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アルモアの星伝説  作者: トド
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第三話 魔物の襲来

結局俺達だけではどうする事も出来ないので、リサを村長の家まで連れて行くことにした。


「なんじゃと?この娘さん、ジュダから来たのか?こりゃ驚いた、ジュダの人がこの村に来るとは珍しい!!」


村の村長は、もうかなりの歳ではあるが、若い頃は後学のため諸国を放浪していたらしく、とても物知りで、また面倒見が良いため、村人からは尊敬されている人物であった。

そんな村長も、ジュダの人間を見たのは初めてだそうだ。


「ところで、ジュダの人は魔法使いと聞くが、本当かのう?」


興味津々な村長に、俺とエレナはリサから聞いた事のいきさつを説明した。

リサが言うには、彼女はジュダの街に住む魔法使いで、魔法のホウキの勉強をしていたところ、いきなりアホなホウキが暴走し、この村まで飛ばされてしまったというのだ。


「この子、魔法のホウキに乗ってここまで飛んできたんだって」


「どひゃーー!こりゃ、すごい!!」


「だけど、そのホウキを無くしちゃって、お家に帰れないんだって」


「なんと・・・」


「まあ、まあ、それは困りましたね・・・」


お茶の用意をしてくれていた村長の奥さんが、心配そうにリサを見ている。


「う~~~む。ジュダまでの道のりは、遠くて険しいからのう・・・」


ジュダまでとなると、旅慣れた者でも半月から20日は掛かるのである。

特に最近は魔物が頻繁に出没し、とても危険な状態となっている。

誰かに頼むにしても、そう簡単に引き受けてはもらえないであろう・・・。

そう思い、頭を悩ませていたのだが・・・・。


「そうじゃ!そう言えば、少し前からこの村に来ておる、風変わりな男も確かジュダから来たと言っておったのう・・・」


村長は急に思い出したようにそう言った。


「風変わりな男?」


「うむ。長い蛇のようなムチを持った男じゃ。この村の近くの洞窟に”赤い結晶石”というモノを探しに来ておる」


(あ、今日仕事場に来たあの男の事だな。確か蛇使いのネイルとか言っていたな。

なんか気になるな・・・・。後でちょっと寄ってみようかな・・・)


俺がそんな事を考えていると、村長の奥さんが窓の外を見てこう言った。


「まあ、まあ、とにかくこの子を家に送るにしても、今からでは何もできません。

とにかく今日はここにお泊りなさい」


いつの間にか日が暮れ、外はもう真っ暗になっていた。


「そうじゃ。この子の事は明日考えるとして、今日はここへ泊っていくがよい」


「エレナ、この子を頼むぞ」


「はい、村長さん」


エレナはニッコリ笑い、嬉しそうにリサに話しかけた。


「今夜は私と一緒に寝ようね」


「うん! でもここエレナのお家だったんだ」


「うふふ・・・。ここは私のお家じゃないのよ。だから私もリサと同じね」


「????」


リサは頭の上に、大きな「?」のマークを浮かべていたが、その疑問は今夜のエレナとの語らいで、すぐに解けることだろう。


「じゃあ、俺は家に帰るよ。また明日来るから」


村長の奥さんが夕食の支度のために席を立ったのをきっかけに、俺も立ち上がった。


「おお!ご苦労だったのうアレン」


「アレン、また明日ね」


「バイバ~イ」


エレナとリサに見送られて村長の家を出ると、俺はその足で村の宿屋へと向かった。



「よお!これは爆弾の先生・・・じゃなかった。アレンさんじゃねえか!

