの物理攻撃では致命傷を与える事が難しいのだ。

リサの炎系の魔法は刺さるが、場所が氷の洞窟だけに、溶けた体をすぐさま回復させてしまい、これも致命傷を与えられない。


攻めあぐんでいたその時、「アレン、ネイル!少しの間お願いね!!」

エレナはそう言うと、リサと相談して、いまお互いが持っている最大レベルのトルネードとファイアの合成魔法、紅蓮の炎の発動準備に入った。

その間20秒ほど、俺とネイルはその場でひたすら踏ん張る。


「行くわよ!!」


その声を合図に、俺とネイルは大慌てで氷の巨人から飛び退いた。


ゴオーーーーーーーッ!!!


凄まじい炎の竜巻が氷の巨人を包み込む。

それでもしばらくは炎の中でもがいていたが、炎が消えると共に、巨人も消えて無くなった・・・。

俺たちは「ふぅ~っ!」とため息をつき、やれやれ・・・と、再び洞窟を進んだが、

何と、氷の巨人はこの一体だけでは無かった。

氷柱の洞窟を抜けるまで、次々と現れては襲い掛かって来るのだ。

戦ったその数なんと15体。

もうフラフラの状態でその洞窟を抜けた先には、さらに下に降りる階段があった。


階段を下りた部屋は、目の前が崖になっており、その崖の下にも氷の洞窟が広がっている。だが、ここからはロープを使わないと下へ降りる事が出来なかった。


「ネイル、ロープを頼む」


「はぁ?ロープはおめえが持っているんじゃ・・・」


慌てて袋の中を探してみたが、どこにも入っていなかった。


「ちょっと、あんた!トレジャーハンターがロープを持ってなくてどうすんのよ!!」


リサがネイルにプリプリ文句を言っているが、無い物はどうする事も出来ない。

仕方なく、一旦洞窟の外へ出て代用品を探すことになった。


だがしかし、それは甘い考えであった。

森の中を隈なく探してみたが、ここは雪と氷の世界である。森の木々も雪と氷に覆われて、ツタの一本も探すことが出来なかったのだ。

このままではにっちもさっちも行かない。仕方なく地底湖の洞窟に戻り、そこで無限のツボを使ってみる事になった。


「じゃあ、ツボを沈めるよ」


アレンは湖に無限のツボを落とした。


チャポン!


ゴーーーーーーーッ!!


水面に渦巻きが発生し、見る見るうちに湖の水を飲みこんでいく・・・。

わずか20分ほどで水を全て飲み込んでしまった。

干上がった湖の中央には、上下二か所に入り口のある四角い建物が立っていた。


「おわっ!下にも入り口があったぜ!!」


ネイルが飛び上がって喜び、早速湖の底まで降りて、下の入り口に入って行く。


「見ろよアレン!水が入らねえように防水された宝箱があるぜ!!」


「何か罠が仕掛けられているかも知れないな・・・」


アレンとネイルは慎重に宝箱を開いた。

すると中には薄いブルーに輝く、美しい細身の剣が入っていた。


「おっ!これは見事な剣だな?!」ひょっとすると貴重なお宝かも・・・・。

アレンがレイピアを手に持ち、マジマジと眺めていると、早速エレナがミューゼの書を調べてくれた。


「あっ!すごい!!このレイピア・・・。“アイスブレード”っていう、魔法の剣だわ!

この剣で斬ると氷のダメージが付加され、使い慣れると氷の刃を斬撃で飛ばせるようになるらしいわよ」


「へっ、へっ、へっ・・・。アレン、いい武器を手に入れたじゃねえか?後は上の入口・・・って、こら!リサ、おめえ何やってんだ!!」


ネイルが上を見上げると、リサが部屋の中に生えているツタを、せっせとよじ登っていたのである。

慌ててリサを下に降ろし、俺たちはそのツタを切り取って氷柱の洞窟へ向かった。


ツタをロープ替わりにして降り立った場所は、古代の遺跡跡であった。


「見ろアレン、あそこに悪魔像の泉が見えるぜ」


ネイルはあれが女神像なら良かったのに・・・と文句を言っているが、お宝の匂いがプンプンするらしく、顔はさっきからにやけている。

悪魔像の泉まで来ると、その北側の壁に3か所入り口があるのが見えた。


「よし!じゃあ左から順番に入ってみるか・・・」


俺たちは警戒しながら左の入り口へ入った。


「げえっ!?ヤバイなこれ・・・・」


中を見るなり、俺たちはげっそりした・・・・。

この部屋の一番奥の壁に、魔人の顔が3つ彫られているのだが、そこまでの間に数えきれない程の氷柱が立っていたのである。


「まさか、ここにも氷の巨人が潜んでいるんじゃねえだろうな?」


嫌な予感は的中するものである。

氷の巨人を倒しながら、迷路のようになった氷柱の間を進み、3つある魔人の顔の真ん中へたどり着いた。


「よし、じゃあ爆弾を仕掛けるからね!」


シュッ!


