第二十五話 北の大地へ
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・・。
見事な戦いぶりじゃわい!さすがはワシが見込んだ者達じゃ!!」
そう言うと、セロは全員を魔法で回復させた。
そしてアレン達に忠告した。
クラーケンが倒された事は即刻魔王の耳に届くであろうから、これから先は益々厳しい旅になるであろう事を・・・。
「お前さん達、気を付けて行くのじゃぞ。
困った事があれば、またいつでも訪ねてくるがよい!」
そう言い残し、セロはテレポートで姿を消した。
アレン達はカルデラ湖を越え、強い風が吹き荒れる荒涼とした谷を進んだ。
複雑に入り組んだ渓谷を縫うように進むと、やがて目の前に大きな口を開けた洞窟が現れた。
ここまで来るのに、すでに三日以上も歩き続けている。
さすがにこの辺りまで来ると、敵の魔物も今までとは違い、死の戦士やダークネスの魔法を使う魔族のリッチなど、かなり強い敵が頻繁に現れるようになって来た。
しかし、アレン達の戦闘能力も格段に上がっていたのである。
アレンの剣技も、マイヤの騎士の称号を得た事でさらに磨きがかかり、ほぼ神業に近い領域にまでに達している。残念なのは、剣の性能が彼の実力についていけない事であった。
それに比べ、ネイルの手に入れたエルフのムチは、彼の技量に足る得物であった。
聖なる力を秘めており、以前戦ってダメージを与える事が出来なかった地霊でも、今では一撃で倒す事が出来るようになっている。さらに15%ほどの確率で、敵を混乱状態にする事が出来るのだ。全体攻撃を繰り出せる、ムチの特性を生かした逸品であると言えよう。
特殊技能では、リサのファイアの魔法は既に最高ランクのⅢまで上がり、フレアーの魔法はランクⅡとなっている。
エレナのトルネードの魔法も、ランクⅡに上がっているため、敵が4~5匹で襲ってきても、全く苦にならずに倒す事ができる。
そして極めつけは、エレナとリサの合成魔法だ。二人の魔法が偶然に重なって発動したこの業だが、今では息ピッタリに打ち出せるため、敵が集団で襲って来ようとも、もはや恐れる事などない。”紅蓮の炎”と名付けられた、この合成魔法の敵ではなかった。
また、万が一不覚を取って倒されたとしても、エレナが思い出した特殊技能”祈り”は、戦闘不能から復活させ、100%体力を回復させる驚くべき技能であったのだ。
一撃で殺されなければ、何度でも復活して挽回できるのである。
もはや怖いものなしの彼らは、魔物の巣窟となりやすい洞窟でも、気にせずにどんどん進んで行く。
だが、決して油断はしていなかった。特にアレンは、エレナを無事にテローペへ届けるという使命があるため、常に注意を怠らなかったのだ。
そんな彼らでも、さすがに暗い洞窟の中は嫌なものであった。
暗い洞窟を延々と進み、精神的な疲労がピークに達しようとした時、ようやく明るい出口が見えて来た。
「おっ!やっと出口だぜ!!」
そう言ってネイルが出口に向かって走り出た瞬間。
「どひゃ~~~~~~っ!!!!」
ネイルの絶叫が聞こえた。
慌てて外へ出ると、ネイルはその場にしゃがみ込んでいる。
「うわっ!こ、これは?」
なんと!洞窟を出たすぐ前は、断崖絶壁になっていたのだ。
もう一歩進めば、間違いなく谷底へ真っ逆さまに墜落している所であった。
「そんな!せっかくここまで来たのに・・・。」
エレナはヘナヘナと座り込んでしまった。
「ひど~~~い!これじゃ、先へ進めないじゃないの!!」
リサは地団駄を踏んで悔しがっている。
「ちっ!だからオレは反対だったんだ!
最初から王の道へ行けばよかったんだよ!
ま、今更言っても始まらねえがな・・・。」
落ちかけたネイルは、その場に座ったままブーブー文句を言っている。
確かに、折角ここまで来た苦労が全て水の泡だった。
だがアレンは断崖絶壁となった目の前の渓谷を見て、ある事に気づいた。
それは、火山の爆発による地殻変動に見せかけ、実はわざと空けられた大穴である事に・・・。
「あきらめるのはまだ早いよ!セロ様は三種の神器があれば、行けない所は無いって言っていただろ?俺達は、まだそのうちの一つを手に入れただけだ!
残る二つの神器を探そうよ!」
「はぁ? 残り二つを手に入れたら、ここを通れるようになるとでも言うのかよ?」
そんなバカな・・・とばかりに、ネイルはアレンの言葉を疑った。
「もちろん、通れるよ!」
「えっ! おめえ、すごく自信たっぷりに言うな?