きっと訪ねてくれると思っていたぜ!」


ネイルは部屋のソファーに腰かけ、酒を飲んでいたが、俺の姿を見ると上機嫌で話しかけて来た。


「いや、実はそうじゃないんだ。ちょっと聞きたい事があってね」


「はあ?このオレに聞きたいこと?」


ネイルは少し怪訝な顔でアレンを見上げた。


「ジュダから来たって聞いたんだけど、あんたは魔法使いなのかい?」


「いや、オレは魔法使いじゃねえよ。商売上、必要最低限の魔法なら使えるがな。

だが、ジュダから来たのは本当だ」


「ある御方から、仕事を頼まれてここへ来たのさ」


「あぁ!あれ・・・。

”赤い結晶石”ってやつを探しているんだね?」


ネイルは驚いて立ち上がり、アレンを睨みつけた。


「あんた何でそれを知っているんだ!!オレはあんたを仕事に誘ったが、その事は話さなかったはずだぜ!!」


「村長さんから聞いたんだよ」


「なに?あんた村長の知り合いなのか?」


ネイルのことばに、思わずビックリである。

そんな事を今更聞く?・・・と思ったが、一応彼に説明した。


「小さな村だもの、村人全員が家族みたいなものさ」


「多分あんたがソレを探しているのは、村の人全員が知っているんじゃないかな・・・」


「なに!!し、しまった!先を越されてアレを取られちまったらマズイぜー!」


何か勘違いをしているようなので、一応安心させてやることにした。


「それは大丈夫だよ。だって、その赤い結晶石って、一体何に使うのか誰も知らないもの」


「え?結晶石を知らねえのか?なんだ~。驚いて損したぜ~」


ネイルはホッとした表情で、グラスに入った酒をグイっと飲み干すと、なぜかアレンに結晶石の説明を始めた。


結晶石とは、水晶のような透明な石の塊で、古代の宝物を手に入れるために必要な”カギ”なのだそうだ。

特に重要な宝を隠している部屋には、必ずと言っていいほど結晶石のカギがかかっているらしい。

使い方は簡単で、鍵穴の部分に光を感知するセンサーのような仕組みがあり、そこに結晶石をかざすと、結晶石の光を感知して扉が開く仕組みになっているのだ。


「だがよ、結晶石には何種類かの色があってな、その色に合った扉しか開ける事が出来ねえんだ。そこんとこ、よく覚えておいてくれよな!」


・・・と、自慢げに説明してくれた。


(それ、しゃべらない方が良かったんじゃないのか?)


「でよ、この村の近くにある廃鉱に、その赤い結晶石があるって情報を得たんだ!

オレは早速その廃鉱を調べてみたんだが、途中で大きな岩が邪魔してよ、先へ進めねえんだよ・・・。

それで弱っていたんだが、よく考えてみりゃ、鉱山ってのは爆弾で岩をぶっ壊すのが仕事じゃねえか!そこで、この鉱山で一番爆弾を使うのがうまいのは誰かって尋ねたら、あんたの名前が出てきたって訳さ」


(あ、それで俺を仲間にしようと・・・・)


「だか、これで安心したぜ!!爆弾使いの名人が仲間になってくれりゃ、鬼に金棒だぜ!!

ま、これからよろしく頼むぜ!」


「お、おい、何言ってんだよ!俺はあんたに頼みがあって来ただけで、仲間になりに来たんじゃないよ!」


「なに!?なぜそれを早く言わねえんだ!!すっかり秘密をバラしてしまったじゃねえか!!」


「・・・それ、本当に秘密だったの?」


ネイルはちょっと考えてから、ボソッと言った。


「ま、いいか・・・。オレは心が広いから・・・」


(酔っぱらっているのか?)


「それで、何の用でここへ来たんだ?」


「頼みたい事がある。

あんたにジュダまで送って欲しい人がいるんだよ」


「はあ?オレにジュダまで人を連れて行けって言うのか?いやだね!ジュダまでの道のりは厳しいんだよ。一人で旅が出来ねえような野郎は、旅の足手まといになるだけだ」


「一人で旅が出来ないから頼んでいるのに・・・。それに野郎じゃないよ、女の子なんだから」


「な、な、な、なにーーー!女の子だって!!?お、おい!まさかババアじゃないだろうな!」


「おばあちゃんじゃないよ」


「若いのか?」


「うん、かなり・・・」


「バカヤロー!それじゃーピチピチじゃねえか!!

よし!オレに任せろ!!このオレ様が、ちゃーんとジュダまで送り届けてやるぜ!!」


(いや、こいつ、絶対にあかん奴だろ?)


「わ、悪いけど少し考えてみるよ・・・」


そう答えた瞬間、一階から女性の悲鳴が聞こえた!!


キヤーーーーーーッ!!!!