・・・・ボン!!


キィーーーーーーーーーーーン!!!


何と!中から氷の精霊が現れた。

この氷の精霊、見た目は美しい女性の容姿をしているが、氷の巨人よりも遥かに強かった。

しかも聖属性であったため、ネイルのムチ(ライトウイップ)が全く効かなかったのだ。

もう一つのエルフのムチも同属性であるため、もはやネイルはサポート役に回るしかない。

そうなると、アレン一人ではエレナとリサの合成魔法を発動する時間稼ぎが出来ない。

しかも氷の精霊は、巨人が放つ”凍てつく息吹”の最上位ランクである”ダイヤモンドダスト”を放ち、リサの炎系の魔法を跳ね返してしまうのだ。

こうなるとリサはネイルのサポートを受けながら、大技の”神の雷”を連発するしかなかった。アレンもヤトト銀山で入手したニトロを惜しげもなく使用し、エレナもトルネードⅢとリカバーⅢを駆使し、激しい戦いの末ようやく勝利する事が出来たのだった。


しかしネイルは攻撃が効かなかった事がよほど悔しかったのだろう、戦闘が終わるとすぐ、アーズの町の近くにあると言われる”一撃のムチ”を一緒に探してくれと、メモを渡したエレナに泣きついていた。


「ええ、場所は地図で大体把握出来ているから、この谷から出たら探しに行きましょう」


と、ネイルを慰めていた。


この戦闘で高価な魔法の薬や爆弾を大量に消費したが、それに見合うだけの報酬はあった。

何と、爆破した魔人の顔の中から”絶対零度の本”を見つけたのだ。


つまり、氷の精霊が放っていたダイヤモンドダストの魔法を覚えることが出来るのである。

これは俺たちにとって、かなりの戦力アップが期待できるはずだ。

で、問題は誰が覚えるかだが、リサの支配する炎の魔法とは相性が悪い、そうなれば次に魔法のセンスが良いのは・・・。


「この魔法を覚えるのは、エレナが適任だと思うんだけど?」


アレンの意見に二人も賛同し、エレナがこの魔法を覚える事になった。

それは結果的に大正解だった。なぜならエレナは後に、ダイヤモンドダストとトルネードの魔法を合成し、”ブリザード”という強力な魔法を編み出すことになるのだから。


その後、残り二つの魔人の顔を爆破した後、真ん中の部屋と右の部屋を調べたが、重要な鍵を握っていたのは、真ん中の部屋にある3つの魔人の左の顔であった。


破壊すると、洞窟の外に出る部屋が出現した。

外に出てみると、そこは谷に入った時に最初に見た、山の中腹の洞窟だった。

そこから尾根伝いに進み、ようやく黄金の扉の洞窟に行くことが出来たのだ。


「よし、青い結晶石を使ってみるぜ!!」


ネイルが黄金に輝く扉に結晶石をかざすと、美しいブルーの光が扉全体を覆い、大きな音を立てて扉が開いた。

中は氷に覆われた広い神殿になっており、氷柱が立ち並ぶ部屋を抜けると、広々とした部屋の最奥には祭壇があり、そこには美しい女神を象った立派な巨像が左右に並んでいた。そして、その間に青い光を放つ”神秘の杖”が、そのままの姿で立て掛けられていたのだ。