本当なのかエレナちゃん?」
「ええ、大丈夫よ!」
エレナもアレンの考えをすぐに理解したようであった。
「そうか! よし、じゃあ氷の杖を探しに行くか?!」
「だったら北の大地、ドリガンに行かなくちゃね!!」
リサが俄然と元気になった。
「そうね、キララ達との約束もあるしね!」
エレナもやる気満々だった。
「決定だな!俺たちもボルグのおじさん達を手伝ってドリガンに行こう!」
その頃ドリガン城の大会議室では、重要な会議が開かれていた。
出席しているのは、ソーネリアの王フラムと大臣アルバート。
ドリガンの領主ネルソンとその配下である、ラテス将軍、親衛隊の隊長グロー。
ジュダの領主ガルダインと暗黒魔導師のマリーとジーグ。ジーグとは、ガルダインがプルネの村へ派遣した3人の内の一人で、その強さはガルダインのお墨付きである。
その周りを重厚な鎧をまとった衛兵が取り囲む、何とも物々しい会議であった。
全員が席に着いたのを見計らい、ソーネリアの王が口を開いた。
「忙しいところを諸君に集まってもらったのは、他でもない。
王の道の修復作業が思うように進んでおらぬようなのでな・・・。
何か良い策はないか、諸君の率直な意見を聞かせてくれぬか?」
王の問いにネルソンが答えた。
「原因は人手不足ですな・・・。
何しろ、ドリガンとソーネリアを結ぶ道が破壊され、人や物資を輸送できませんからな。」
続いてガルダインが答える。
「道を破壊した魔物どもの凄まじさに恐れをなし、多くの働き手が逃げ帰ってしまったのも原因の一つです。
さらに、これ以上時間がかかっては、王の道の修復作業を阻止しようと、敵が挙兵して攻め込んでくるやもしれませんな・・・。」
「弱りましたな・・・。
やはり、ドリガンとソーネリアを結ぶ通路の復旧作業を優先するべきなのでしょうか?」
大臣のアルバートが王に話しかけたその時・・・。
「ネルソン様!た、大変です!!」
ドリガンの兵士が慌てて駆け込んできた。
「何事だ!!いま、大事な会議中であるぞ、場をわきまえよ!!」
ネルソンはすかさず兵士を叱り飛ばした。
「はっ!そ、それが・・・。
レゼムと我が国の国境に、武装した軍隊が突然現れたという、情報が入りました!!
その数1万以上かと?!いかがいたしましょう?」
「なに!?武装した軍隊だと?!それは敵か、味方か?」
ラテス将軍が立ち上がり、兵士に問いただした。
「そ、それが、まだ分かりません!!」
「馬鹿者!!それも分からず、うろたえておるのか!早く行って確かめてこい!!」
将軍に怒鳴られた兵士は慌てて走り去り、入れ違いに別の兵士が報告に来た。
「申し上げます!レゼムのボルグと名乗る者が、ここへ参りたいと申しております!!
もし聞き入れられぬ時は、力づくでも押し通ると申しております!!
いかがいたしましょう?」
「なに?レゼムのボルグ!?
う~~~む、力づくとは・・・これは穏やかな話ではないな・・・。
誰か、このボルグと申す者をご存知ですかな?」
ネルソンの問いに、ガルダインが答えた。
「レゼムのボルグ・・・。
確か、あの地を治めるドワーフの王がその様な名前であったような・・・」
それを聞いたフラム王は、ある事を思い出した。
「おお!それならワシも聞いたことがある!!
ドワーフ族は勇猛果敢で気性が荒く、怒らすと厄介な種族だと聞く。
中でも王のボルグと申す者は、怪力無双の豪傑というではないか!
この大事な時に、また困った事が起きたものじゃ・・・。
どうすればよいかの?」
ガルダインは王に進言した。
「まだ、敵か味方か分からぬのであれば、一度会って用件を聞いてみるのがよろしいかと?」
ネルソンもガルダインの意見に同意した。
「それは良い考えじゃ。
が、もし武力に訴えるようであれば、わしも領主としてこの国を守らねばならぬ」
「将軍!万が一に備え、迎え撃つ準備を致せ!!
用件が分からぬうちは、国境から先、一歩もこの地を踏ませてはならぬ!!」
「はっ!!」
将軍が席を外そうとした時、伝令の兵士が駆け込んできた。
「申し上げます!!国境の警備をしている、我が国の兵士から伝言です!」
「申してみよ!」
「はっ!ドワーフの王であるボルグ殿は、王の道の復旧の手伝いに、この地に参ったと申しておられるそうです。
また王の道を復旧し、魔王討伐に向かう事は、黙示録第三巻の持ち主・・・・。」
「なに!!黙示録第三巻の持ち主だと!!?」
全員が大声を上げて立ち上がったので、兵士は度肝を抜かれて固まってしまった。
そんな兵士の姿を見て、慌ててネルソンが怒鳴った。
「馬鹿者!!さっさと先を言わぬか!!」
「はっ!」
「また王の道を復旧し、魔王討伐に向かう事は、黙示録第三巻の持ち主、すなわち、アルモア王と共に戦った、誇り高きマイヤの騎士の意志によるものであり、ボルグ殿はその代理として、この地に参ったと申しております!!」
「マイヤの騎士!!!」
「なんと!マイヤの騎士とな?!」
ガルダインは長い顎鬚をしごきながら、つぶやいた。
「アルモア王と共に戦ったもう一人の勇者!!
黙示録第三巻の謎を解く鍵がついに現れたか!!
よし!急いでここへ参られるよう、ボルグ殿に伝えよ!!」
フラム王は伝令の兵士に命令した。
だがその兵士は、自分たちの領主の命令ではないため、躊躇している様子であった。
それを察知したネルソンは、またもや大声で怒鳴るのであった。
「馬鹿者!何をモタモタしておるのじゃ!
王様の命令であるぞ!!さっさと行かぬか!!」
慌てて伝えに走る兵士を見送ると、ネルソンはフラム王に詫びた。
「気の利かぬ兵士共だ!まったくお恥ずかしい限りです。」
そう言って苦笑した。
ガルダインは、フラム王に向かって宣言した。
「時は満ちた!これですべての謎が解けるかもしれぬ。
アルモア王と共に戦った、もう一人の勇者の謎。
黙示録第三巻に記されている、究極の魔法ゾルドのある場所。
そして、ハマンの魔法を使う事の出来るテローペの巫女の事が・・・。」