「何だ!!」


「行ってみよう!!」


俺とネイルは急いで一階へ駆け下りた。


「きゃー!!誰か助けてーー!!」


見ると、鬼のような顔をした緑色の魔物が五体、フロントの女性を襲っていた。


「ミコハ、ドコダ。ミコヲサガセ・・・」


「ミコヲコロセ・・・。マオウノタメニ」


何やら呪文のような言葉を呻きながら、襲い掛かった。


「おわ!!こりゃ大変だ!!女性が襲われているじゃねえか!!

アレンさんよ!ここは一発あの魔物をぶっ飛ばすぜ!

彼女をデートに誘うのはそれからだ!」


言うが早く、ネイルのムチが唸りを上げて魔物を襲った。


ヒュン!!

バシッ!!


一瞬にして三体の魔物の首がふっ飛んだ!!

俺は魔物と女性の間を駆け抜けざまに剣を抜き、残りの二体を瞬殺した。

ネイルのムチが魔物の首を刎ねたのと、ほぼ同時の出来事である。


ネイルという男は、ソロでトレジャーハンターをやっているだけの事はあり、見た時からかなり腕の立つヤツだとは思っていたが、実際は想像以上にすごいヤツだった。

一方ネイルはネイルで、アレンの見事な剣さばきに唖然となっていた。


(嘘だろ?こんなかわいい女の子みたいな顔をしているのに・・・・)


いや、感心すべきはそこでは無いだろう?顔は剣技とは関係ないように思えるのだが、アレンの腕が立つのは確かである。


アレンは物心がついた頃から、剣の達人である父親に、みっちりその技を仕込まれていたのだから。

恐らく城に勤める衛兵が束になって掛かっても、彼に勝てる者はいないであろう。

ただ残念な事に、生来のやさしさと、女の子に間違えられるその容姿、それとまじめな性格から、ぜんぜん強そうには見えないのであった。


「こりゃ、どう言う事だ?なんで魔物が?」


「大変だ!エレナ達が危ない!!ネイル、手伝ってくれ!!」


「何だか知らねえが、今は彼女をデートに誘っている場合じゃなさそうだな。よし!行こうアレン!!」


一瞬の出来事に呆然となっていた宿屋の娘に、鍵をかけて身を隠すよう指示を出すと、二人は急いで外に飛び出した。


「まずい!村のあちこちで魔物が徘徊してやがるぜ!」


二人は目の前を遮る魔物共を、肩端から斬り倒し、村長の家を目指して突っ走った。

村長は家の前でアレンの来るのを待っていたが、彼の姿を見るなり、大慌てで伝えた。


「おお!アレン!!大変じゃ!!村の娘たちが魔物どもにさらわれた!!

エレナ達が!!あれは鉱山の方角じゃぞ!!」


鉱山に向かう道中も、村の男たちが魔物と戦っていたが、屈強な鉱山の男がそう簡単にやられるはずはない。そう考えたアレンは真っすぐに鉱山へ向かった。


中では、現場監督がスコップを振り回して魔物と戦っていたが、アレンに気づくと、坑道の壁にぽっかりと開いた大穴を指さして叫んだ。


「アレン、さらわれた娘たちは穴の向こうに連れ去られた!急げ!!」


穴の中に飛び込むと、驚くほど広い空間が広がっていた。

二つに分かれる道があり、左の道の奥まった所で、三体の魔物に襲われている娘を見つけると、俺は岩を足場に飛び上がり、一体を上段から一刀両断にし、振り向き様に二体を薙ぎ払った。危ないところだったが、女の子は無事で、俺を見ると慌てて声を掛けた。


「ありがとうアレン!早くエレナを助けて!!魔物は彼女を狙っているみたいなの!!」


その言葉を聞き、俺は慌てて先へ向かった。


もう一方の右の道では、今ネイルが二体の魔物を始末したところであった。

そして襲われていた娘も、俺を見ると口早に告げた。


「早くエレナを助けてあげて、あの子が危ないわ!」


俺とネイルは、出くわす魔物や、娘をさらっている魔物を次々と倒しながら、地下に降りる階段を進み、そして一番奥まった広い場所で、数えきれないほどの魔物に取り囲まれているエレナとリサを発見した。


そこには地下の湧き水で出来た小さな湖があり、幅2メートル、長さ30メートル程の狭い一本の道が湖の中央にある岩場へと続いていた。その岩場にエレナとリサが追い込まれていたのだが、二人がまだ無事だったのは、岩場の手前で燃えさかる、炎の壁が魔物の進入を防いでいたからである。恐らくリサが魔法で作った壁に違いない。