「あれだ!間違いなくあれが氷の杖だよ!!」


アレンが興奮した声で叫んだが、なぜかネイルは興ざめした声でつぶやく。


「あぁ、だけど、あれじゃあな・・・・」


それもそのはず、確かに目の前に氷の杖はあるのだが、アレンたちと氷の杖の間には深い割れクレバスがあったのだ。

そして本来なら、そのクレバスには祭壇までの橋が架けられていたはずなのだが、今は抜け落ちて残骸しか残っていなかった。


周りを見渡すと、神殿を飾るレリーフが施された美しい柱がたくさん建っているが、そのうちの何本かの柱が床に倒れて崩れていた。


「きっと地震か何かで倒壊してしまったのね・・・」


横たわっている柱を杖でコンコン突くリサを見ながら、エレナがつぶやいた。

せっかく目の前に神器があるのに・・・。途方に暮れる俺たち。

その時、神殿の隅でチョロチョロと流れている雪解け水を見て、俺はあるアイデアがひらめいた。


「この崩れた柱を祭壇まで架けて、橋の代わりにすればいいんじゃ?」


そう提案すると、ネイルがジト目で俺を見て言った。

「おめえ、こんなデカい柱をどうやって運ぶんだよ?!もうちょっとマシなアイデアは浮かばねえのか?!」


「いや、運べるだろ?」


「はぁ?」


「そこに転がる柱の残骸なら運べるさ!」


「はぁ~?残骸って・・・」


ネイルがポカンと口を開けているので、俺はネイルに説明した。


まず柱の残骸を橋のあった場所まで運び、その位置で残骸を組み合わせて柱を再現させる。そしてその柱を祭壇へ倒して橋代わりにする・・・。


「な!これなら出来るだろ?」


「あほ!接着剤も無いのに、どうやって残骸を固めるんだよ!」文句を言うネイルの横で、リサがエレナから、耳元で何やらヒントを教えてもらっていた。


「あっ!そうか!!」


リサがニタッと笑って頷いている。そして、ネイルを馬鹿にした目で見つめたのだ。


「あっ!汚ね!おめえエレナちゃんから答えを教えてもらっただろ?!」


「何言ってんのさ!私が聞いたのはヒントだけだからね!誰かと違って頭のいい私はすぐに分かったのよ!!」


ネイルがリサとまた喧嘩を始めたので、俺は慌てて種明かしをした。


「水だよ、水!!ここは極寒の地だろ?だから組み合わせた柱に水をぶっ掛けるんだよ!そうすれば一瞬で凍って固まるはずさ」


ようやく理解したネイルは、せっせと柱の残骸を運びだした。

作った柱の高さは約4メートル。柱の周りに何度も水を掛け、何層もの氷でガチガチに固めている。

それを祭壇に向けて押し倒した。


ドーーーーン!!


成功だ!柱は崩れずに横たわっている。

こうして俺たちは、無事に氷の杖を手に入れる事が出来たのだ。


最初に入った地底湖の上の入り口は、今はまだ捜索できないが、当初の目的である氷の杖は手に入れたので、ネイルはテレポートの呪文を唱えた。


「・・・・・・」


「ありゃ?発動しねえな?」


「どういうこと?」


俺はネイルに尋ねると、エスケープの魔法も効かないので、どうやら磁場が乱れているか、妨害の結界が張られている・・・との事だった。

磁場の乱れがあると、正確な座標の習得が出来ないため、発動しないそうだ。

仕方がないので、俺たちは来た道を戻ることにした。


氷の洞窟を出て森林地帯を抜け、ようやく氷の谷の出口へ出た。

ところが、そこにはあるはずの橋が無くなっていた。


「これは間違いなく、何者かが故意に破壊したものだな・・・」


強力な衝撃によって砕け散っている橋の残骸を見て、アレンはそうつぶやいた。


「一体何者なんだ?こんなナメた真似をするのは?」憤慨するネイル。


「恐らく魔王の手の者だろうな・・・」


「私たち二体も手下を倒しているから・・・」


「そうね、そう言えば、氷の巨人も私たちが来るのを待ち構えていたような・・・」


四人の意見が魔王の仕業で一致した。


「魔王の目が俺たちに向けられているは間違いないな!よし!これからはその事も念頭に入れて慎重に行動しょうよ!」


アレンは話をまとめると、氷の杖を取り出して川面に杖の先をつけた。

すると杖が青い光を放ち、瞬く間に川が凍り付いていく・・・・。


「うわっ!すごい!!すごい!!」リサが嬉しそうに飛び跳ねて叫んだ。


アッ!という間に川全体が分厚い氷で覆われた。


「すげえな!さすがはキングラムの三種の神器だぜ・・・」


「あぁ、残るはガニメードの水がめだけさ、さっさと取りに行こうぜ」


凍った川を渡りながら、驚くネイルにアレンがそう答えていた時、後ろを歩いていたエレナが急に立ち止まった。


「エレナどうしたの?」


一緒に手をつないで歩いていたリサが不審に思い、エレナに尋ねた。


「風の音が変だわ・・・」


エレナはそう言うと、凍った川を東に向かって歩き出した。


川に沿って少し歩くと、何と洞窟が見つかった。


「この洞窟に風が吹き込み、音がコモって聞こえていたのね」


「すご~い!私全然気づかなかった・・・」


おどろくリサと一緒に洞窟の中に入っていくと、そこには小さな祭壇があり、美しい宝箱が奉納されていた。

エレナはその宝箱をそっと開けると、中には何と美しい輝きを放つ”アテナの強弓”が入っていた。


「おわっ!!すげえな!!」


後から来たネイルが、金銀宝石で装飾された美しい弓を見て、驚愕の声を発している。


「知恵と戦いの女神アテナが使った最強の弓矢、アテナの強弓だわ!」


エレナは嬉しそうに、その弓矢に頬ずりしている。


アテナの強弓は、弓と矢で一対となっている。

光り輝くその矢は、アテナの強弓で射ると何度でも復活するのだ。

射られた矢の破壊力は凄まじく、邪悪な者には神の鉄槌を下す。また相手が聖属性であっても威力は変わらない。たとえ聖属性であっても、この弓矢に射られるという事は、神に仇名す存在となるのだ。まさに女神が持つ武器であった。

こうして最強の弓矢をも手に入れた一行は、次の目的地へと向かった。




アレンたちが去ってしばらくすると、グロー達3人組が現れた。


「うわっ!!こりゃ、一体・・・」


「す、すごい!いつの間にか川が凍り付いている。あの巫女たちの仕業でしょうか?」


「と言う事は、奴らはもうここにはいないと言う事ですね」


驚くグローに二人の副隊長が意見を述べる。


「お!そうだな!!こうしちゃおられねえ!奴らの後を追わなければ!!」


「まだそんなに遠くへ行っていないはずです。急ぎましょう!!」


ボ~ッとしてるグローを置き去りにして、副隊長たちは急いで駆けだした。


「う~~~~む。それにしても、一体どうやって川を凍らせたんだろ?」


腑に落ちない顔で考え込むグロー。

無い頭で考えながら3回ほど飛び跳ねたとたん、バキッ!と氷が割れ、ポチャンと川に落ちてしまった。

分厚い氷も、巨漢のグローの体重には勝てなかったようだ。


しばらくすると二人の副隊長が戻ってきた。


「あれ~~っ!?隊長どこへ行ったのかな~。この忙しい時に、まったく・・・」


ブツブツと文句を言いながら、二人組は行方不明の隊長を探し始めた・・・。



氷の谷を出たアレンたちは、ネイルの頼みでアーズの村へテレポートした。

勿論”一撃のムチ”の捜索である。

嫌だと言っても、テレポートを使うのはネイルなので、逆らえない訳だが・・・。

アーズの村で休養したアレンたちは、エレナの持っている地図で滝のある場所を確認した。

あらかじめエレナが調べてくれていた場所を見ると、アーズの村の周辺にある滝は二か所だけだった。


村から南西の場所にある滝と、北に真っ直ぐの場所にある滝の二つである。

今回ネイルが船の座標を登録していたのは、北にある滝へと続いている川だったため、そこを最初に探索する事に決まった。

ただしその滝は、アーズの村と星見の塔の中間あたりにあるため、船で五日はかかる距離であった。


次の日の朝、枯渇した魔法の薬や食料を補充すると、意気揚々と出発した。

船の旅は陸路と違い、魔物との遭遇も滅多に無いので快適なのだ。

そしてアーズの村を出て五日目、予定通り目的の滝へ到着した。


問題はここからだ。アーズの村の近くの滝・・・だけでは具体的な場所が分からない。

滝の周りに怪しい場所がないか様子を見たのだが、そんな場所は全く無かった。


「あんた、滝の中に潜って探しなさいよ!!」


リサがまた無茶なことをネイルに言いだした。


「あほか!滝つぼに落ちたら二度と上がってこれねえわ!!」


また二人が言い争いを始めた時、エレナが慌ててそれを止めた。


「しっ!ちょっと静かに・・・」


エレナはしばらく耳を澄まして滝の音を聞いていたが、


「滝の向こう側から音が反響して聞こえるわ。きっと滝の裏には空洞があるはずよ」


そう結論を出し、俺たちはその言葉を信じて船で滝に突進した。


結果はエレナの言う通り、滝の裏に洞窟があった。そしてそこには”一撃のムチ”の宝箱があったのだ。


一撃のムチとはその名の通り、敵単体に強烈な一撃を与える対強敵戦の武器であった。

ネイルは大喜びでそれを手に取った。


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