俺とネイルは、すぐさま岩場へ行こうしたが、分厚い魔物の壁に阻まれ、先へ進む事が出来ずにいた。

広大な地下空間を、どこから湧き出て来るのか、何百と言う魔物が湖の岩場に続く一本道にひしめき合っているのだ。


「チッ!これじゃあ、らちが明かねえぜ!!」と、ネイルが吠えた瞬間。

岩場からリサの癇癪を起した声が聞こえて来た。


「あーーーー!しつこいなーー!こいつら!!」


「もう!あったまに来たーーー!!マジックパワー全開!!」


「くらえ!!必殺!炎の舞!!!」



グオオオオオーーーーーーーッ!!!!!



リサが叫んだ瞬間、恐ろしいほど巨大な炎の塊が、グルグルと螺旋状に高速回転しながら、俺たちに向かって、ものすごい速さで迫って来た。


「どひゃ~~~~っ!!!!!!」


俺とネイルは慌てて左右に飛び散り、間一髪で避け切ったが、その炎の通過した直線上にいた魔物は、跡形もなく消滅していた。


「うわ!!す、すごい!!」


「なに~!?暗黒魔法かよ!!? 一体何者なんだ、あのチビ?!」


あまりの威力に俺たちは一瞬たじろいだが、即座に立ち上がり、急いで彼女たちの元へ駆けつけた。


「大丈夫かエレナ!!?」


「アレン!!来てくれたのね!!」


しかし喜ぶのもつかの間で、再び周りを埋めつくそうとする魔物を見て、ネイルがリサに声を掛けた。


「おい、チビ!さっきのヤツをもう一度やってくれ!」


その声に、リサはムッとした顔で答える。


「うるさい!チビって言うな!!」


そう言うと、そのまましゃがみ込んでしまった。

どうやらさっきの一撃で、魔力を使い果たしてしまったようだ。


それから1時間は経っただろうか?

俺とネイルは必死に魔物の進入を防いでいたが、そろそろ体力も限界に差し掛かってきた。


「くそっ!どんどん数が増えてきやがるぜ!!こりゃ、マジでヤバイかもな・・・」


ネイルがそう言った時である。


「不浄なる者に、神の裁きを!!」


どこからともなく魔法を詠唱する凛とした声が流れ。

その瞬間、目を開けていられないほど眩い光が辺りに満ち溢れた。

そして光が消えた時、すべての魔物の姿が消滅していたのである。


「うわっ!!き、消えた!!」


「どうやら、間に合ったようじゃな・・・」


驚く俺達の前に、鮮やかな青いマントをまとった一人の男が現れた。

口には立派な白い髭を蓄え、眼光の鋭い白髪の紳士である。

その後から続々と兵士が追いつき、周りを見回してこう言った。


「あらかた片付きましたね」


「うむ、村の方はどうであった?何か変わった形跡は無かったか?」


「いえ、特にありませんでした」


「そうか・・・。では、帰るとするか」


そう言うと、何事もなかったかの様に去って行った。


「すごいな、あの人。一体誰だろう?」


俺は驚いてネイルに尋ねた。


「あれは、聖魔導士ネルソンじゃねえか!!」


「えっ!あの人を知っているの?」


「白の賢者ネルソンだ!

アルモアの星の伝説に出てくる、三人の勇者の末裔って話だぜ」


「えーーーっ!?あれは、おとぎ話じゃなかったのか?!」


「さあな・・・。しかし、わざわざネルソンほどの大物が出てくるとなると。今回の魔物騒ぎ・・・。こりゃ、ただ事じゃねえな・・・」


ネイルが腕を組んで、難しい顔をした時であった。


「おーーーい!!」


村長が村の男たちを引き連れて、こちらへ走って来た。


「ひい、ひい・・・・。おお!みんな無事じゃったか!!いやー、よかった、よかった・・・」


村に溢れていた魔物どもは、聖魔導士ネルソンと、彼の率いるドリガンの兵士たちの活躍によって一掃された。

村ではたくさんの怪我人は出たものの、幸いにもその多くは軽傷で、誰一人として命を落とした者や、行方不明者は出なかった。

こうしてドルドガの村を襲った恐怖の一夜は明け、そして何事もなかったように、いつもの朝が訪れた・・・・。



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